イラン核合意とは?


4月9日からイランとアメリカの間でイラン核合意の再生に向けての交渉がウィーンで始まっています。


まずイラン核合意とは何でしょうか。復習しておきましょう。これは、2015年にアメリカのオバマ大統領の時期にイランと6大国間で結ばれた合意です。この合意の内容は何だったのでしょうか。一方でイランが約束したのは、核開発への大幅な制限と厳しい査察の受け入れでした。これによってイランは同国の核開発が軍事転用されるのではないかとの国際社会の疑念の払拭(ふっしょく)に努めたのでした。他方、6大国とは、アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアの国連安保理の常任理事国5か国とドイツです。6カ国の方は、それまでイランに課されていた経済制裁の撤廃を約束しました。もっと詳しく書くと、この交渉にはEU(欧州連合)も代表者を送っていました。


ドイツの存在感


ドイツが安保理の常任理事国ではないのに、イランとの交渉に参加しているのが注目されます。ドイツとイランとの関係は第二次世界大戦前にさかのぼります。イランは近代化の過程でドイツに多数の留学生を送りました。南北から同国を圧迫していたソ連とイギリスの影響力が、それ以上強くなるのを懸念したイランは、両国以外の大国であるドイツを手本に近代化を進めようとしたのでした。


さて第二次大戦後は長らくイランから最大の石油輸入国であり、同国との友好関係を誇る日本が、この合意の交渉に招かれていないのは残念です。日本の外交担当者に考えて欲しい点です。


綱引き


さて核合意に話を戻しますと、2018年にアメリカのトランプ大統領が一方的に合意から離脱します。さらにイランに対する経済制裁を再開し強化しました。これによってイランの経済は大きな打撃を受けます。またアメリカとイランの関係が極度に悪化しました。両国は、戦争の瀬戸際に近づきました。


2020年のアメリカ大統領選挙で民主党のジョー・バイデン候補は、トランプのイラン政策を批判し、当選すれば核合意に復帰すると公約しました。そして昨年11月の選挙でバイデンが当選し、今年1月に大統領に就任しました。


ところが、待てども待てども核合意へは復帰しませんでした。そして4月になって、ようやく復帰のための交渉が始まりました。なぜ直ぐに復帰しなかったのでしょうか。なぜ3か月もの間、交渉が始まらなかったのでしょうか。理由は、イランによるウラン濃縮の拡大です。アメリカの合意離脱を受けて、イランも対抗措置として合意で決められた制限を超えたウラン濃縮を始めました。アメリカは、イランに対して、まず制限内に核開発を戻すようにと要求しています。そうすれば合意に復帰すると主張しました。


逆にイランは、アメリカが先に離脱したのだから、まずアメリカが経済制裁を撤廃すべきだ。そうすればイランも濃縮活動のレベルを下げると主張しています。どちらが最初の一歩を踏み出すのかという綱引きが両国間で行われています。これは面子(めんつ)の問題でもあります。

>>次回につづく