- 本文の内容
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- 2020年米大統領選 民主党バイデン候補が勝利宣言
- 米大統領選選挙方法 時代遅れでポンコツのアメリカ大統領選挙はこう変えよ
- 米連邦最高判事 エイミー・バレット氏を承認
米大統領選挙は、もっとシンプルな選挙方法に変更すべき
7日夜、米民主党のジョー・バイデン前副大統領は、地元デラウェア州で演説を行い「確信できる勝利だ。国民は7400万以上の票をもって当選させてくれた」と述べ、勝利宣言をしました。
トランプ大統領は法廷闘争による抵抗の構えを見せていますが、バイデン氏は「分断ではなく統合を追求する」大統領になることを誓うと呼びかけました。
前回の選挙では民主党のヒラリー氏が得票率では上回ったものの、選挙人の獲得数でトランプ大統領に及びませんでしたが、今回バイデン氏は選挙人を290人ほど獲得し勝利宣言に至っています。
一方、トランプ大統領は214人の選挙人を獲得し、得票率は47.5%、7000万票以上を獲得しています。
今回の大統領選挙の結果には、米国が大きく分断された様子が非常によく表れています。
あまりにも両陣営による分断が明確になり、市民同士の暴力沙汰に発展するほどになっています。
ニューズウィーク誌は「時代遅れでポンコツのアメリカ大統領選挙はこう変えよ」という特集記事を掲載していましたが、まさにこの点は今の米国が解決すべき大きな課題の1つだと私も思います。
私に言わせれば、もっとストレートに「選挙人の制度を廃止して、絶対数(得票数)が多い方を勝ちとする」というシンプルな選挙方法にすべきだと感じています。
今の米国大統領選挙で採用されている選挙人制度では、民意とかけ離れた結果になることもあります。
絶対数で決めるというのは、至極当たり前の考え方ですが、このような簡単な変更ができないのが、現状の米国の課題だと思います。
前回ヒラリー氏がトランプ大統領に敗れたときに痛い目にあっていますし、民主党はすぐに手を打つべきでしょう。
これからのトランプ大統領の危険性。バイデン新大統領に期待できること
トランプ陣営はしきりに訴訟を訴えていますが、非常に失礼なことだと私は思います。
今回の郵便投票はかなり厳格に行われています。
封筒も二重にするなど、トランプ大統領が言うほど不正が簡単にできる仕組みにはなっていません。
もちろん、将来的にネット投票で対応できるようにするということも重要ですが、選挙制度の変更については、上述したようにもっと大きな視点で、米国にとって大きな課題として捉えて取り組むべきものだと思います。
バイデン氏が大統領に就任した場合、「バイデン氏の息子にかけられている疑惑がもみ消されてしまうのか?」という疑問もあるようですが、私はあり得ないと思います。
罷免にまで発展するかどうかはわかりませんが、調査は進むでしょうし、それを防ぐことは無理でしょう。
それよりも、トランプ大統領の今後に懸念を感じざるを得ません。
「大統領を辞任したら、ホワイトハウスから刑務所に直行する史上初めての大統領になる」と噂されていますが、その可能性は確かにあります。
トランプ大統領のみならず、息子や娘にもさまざまな訴状が届いている状態ですから、トランプ氏が大統領を辞任したら、トランプ一家は非常に大変な事態を迎えることになると思います。
そうなってくると、トランプ大統領が残りの「在任期間」中に自暴自棄になっておかしなことをしないか不安に思います。
最近のトランプ大統領を見ていると、何ら理由もないのに不正だと喚きたてるなど、以前にも増して頭のネジがどこかへ飛んでしまったような状態に見えます。
そんなトランプ大統領が、米国の「核のボタン」を握っているのです。
もともと、トランプ大統領は「ミー・ファースト(Me First)」を体現したような人物ですから、「自分が終わってしまうなら、世の中も終わってしまえ」というような極端な発想をする可能性も否定できないと私は思います。
また、私は「米国全体がおかしくなってしまった」とも感じています。
ここまで危険なトランプ大統領が4年間の任期を全うし、あまつさえ今回の選挙でも国民の約半数から支持を得ています。
私はトランプ大統領が就任したとき、「100日ももたない」と思っていましたが悪い意味で裏切られました。
大統領になった後も、寝言のようなことを口走り、ツイッターに削除されるような発言を繰り返していました。
そんな人物を国民の半数が支持する国、それが今の米国なのだと思うと何とも恐ろしく感じてしまいます。
では米国の将来を憂いた時、「バイデン大統領の誕生によって大きな変化が期待できるのか?」というと、その可能性も低いでしょう。
バイデン氏の最も大きな役割は「トランプ大統領の追放」でした。
その意味で言えば、今回の選挙で、トランプ大統領に勝利したことで、バイデン氏は「ほぼ役割を終えた」と言っても過言ではないと私は思います。
もちろん、大きな期待をしたいという気持ちもわかりますが、バイデン氏の過去の実績を振り返れば難しいと言わざるを得ないでしょう。
オバマ前大統領の副大統領を8年も務めながら、何1つ特徴的なことを行っていません。
またそれ以前の50年間で見ても、政治家をやっていて明確なビジョンを示していません。
そういう人物が急に大統領になったからといって、頭の中から新しいビジョンが生まれてくるとは私には思えません。
唯一期待できるのは、パリ協定やTPPに復帰するなど、トランプ大統領が行った「非国際的な施策」を元に戻すことでしょう。
そのぐらいであれば実現できるでしょうし、それだけでも世界的には、特に欧州にとっては一安心できる材料になると思います。
米連邦最高裁判所に、トランプ大統領の恣意が入り込む余地はない
米議会上院は先月26日、連邦最高裁判所の判事に保守派のエイミー・バレット氏をあてる人事を発表しました。
バレット氏は敬虔なカトリック教徒で、人工妊娠中絶やオバマケアに批判的な立場をとっており、今後大統領選の結果やトランプ氏の財務記録に関する訴訟が起こった場合、判決に影響を与える可能性があると報じられています。
しかし、私はそのような可能性は非常に低いと思います。
バレット氏は賢明な人物です。
ほとんど「死に体」になっているトランプ大統領に、特別有利なことをするメリットもないでしょうし、そもそも米国の連邦最高裁判所はそのような恣意的な判断をする組織ではないと思います。
バレット氏が個人的に敬虔なカトリック教徒として避妊などに反対する意見を持っていたとしても、今回バレット氏は判事になるにあたって「米国の法」に忠誠を誓ったはずですから、それを遵守する人物だと思います。
トランプ大統領は何かを期待しているのかもしれませんし、バイデン氏ならもっと改革派の人物を選んだかもしれません。
しかし、そういった恣意的な判断が連邦最高裁判所に影響を与えることはないでしょう。
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※この記事は11月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は2020年米国大統領選のニュースを大前が解説しました。
大前は大統領選挙の仕組みについて、「現在の選挙人制度では、民意とかけ離れた結果になることもあるため、絶対数(得票数)が多い方を勝ちとする仕組みに変更するよう民主党は取り組むべき」と述べています。
当たり前だと思っていた取り組みも、気が付くと現状にそぐわない状態になっていることがあります。
定期的にあるべき姿とのギャップを把握し、問題解決に取り組む必要があります。
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