コロナリストラが日本を襲う…!失業増で「消費の崩壊」が始まった  4月消費支出11.1%減は序の口

現代ビジネスに連載している『経済ニュースの裏側』に6月11日に掲載された拙稿です。是非ご一読ください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73238

すべての費目で大幅減

壊滅的な消費悪化が鮮明になってきた。総務省が6月5日に発表した4月の家計調査で、2人以上の世帯の消費支出が26万7922円と前年同月比で実質11.1%減った。

昨年10月の消費増税以降、マイナスが続いてきたが、2月の0.3%減から、3月には6.0%減、そして4月は11.1%減と、まさにつるべ落とし状態になっている。

費目別では、「被服及び履物」が55.4%減と大幅に減少、教養娯楽費も33.9%減った。新型コロナウイルスの蔓延に伴う緊急事態宣言が出された結果、外出が激減したことで、衣料品が売れなくなり、旅行での宿泊などへの支出も大幅に減った。

食料への支出も7万3919円と6.6%減った。自宅勤務などによる「巣ごもり」の結果、家庭で購入する食品への支出は大幅に増えたが、外食への支出が減った結果、差し引きではマイナスになった。

食品は、肉類19.7%増、乳卵類18.5%増、穀類10.7%増、野菜・海藻10.0%増、魚介類7.0%増といずれも大きく増えた。油脂・調味料の消費額が21.6%も増えたのをみても、家庭で料理する機会が大幅に増えたことを物語っている。酒類も21.0%増えた。

生活スタイルの変化で支出減

一方、外食への支出はメタメタで、前年同月比で65.7%も減り5127円になった。

消費行動が変わった結果、消費関連の業界も大幅な変動が起きた。日本フードサービス協会がまとめた外食チェーンの4月の売上高は、ファーストフードが39.6%減、ファミリーレストランが59.1%減、パブ・居酒屋が91.4%減と、壊滅的な影響を受けた。

マクドナルドの4月の既存店売上高が6.5%増になるなど、テイクアウトに強い一部の業態では伸びたところもあるが、自粛要請に従って店舗営業を休止したところが多く、全体では外食産業が猛烈な影響を受けた。

消費の落ち込みがこれまでに前例のない水準に達しているのは外食産業だけではない。

例えば、4月の国内新車販売台数は、日本自動車販売協会連合会全国軽自動車協会連合会のまとめによると、総販売台数は前年同月比28.6%減の27万393台にとどまった。消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動で、24.%減となった昨年10月を上回った。

問題は今後。新車販売は5月の速報も公表されているが、21万8285台と44.9%も減った。東日本大震災直後の2011年4月に47.3%減った例があるものの、未曾有の販売減少となった。

本番はこれから

しかも、消費の減少は一時的なものに止まりそうにない。というのも前述の家計調査では、勤労世帯(2人以上の世帯)の実収入も調査しているが、4月は53万1017円と前年同月に比べて1.0%増加。物価変動を除いた実質でも0.9%になった。

つまり、4月のこの統計では、収入は減っていない中で、生活スタイルが変わったことで11.1%も家計支出が減ったのである。

今後、企業業績の悪化によってボーナスの減額や月給のカットなどが行われる可能性が強まっている。中には企業の倒産や事業縮小によって仕事がなくなり失業する人も出ている。

収入が減れば当然、支出も抑えることになり、消費には大きなマイナスになる。4月時点では、そうした新型コロナ不況による消費減少という「本番」は迎えていないと言っていい。つまり、消費の大幅な減少が日本経済を襲うのはこれからなのだ。

雇用急転

実際、雇用は減少し始めている。

総務省が5月末に発表した4月の労働力調査によると、自営業者などを含めて職に就いている人を示す「就業者」も、企業などに雇われている「雇用者」も88カ月ぶりに前年同月比マイナスに転落した。

就業者・雇用者の増加が始まったのは2013年1月で、第2次安倍晋三内閣が発足した翌月から。安倍首相自身、雇用が増え続けてきたことを、繰り返しアベノミクスの成果だとしてきた。それが遂にマイナスに転じたのである。

4月の雇用者数は5923万人で、3月は6009万人だったから、季節要因があるとしても、86万人が職を失った。4月ということもあって正規社員は増加しており、非正規雇用だけを比べると2150万人から2019万人へと131万人も職を失っている。大半が女性のパートや学生アルバイトだ。

パートの女性が失業して収入を失えば、当然、家計支出は減少する。

コロナリストラに後手後手

すでに業績悪化が鮮明になっている外食産業では店舗の閉鎖や業態転換などの動きが出始めた。ジョイフル(大分市)は直営店の3割近くに当たる約200店を、7月から順次閉店することを明らかにした。新型コロナの蔓延長期化で、簡単には来客数の増加が見込めないことから、採算の悪い店を中心に大量閉店に踏み切る。

ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングスも2021年までに全国の約1割に当たる約70店を閉めることを明らかにしている。また、居酒屋チェーンのワタミも2020年度中に65店舗を閉店する方針を示している。

当然、こうしたリストラによって、多くのパートやバイトが職を失うことになる。

さらに、今後も人の動きが制約を受け続ければ、航空業界や鉄道、バスなどの規模の大きい企業の業績悪化も深刻化してくることになる。そうなれば従業員数を減らさざるを得なくなる可能性が出てくる。

政府は雇用調整助成金制度の拡充や、持続化給付金などの支援策で失業発生を防ごうとしているが、対策が後手後手に回っている。消費の落ち込みが続けば、日本経済への打撃は大きい。