■AV被害に遭った女性に残る恐怖

モデルの仕事などと言葉巧みに誘われたり、金銭的な理由からAVの撮影に応じたものの、事後に取り消すことができないAV被害。


AV被害に遭った女性(20代)
「女の子が裸になっているような写真を何枚も見せられて、『5000円でどう』っていう風に『動画を撮らせてくれたら2万円あげるよ』と」

2万円はネットカフェに1週間以上泊まれる金額。女性は性行為の撮影に応じました。

AV被害に遭った女性
「20歳には死にたいと思ってたので、どうせこの世界でしか生きられない。どうせ死ぬならまあいいかなって思ってました」

父親から暴力を受け、15歳の時、児童福祉施設に保護されました。18歳で施設を出ざるを得ず、体と引き替えに住む場所をくれる大人がいる歓楽街を選ぶしかなかったといいます。

ネットで販売されたという自分の動画が今も誰かに見られているのではないか。女性は恐怖を感じています。

AV被害に遭った女性
「後悔というか抗えない力に無力感を感じて、電車に乗った時とか隣で風俗の女の子のプロフィール見ているおじさんとかを見ると、この人、もしかしたら私の画像を見ているかもしれないと思うと、本当に電車だったら駅に降りたいみたいな感覚」

■増加するAV被害 成人年齢引き下げでさらなる懸念

女性たちが性産業に不本意に足を踏み入れるのを防ぐため活動するNPOがあります。この日、新宿・歌舞伎町で10代から20代の女性たちに声をかけていました。

 

「LINEを交換した後に『お茶しない?』ということで、喫茶店に行ったところで風俗やAVを勧められて断れなくなってしまう。AV被害ですと、特に社会に希望が持てなくなった瞬間とか居場所を失う瞬間をスカウトは見逃さない」

 


NPO法人「ぱっぷす」 金尻カズナ理事長
「被害の低年齢化。高校生であっても声をかけて、アイドル活動やユーチューバーをさせて、その後AVに出演させるケースも実際にある」

さらに、今年4月から成人年齢が引き下げられたことで、18歳、19歳の被害が増える恐れがあるのです。

そこで、超党派の議員がAV被害対策法案をまとめました。法案では、年齢や性別にかかわらず、映像の公表から1年間は無条件で契約を解除できるとされています。また、契約を交わしてから撮影までに必要な期間を1か月、撮影の終了から公開までに必要な期間を4か月とするとしています。

 

「画期的なものだと。被害者の立場に立った形になっている」

法案は先月、衆院を通過し、今月中にも成立する見込みです。

■「本番の性行為も合法化」法案に課題も

この法案で救われる人もいるという声がある一方で、大きな懸念の声もあがっています。

少女支援団体Colabo 仁藤夢乃代表
「本番の性行為も合法化するような法案になっているので、これは大変なことではないかと」

今国会で成立する予定のAV被害対策法案に、懸念の声が上がっています。

少女支援団体Colabo 仁藤夢乃代表
「AVの被害は契約に問題があるから起きるのではなく、陵虐的な身体的暴行や性暴力を受け、リアルな性交が求められるからこそ起きているものです」

法案が成立することで、AV撮影時の性行為を法的に認めてしまうことになるのです。

 

「(AVは)今までは法律上はグレーな状態で流通していた。いわゆる本番の性交、つまり挿入行為をしているのかどうかは、表向きはモザイクの下では性交はしていない。ところが今回の法案では、厳格な要件を満たしさえすれば、いわゆる本番の性交を有償で撮影する契約が有効になってしまう」

■「好きでやっている」でなく「AVを選択せざるを得ない」背景は?

虐待や性被害、貧困が背景にあり、AVを選択せざるを得なかったという女性は少なくありません。


AV被害に遭った女性
「いま思うと、あれは全て自傷行為だったと思っているし、行政とか福祉とかいろんな制度は、私たちみたいな、なかったことにされている存在にとっては使えないし。だから、こういう業界で性的搾取が行われているんだろうなって。『好きでやっているんでしょ』の一言では片付けないでほしいなと思っている」