大前研一「ニュースの視点」Blog

KON816「新型コロナウイルス/米インフルエンザ~CNNが指摘する米国の矛盾」

2020年2月17日 新型コロナウイルス 米インフルエンザ

本文の内容
  • 新型コロナウイルス 中国全土の死者数811人
  • 米インフルエンザ 患者数2200万人、死者1万2000人

新型コロナでオリンピックが中止になる可能性もあり得る


中国当局が8日に発表した新型コロナウイルスに伴う死者数は、中国本土で811人、感染者は3万7198人となりました。

一方、加藤厚生労働相は9日、日本国内では感染が拡大している状況ではないと説明するとともに、横浜港に停泊しているクルーズ船の乗客に対し服用薬の供給を迅速に進めると語りました。

中国が発表している感染者数は少なすぎると私は思います。

中国の発表によると1月20日から感染者数がカウントされた数字になっていますが、実際には昨年の12月には感染者が見つかっていました。

実態として、おそらく30万~50万人の感染者がいるのではないかと私は見ています。

加藤厚生労働相は「日本国内では感染が拡大している状況ではない」と話していますが、今「日本に感染が拡大しているように」世界から認識されつつあり、大きな問題になる可能性があると私は思っています。

日本政府が武漢から帰国を許可し、その中に感染している人もいました。

その人たちは日本の感染者数としてカウントされていきます。

日本国内で感染が広がっているわけではありませんが、これらの数字が積み上がると日本の感染者数は60人を超えて、中国以外では日本が最も感染者数が多い国になってしまうかもしれません。

これは世界の国々に与える印象が極めて良くありません。

米国やシンガポール、オーストラリアなどはすでに中国全土からの入国を拒否していますが、日本も同様の措置を受ける可能性があります。

すでにミクロネシアでは、中国だけでなく日本など新型コロナウイルスの感染者が確認された国からの入国は禁止になっています。

私も近々オーストラリアに行く予定がありますが、もしかすると入国禁止にされてしまうかもしれません。

このままの状況が続くと懸念せざるを得ないのが、7月に開催予定のオリンピックです。

SARSは7月になって気温が上がったことで沈静化したと言われています。

今回の新型コロナウイルスも同様であれば、7月まで沈静化しない可能性があります。

そうなれば、IOCはオリンピックの中止を決定するかもしれません。

また、仮に開催されたとしても観客は誰もいないという状況も考えられます。

欧州をはじめ世界中の多くの国では、日本と中国の明確な違いを理解していない人が大半だと思います。

「極東の国」というひとまとめで考えている人も多いでしょう。

新型コロナウイルスを恐れて、日本のオリンピック観戦を取りやめる人がでてきても全く不思議ではありません。

そのような懸念がある中で、今回の日本政府によるクルーズ船への対応は最悪だと思います。

武漢の大学病院では患者の約4割は院内感染だったそうです。

すなわち、病院に長蛇の列で並んでいる間に感染してしまったということです。

狭い空間に感染者と一緒にいることがいかに危険であり、また感染者を増やしてしまうことにつながるか、理解できるはずです。

それなのに、感染者がいるかもしれないクルーズ船内に2週間も閉じ込めることを日本政府は決定しました。

これでは、感染が広がるばかりだと思います。

本来なら、数万人を収容できる施設で全員の検査を徹底するべきです。

また、例えば米国人には米国へ帰国してもらうなど外国人は自国に引き受けてもらえるように手配すべきです。

そうしないと、ますます日本が「汚染」されたという印象が強くなります。

乗客だけでなく1000人近いスタッフも感染の危険にさらされ、もちろん他の病気になる可能性もあります。

今回のクルーズ船に関する政府の意思決定は、本当に大きな間違いだと強く感じます。




中国の新型コロナよりも、米国のインフルエンザのほうが危険とも言える


アメリカ疾病対策センターの統計によると、昨年から今年にかけてのインフルエンザの患者数が米国で2200万人、死者が1万2000人に達しました。

インフルエンザは例年10月頃に始まり、2月にピークを迎え、5月頃まで続く傾向があります。

アメリカ国立アレルギー・感染症研究所によると、今シーズンは過去10年で最悪の規模に拡大する見通しとのことです。

死者1万2000人でも多いと感じますが、ある説によると、患者は2500万人で、死者は2万5000人とも言われています。

新型コロナウイルスに過剰反応して中国行きの飛行機をキャンセルさせている米国ですが、この状況からみれば米国のインフルエンザのほうがよほど危険だと指摘されても致し方ありません。

CNNはこの点を指摘して米国の矛盾を報じていますが、残念なことに日本ではあまり報道されていません。

米国における死因別の死者数を見ると、毎年約5万人がインフルエンザに起因して亡くなっています。

米国におけるインフルエンザは極めて怖い病気だと言えます。

ワクチンや治療薬もあるので安心できると感じてしまいがちですが、死者数を見ればはるかに新型コロナウイルスよりも恐ろしいものだと思います。

今回の新型コロナウイルスについて、これだけ世界中で騒ぎが大きくなってしまった一因には中国自身による過剰反応の影響があると思います。

中国が湖北省すべてを閉鎖するなど過剰に反応し過ぎたために、世界中もそれに応じて危険性を感じてしまいました。

中国の初動にミスがあったと私は感じます。

それにしても、これだけ武漢に集中して感染者が出ている理由は不明です。

コウモリを媒介にして広まったSARSに対して、蛇を媒介にしたと言われている新型コロナウイルスですが、武漢と同じようなものを売っている市場は他にもたくさんあるので、武漢だけに感染者が集中した理由にはならないと思います。

イスラエルでは、武漢には生物兵器を研究していた細菌研究所があり、そこから漏れたためとも報じられていますが、真偽は定かではありません。




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※この記事は2月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は米インフルエンザのニュースを大前が解説しました。

日本では、新型コロナウイルスのニュースが連日取り上げられ、米インフルエンザの状況はあまり報道されていません。

いつも同じ情報源で生活していると、知らず知らずのうちに情報が偏ってしまうことがあります。

日頃から複数のメディアをチェックし、客観的に物事を把握する癖をつけることが大切です。


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