労働政策研究報告書No.206『労働者性に係る監督復命書等の内容分析』

 (独)労働政策研究・研修機構様から、労働政策研究報告書No.206『労働者性に係る監督復命書等の内容分析』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。ふだんは何号かまとめて箱で送っていただくのですが、今回は1冊だけ封書で届いておりました。
www.jil.go.jp
 例によって上記から全文をお読みになれます。執筆担当者を見ると「濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長」となっておりおっとhamachan先生ではないですか
 調査内容は2017年 4 月 1 日から 2019 年 10 月 2 日までの労働者性判断に関連する(すべて判断されているわけではない)監督指導業務の監督復命書80件及び申告処理台帳42件について監督現場の労働者性判断について個別に分析したというまことに勤勉かつ興味深いものです。直観的にはなかなかアクセスできない貴重な資料ではないかと思うのですが、情報公開請求をすれば開示してもらえるものなのかな。
 結果をみると、まず労働者性の判断に至っていない例がかなりあり、まあ賃金不払いとかの事件であれば労働者性の有無にかかわらず約束した対価は支払うべきだという話なので判断されないことが多いというのは納得のいくところです。いっぽうで労災事案などでは、労働省研究会が判断基準を示しているところ必ずしも判断に必要な情報が十分に得られない中で判断しているという例も多く、現場の苦心が窺われるところです。個別判断にならざるを得ないこともあって判断にはある程度の揺らぎも見られますが、そこは現場の権限に委ねるしかないとこではありましょう。
 企業で行政官庁(労働行政に限らず)に関わる実務を担当した経験のある人は「担当官によって判断が異なる」という経験を多かれ少なかれ持っているものと思いますが、こうした調査を見るとそれも相当に致し方のないことだと理解できます。もちろん、本報告も述べるとおり、より一貫した判断が可能となるような基準づくりも進めていただきたいところではありますが。