No.1519 何がバイデンをここまで好戦的にするのか?

何がバイデンをここまで好戦的にするのか?

by Patrick J Buchanan

その日バイデンが出かけると、コーン・ポップという名の悪党が3人のギャングと一緒にカミソリを持って待っていた・・・。 60年前のこの出来事が実際はどうであったにしろ、バイデンは就任して1年半の間に最高司令官として、もし相手が異議を唱えると著しい数の警告と脅迫を発しており、それによって彼自身と国の信用を危機にさらしている。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子との友好的なグータッチは、バイデンが最初に仕掛けていなければこれほど決定的な瞬間にはならなかったかもしれない。

2020年の選挙期間中バイデンは、皇太子に会ったら、ジャマル・カショギの殺害と切断を許可した彼を“社会ののけ者”のように扱うとワシントン・ポストのコラムニストに言った。

バイデンが密室でMBSと対峙したという描写については、サウジ側はこれに異議を唱え、多くの米国人もバイデンを信用していない。

なぜか?なぜならジョー・バイデンは、個人的な出会いについて自分自身を英雄のように描く経歴があるが、実際にそう記憶している人はほとんどいないからだ。

バイデンがよく話す典型は、バイデンが黒人居住区のプールの警備員として、コーン・ポップというギャングのリーダーが規則を破ったためにプールから出ていくよう命じた、という話である。

バイデンがその日出かけると、コーン・ポップが3人のギャングを連れて、カミソリを手に待っていた。バイデンは6フィートの長さの鎖を持って彼に立ち向かうと、コーン・ポップは引き下がったと彼は言う。

60年前のその出来事の事実がどうであれ、バイデンは就任後1年半の間に、最高司令官として挑戦されたらどうするかという警告や脅しを、驚くほど数多く発していて、それによって、彼自身と彼の国の信用が危機に瀕している。

中東歴訪前にバイデン氏は、イランの核武装を阻止するために武力を行使するかどうかを問われ、「それが最後の手段であれば、イエスだ」と答えた。

今回の歴訪で米国とイスラエルはイランへの核武装保有を認めないという共同宣言に署名した。我々は今コミットしている。

米国が今世紀に中東で行った5つの戦争―アフガニスタン、イラク、シリア、リビア、イエメンーを考えると、この地域の最大勢力の1つとの新たな戦争にコミットすることを米国が警戒していると考えるだろう。

ロシアのプーチン大統領がウクライナ国外に軍を増強した上で、ウクライナをロシアを対象とする同盟であるNATOに入れないという確約を何度も求めたとき、バイデン政権はこれを拒否した。

その後、2月に侵攻が行われ、バイデン氏のその後の脅しのうち、プーチン排除の呼びかけは事実上、戦争が目的だった。

バイデンはポーランドで「お願いだ、この男(プーチン)は権力の座に留まっていてはいけない」と叫んだが、この宣言はホワイトハウスのスタッフによって急遽撤回された。

ウクライナへの武器(長距離砲やロケット)を送ることに加えてバイデンはマドリードで開かれたNATO首脳会議で米国がヨーロッパでの軍事的プレゼンスを強化すると発表した。

米陸軍第五軍団の常設司令部はポーランドに移転。F-35戦闘機の2個飛行隊を英国に追加移転。ドイツとイタリアに、より多くの防空能力を移転する。バルト海沿岸地域への米軍のローテーション配備を増加させ、またルーマニアにも米軍を移動させる。

在欧米軍は約6万人から10万人に増強され、プーチンの侵攻は「ウクライナでロシアが敗北することでは終わらない」とバイデンは宣言した。

しかし、もしプーチンがドンバスを包囲したら、どのようにロシアの侵攻を撃退するのかバイデンは説明していない。

ロシア・ウクライナ戦争が始まってから、バイデンはNATOへの参加を約束してスウェーデンとフィンランドにも第5条の戦争保障(集団防衛)を与えている。

北極から黒海、アイスランドからエストニアまで、いまやヨーロッパの30カ国の防衛義務を米国は負っているのだ。

2021年、バイデンは、1950年代からの米国フィリピン相互安全保障条約は、中国が領有権を主張する南シナ海の岩や岩礁をフィリピンが取り戻そうとすれば米国はフィリピンの防衛に乗り出すことを意味していると言った。

バイデンのホワイトハウスによれば、日米安保条約における米国の集団安全保障は、同じく中国が主張する尖閣諸島にも及ぶとしている。

5月、東京でバイデンは、「台湾を守るために軍事的に関与する意思があるか」という記者の質問に対して、「イエス」ときっぱり答えた。

“それが我々が約束したことだ “と大統領は言った。

そうではない。米国は1979年に台湾を防衛するという正式な約束を破棄し、同盟条約に代わって台湾関係法を制定し、それによって米国は台湾の自衛のための装備を整えるのを助ける義務を負ったのである。

リチャード・ニクソンの北京訪問以来、米国の政策は台湾は「中国の一部」であるとして、今回もホワイトハウスのスタッフはバイデンが台湾のために戦うと宣言したことを撤回しようとした。

我々はヨーロッパだけでなく、中東やアジアの国々に対して、国境を守るために戦いに来るという白紙委任状を何十枚も書いてきた。

しかし我々にとって最も重要な国境である米国とメキシコの国境には、毎月25万人もの移民が押し寄せている。最悪なことに彼らは昨年米国の若者を10万人も殺したフェンタニル(麻薬)を持ち込んでくるのだ。

そして好戦的なジョーは、これに対してほとんど何もしていない。

 

https://buchanan.org/blog/what-makes-biden-so-pugnacious-159528