- 本文の内容
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- 金融 過去最大下落の前日比2352ドル安
- 原油 OPECの「落日」鮮明
あらためて20世紀の経済原論は通用しない、と証明された
12日のニューヨーク株式市場で、寄り付き直後から売り注文が殺到し、9日に引き続き、取引を中止するサーキットブレーカーが発動しました。
再開後も流れは変わらず、終値は前日比2352ドル安と過去最大の下げ幅となりました。
トランプ大統領は「全てコントロール下にありうまくいっている」と発言していたのに、急に非常事態宣言を発動しました。
トランプ大統領らしいドタバタ劇だと思います。
そんなドタバタ劇よりも、今回の株価の動きによって重要な問題として浮き彫りになったのは、「21世紀の今、20世紀の経済原論は通用しない」ということです。
21世紀の経済原論は、ボーダレス経済、マルチプル経済、サイバー経済であり、私はこれまでにも何度も20世紀の経済原論とは異なるものだと主張してきました。
両者の特性は、極端に言えば「真逆」です。
20世紀の経済原論では、景気を刺激するためには、金利を下げて、マネーサプライで市場をジャブジャブにするという方法が有効でした。
トランプ大統領も安倍首相も基本的にこの考え方しか持ち合わせていません。
国債を発行し、中央銀行に吸収させるというリフレ派の発想です。
今回の米国の対応も、トランプ大統領がパウエル氏に指示を出して、金利を強引に下げさせるというものでした。
これまで0.25%ずつ引き下げてきた金利を、一気に0.5%引き下げました。
しかし、マーケットの反応はゼロ。
むしろマーケットはさらに下落していきました。
これは20世紀の経済原論に対して、マーケットが反旗を翻したということだと私は思います。
また、マネーサプライも通用しませんでした。
約150兆円の資金を注入しましたが、同様にマーケットから全く反応はありませんでした。
マネーサプライで市場をジャブジャブにしても、その市場にニーズがなければ資金はさらに高いリターンを求めて外へ出ていきます。
※これを「キャリー」と呼びます。例えば日本円が外へ出て行く場合は「円キャリー」です。
今週に入って米国の株式市場は少し値段を戻しましたが、この1週間で見ると約2600ドル下落していて、リーマンショックに次ぐ大きな下げ幅を記録しました。
日米の株価の騰落率の推移をみると、下がる一方の日本に対して、米国は上下の振れ幅が非常に大きくなっています。
あまり見たことがないような深刻な問題になりつつあります。
今回、リーマンショックのときよりも厄介なのは、問題が明確ではないために、対策を打ちづらいということです。
リーマンショックにおいては「問題=貸し込んでいた銀行」であり、それは判明していましたから、対策を立てることが可能でした。
ところが、今回の相手はコロナウイルスです。
今後どのくらい感染が広がっていくのか、ドイツのメルケル首相が言うように国民の6~7割が感染してしまうのか、誰にもわかっていません。
日本にしても、とりあえず2~3週間様子見をしている状況にすぎません。
この間に収束するかどうか、見通しはたっていません。
今回の株価下落によって、トランプ大統領が就任以来稼いできた株価上昇分はほとんど消えました。
また、ツイッターでパウエル氏に指示を出して何とかごまかしていた手法も、今後は通用しないでしょう。
サウジアラビアとロシアVS米国という、原油をめぐる新しい対立の構図
日経新聞は10日、「OPECの『落日』鮮明」と題する記事を掲載しました。
ロシアのノワク・エネルギー担当相が6日、OPECとの会合で4月以降の協調減産強化を拒否したと紹介。
一方、原油価格の国際指標である北海ブレント先物が9日、一時1バレル30ドル台に急落し、ロシアは高コストのサウジアラビアに付き合うより、相場下落で自ら傷を受けながら強敵に育った米国のシェール企業を攻撃するほうが得策と判断したとしています。
言い方は悪いかもしれませんが、これは非常に興味深い話題です。
日本にとっては喧嘩を対岸から見ているだけで、原油価格は安ければ安いほどありがたい状況です。
まずOPECの原油減産に対して、ロシアが反対しました。
すなわち、OPECの中心にいるサウジアラビアとロシアが敵対したという構図になりました。
しかしその後、サウジアラビアの皇太子とロシア側が話し合いを持ち、対立するのではなく協力して米国を叩こうということになりました。
背景にあるのは、米国の原油生産量、輸出量の伸びです。
特にこの数年間の伸びは急激で、今や米国は国際供給で世界最大級の原油産出国であり輸出国に成長しています。
OPECからすれば、成長する米国にいじめられているような状況でした。
それに対して、この原油価格の下落を利用して米国の足腰が立たないようにしてしまいたい、というのがサウジアラビアとロシアの狙いでしょう。
米国は経済原則の国です。
シェールオイルの価格が1バレル30ドルを下回ってきたら、次々と閉鎖していくことになると思います。
そのようにして、一度米国を叩きのめして退場させてから、ゆっくりと自分たちだけで稼ごうということでしょう。
実際のところで言えば、サウジアラビアも1バレル80ドルくらいの価格を維持しないと今の無駄遣いの国家予算を正当化することはできません。
ベネズエラなどは1バレル120ドルほどの価格でなければ経済が成り立ちません。
ロシアは1バレル40ドルが限界と言われていましたが、先日プーチン大統領が1バレル25ドルでも戦えると公言しています。
米国の原油生産量の推移を見ると、原油価格の上昇に比例して次々シェールオイルを掘ってきたことがわかります。
原油輸出量も、サウジアラビアとロシアに迫る勢いを見せています。
今のうちに叩き潰しておかないといけないと感じるのも当然かもしれません。
OPECとロシアにとってはそんな米国を叩きのめすのは、今や「共通の夢」と言っても過言ではないでしょう。
「サウジアラビアとロシア」VS「米国」という新しい対決の構図が見えてきて、これも市場の混乱に拍車をかけている状況です。
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※この記事は3月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は金融のニュースを大前が解説しました。
20世紀の経済原論と、21世紀の経済原論。
この2つは異なる、と大前は述べています。
いままで上手くいっていた考え方でも次回上手くいくかはわかりません。
使い慣れた型だとしても常に見直し、時流を読みながらアップデートしていくことが大切です。
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