イスラエル・パレスチナ


では、このオバマ・バイデン同窓会チーム、オバマ同窓会チームが何をするのかということで、見ていきましょう。まずイスラエルとパレスチナ地域です。強調しないといけない点があります。それは、バイデンという政治家は、とことんイスラエル支持でやってきた人なのですよ。そうじゃないと、そう長くアメリカでは政治家を、やっていられないというところもあります。バイデンが一番よく言うことは、「俺の親父がよく言っていた。シオニストになるためにユダヤ人である必要はないんだ。俺はユダヤ人ではない、俺はユダヤ教じゃない。カトリック教徒だ。けれど、俺はシオニストだ」。そう、事あるごとにユダヤ人相手の集会でバイデンは言います。


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こういう大統領です。では、副大統領は?副大統領はジャマイカ系でインド系という話をしました。ハリス副大統領の旦那さんはユダヤ系です。エムホフさんという弁護士で、今アメリカのユダヤ人社会ですごく人気がある人です。だから大統領はシオニストで、副大統領はユダヤ系の旦那を持っています。大統領の首席補佐官のロン・クレインもユダヤ系です。アントニー・ブリンケン国務長官もお話してきたようにユダヤ系です。副国務長官のウェンディ・シャーマンもユダヤ系です。シャーマンはユダヤ系の中でも正統派というか、最も伝統的な人たちです。正統派のユダヤ人は男女席を同じくせず、というか、家族以外の男女が体を触れ合うことはないのです。だからイランと交渉する時、普通は外交交渉をする時には最初、嘘でも握手するじゃないですか。イラン側が悪いけど、「我々はイスラム教徒だから、女性と握手できないんですよ」と言ったら、「あ、大丈夫ですよ。それは慣れっこで、我々もそうなんですから」と言い返したと、シャーマンが回顧しています。イラン担当になったロバート・マレーは?この人のお父さんがエジプト出身のユダヤ系なのです。だからある意味イスラエルという国に対する思いというのは皆強い、だから「イスラエル、消えてなくなれ」と言う人はバイデン政権では誰もいない。


ただ、さはさりながら、じゃあイスラエルのやっていること全部好きかというと、そうもいかない。特にネタニヤフは、トランプと特に親しかったですよね。それは民主党的にはあまり面白くなかった。もう一つは、やはりイスラエルという国の在り方がどうあるべきかということに関して、やはりネタニヤフ首相とバイデン政権のエリートたちは考え方が違う。


パレスチナ問題というのがあるのだから、やはりヨルダン川西岸地区とガザにパレスチナ国家をつくって、パレスチナ人にも国を与えないとやはり安定はありえないでしょう、というのが二国家解決案です。バイデン政権は、これを皆支持しています。ところがネタニヤフ首相はそうではなくて、ユダヤ人をどんどん送り込んで、占領地を併合しています。実質、だからパレスチナ人の国をつくる土地が残らなくなってきているわけですよ。赤いところが入植地ですよね(地図を示す)。何百万人ものパレスチナ人をイスラエルが力で支配している。これって、アパルトヘイトですよね。


だからアメリカにいるユダヤ人は自分たちが支援してきた国がアパルトヘイトの国というのは嫌なのです。伝統的にリベラルな人たちで、この子どもたちを見て「やっぱりイスラエルって素晴らしいな」と思えるユダヤ人は少ない。この子どもたちを見て、「60年代に黒人に投票権を与えようと言って、デモに行って、警察でこんな目に遭わされたな、俺たちは」と思い出す人たちの方が多い。だからイスラエルが占領地を持ち続ける限り、民主的でユダヤ人の国というのはあり得ない。やはり占領地を切り離すべきだと思っている。イスラエルという国の形に関するビジョンが基本的に違うのです。


それからもちろんオバマ政権ではイランとの核交渉を一生懸命進めてきたのに、ネタニヤフはイランとの交渉は無駄だと。イランは信用できない、イランはもうここまで核爆弾に近づいているんだと、とことん反対した。だからイランをどうするかということに関してもネタニヤフとバイデン政権の人たちは違う。


特にこのネタニヤフとバイデンの間でカチンとくる事件がありました。オバマ政権はイスラエルに「頼むからもう入植地は増やさないでくれ、凍結してくれ」と訴えていた時期がありました。そのために、バイデンがイスラエルに行った日に、イスラエルが「入植地を増やします」と発表して、バイデンは顔を潰した事件があった。だから今回バイデンは大統領になって1カ月間ネタニヤフに電話しませんでした。「どうして電話しないんだ?」、「いや、忙しいからだ」と言うわけですよ。


だから決して二人のケミストリーというか、馬が合うという雰囲気ではない。そんなこともあって、感情面でも政策面でも齟齬があります。その上、中国の問題まであります。今アメリカが一番イスラエルに関して気にしていることは中国との接近です。中国はアメリカからハイテクがだんだん買えなくなっていますから、どうしているかというとイスラエルから買っています。アメリカにしてみれば、せっかくこっちが機微な技術を出さないようにしているのにイスラエルが売ったのでは、何の意味もなくなる。アメリカはかなりカチンときています。


もう一つ、今問題になっているのは、ハイファです。イスラエルの北にハイファというとてもきれいな港があります。きれいなだけではなくて、本当に重要な港ですが、この港の近代化を進めているのですね。大変なお金がかかるわけです。お金がどこから来ているかというと中国からです。いいじゃないですか。港がきれいになるのだから、中国のお金だって。お金には色がついてない。と言うのですけれど、アメリカは頭にきています。なぜアメリカは頭にきているかというと、このハイファ港がアメリカの地中海艦隊の寄港地になっているからです。アメリカの原子力空母が入る港を中国が管理していて機密が守れるわけがないじゃないですか。だからアメリカは、お前ら何を考えているのだ、アメリカに守ってもらっておいてと反発している。日本が横須賀を中国に管理してもらうような話じゃないですか。そんな港に「エンタープライズ来てください」なんて言われても、アメリカは嫌ですよね。そういう意味では、中国との関係が問題になっています。ハイファはここにあります(地図を示す)。


ただどちらにしても今、和平は動かないだろうと皆が思っています。一つはネタニヤフの汚職疑惑があります。たくさんあるのですが、通常なら裁判でとっくに失脚しているかもしれないですけれど、コロナ騒ぎで裁判が止まっていたのでネタニヤフはまだ健在です。コロナで死んだ人がたくさんいるのですが、コロナで生き延びたのは、この人だけです。


多々ある汚職疑惑を一つだけ紹介しますと、潜水艦の輸入を巡る件です。イスラエルがドイツから潜水艦を輸入したのですけれど、潜水艦ですから、水面下でお金が動いたと皆が思っている。ネタニヤフはそんなことはないと言い張っているのですが、その裁判が予定されています。そういう意味ではこの人もあまり清潔感にあふれた政治家ではなくて、うちの首相はPrime Ministerではなくて、“CRIME”Ministerだなんてデモられているという状況があります。だから一連の汚職疑惑が落ち着かない限り、ネタニヤフはとても中東和平なんかに乗ってくる余裕がない。


それからもう一つは3月の末に総選挙があります。それまではイスラエルの内政は基本的に動かない。しかもイスラエルの内政は過半数を取る政党がない。10いくつの政党が議席を取ります。そうするとその10いくつで連立交渉をやるので、それがだいたい短くても4週間、6週間、まとまらずにまた選挙というので、この2年で4回目の選挙をやっているわけですね。だから少なくとも中東現地の感覚でいくと、夏まで、5月、6月まではイスラエルの内政は動かない。ということは中東和平をやっても仕方がない。こういうことで、バイデン政権ではおそらくこのイスラエル・パレスチナ問題について、アメリカから働きかけることはないと思います。というので、だいたい1時間ですかね。


最後に一言だけ言うと、イスラエルのワクチン接種が、素晴らしいスピードで進んでいます。それは、ネタニヤフは選挙前までにワクチンを打って、「俺のおかげで皆、元気だろう」と言いたいからなのですよね。だから日本も選挙をやればワクチン接種が進みますよ。では10分ほどお休みします。


皆さん、お戻りでしょうか。これを機に帰っちゃった人がいるかな。


>>次回につづく