在日米軍が米国などから日本に入国する前に新型コロナウイルス感染症の検査をしていなかった時期、日本から米国への出国の際は感染検査をしていたことが13日までに分かった。県内では、オミクロン株の感染拡大は米軍基地由来とみられている。不平等な日米地位協定の実態がここでも浮き彫りになった形だ。

米軍横田基地の旅客ターミナルのフェイスブックに掲載された検査に関する情報。上から2段目で、米シアトルやワシントンへ出国する際は24時間前か72時間前に検査が必要とされている

米軍横田基地の旅客ターミナルのフェイスブックに掲載された検査に関する情報。上から2段目で、米シアトルやワシントンへ出国する際は24時間前か72時間前に検査が必要とされている

 米軍横田基地の旅客ターミナルのフェイスブックに掲載された情報によると、昨年12月6日の時点では、米軍関係者が横田から米国のシアトルやワシントンなど米本土へ出国する際、24時間または72時間前に検査が必要とされていた。

 一方で在日米軍は9月以降、米疾病対策センターや米国防総省の指針に基づき感染対策を緩和し「日本と整合的な措置を取る」としながら、出入国前後の検査を実施していなかった。

 日米地位協定により、海外から在日米軍基地に直接入る場合、米兵は日本側の検疫が適用されない。

■基地で大規模クラスター

 県内では、12月初旬に米本国から嘉手納基地に直接入った米軍キャンプ・ハンセンの部隊で、大規模なクラスター(感染者集団)が発生。米軍が出国前に検査していなかったことを日本政府が把握して公表したのは12月22日、米軍が入国72時間前の検査を始めたのは同26日だった。

 フェイスブックに掲載された情報からは、横田から韓国に移動する際には、検査を必要としていたことが分かる。

 在日米軍司令部は取材に、日本への入国、出国時の対応の違いについて言及を避け「継続的に健康保護態勢を見直し、適宜更新していく」とした。

国の主権が問われる

 前泊博盛教授(沖縄国際大学)の話

 米国の法律は適用するが、日本の法律は適用しない「旗国法原理」で、日本は法の空白をつくってしまっている。新型コロナウイルスの感染が在日米軍基地のある都道府県で多発していることからも、日本政府はこれを教訓として、出入国検疫の管理については徹底して見直していくべきだ。

 韓国と比べ、日本国民には「地位協定があるからしょうがない」という意識があるのかもしれないが、そういった呪縛からは抜けるべきだ。

 感染症は軍事の問題ではなく、国民の命に関わる問題であり、国の主権が問われる。この機会に変えることができなければ、国は国民を守る力がないということになる。(安全保障論)

日米地位協定 見直し考えず

 【東京】林芳正外相は13日、東京都千代田区の日本記者クラブで記者会見し、在日米軍の新型コロナウイルス感染拡大を巡り、在日米軍が周辺自治体へ感染を拡大させた要因である可能性は否定できないとの考えを示した。日米地位協定の見直しは否定した。

 林氏は、日米外相会談や外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)などを通じ、米側に感染防止を求めてきたと説明。その結果、9日の日米合同委員会共同声明につながったとし「声明で終わりではなく、今後も随時緊密に協力する」と述べた。

 日米地位協定の見直しについては「それぞれ個別に、小回りの利く形で対応してきている」とし、これまでと同様、地位協定は改定せずに対応していくとの考えを示した。

 対中国に関しては「主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていく」と強調。同盟国の米国とも認識を擦り合わせて対応していくことが重要とも指摘した。