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11月6日(土) いのちと立憲主義をどう守るか [論攷]

〔以下の論攷は、11月31日に調布九条の会の第170回憲法ひろばで行った講演の記録です。『調布「憲法ひろば」』第197号、11月3日付、に掲載されました。〕

 調布九条の会「憲法ひろば」が10 月31 日13 時半から企画した170 回例会(10 月例会)は、10 月4日に就任したばかりの岸田文雄首相が仕掛けた奇襲作戦のもとで、何と、総選挙の投票日当日の開催となった。法政大学名誉教授・同大原社会問題研究所元所長の五十嵐仁さん(写真右下)をあくろすホールに招き、「総選挙と日本の進路--いのちと立憲主義をどう守る?」と題してお話を伺った。 今夜には選挙結果が判明するという時に、このテーマで話すのは「極めてリスキー」で、「私も岸田奇襲の犠牲者だ」と会場を沸かせながらの五十嵐さんの話は、結果がどう出ても「市民と野党の共闘」をさらに育てるのだという決意の火を、リアル参加25 人、オンライン参加5 人の胸に力強く灯した。司会は三浦久美子世話人(写真左)、記録は鈴木彰世話人が分担した。 (編集部)

◆新自由主義克服が世界の流れ

 世界は、右翼ポピュリズムから左翼リベラリズムへの転換を示しており、日本でも岸田のリベラル・ハト派への形だけの転換ではなく政権交代という本当の転換によって世界の流れに合流する転機を迎えている。
 その意味で、この総選挙と来年の参院選で壊憲勢力を3分の2以下にし、明文改憲にとどめを刺し、いのちと立憲主義を守るチャンスがやってきている。

◆内実の動きは時代に逆行

 戦後の政治・経済は第3の段階に移りつつある。第1段階は戦後すぐの修正資本主義の時代。公的な力も借りて資本蓄積と福祉増進を進めた。第2段階は80年代以降の規制緩和・新自由主義の時代。効率重視・民営化、自助優先・福祉切り捨てによって医療・介護・公助を脆弱化させた。特に近年、改憲・軍拡・辺野古埋め立て、モリカケ桜学術会議などの問題が噴出したが、改憲の手を縛ってきたのは運動の力だった。
 そしていま、コロナ禍で福祉の脆弱性がモロに出て、そこから転換する第3段階を迎えた。総裁選では、凄まじいメディア・ジャックの下で劇薬の河野、毒薬の高市、ハーブ茶の野田との競い合いを演出して漢方薬の岸田が選ばれた。しかし、岸田政権はアベミクスを反省も具体策も財源論もなく継承する「同じアベのムジナ」だ。

◆「カーキ色のハト」のジレンマ

 岸田政権への安倍支配はスガ政権の時より強く、アベ・アマリ・アソウという3A「背後霊」が取りついている。岸田さんはハト派の宏池会出身で金権疑惑の追及、新自由主義の転換、金融所得課税などの主張をしていたが、これをスッパリと放棄し、「防衛費の2%突破」、改憲などを語るという「カーキ色のハト」に変わった。これは大きなジレンマになっている。
 アベ・スガではダメなことが明らかになったいま、岸田カラーを出すのは簡単。先輩の古賀誠さんのように、「憲法九条は世界遺産だ」と言えばいい。ウソで進められてきたベトナム・イラク・アフガン戦争の問題点、対米従属、軍事対応の非現実性を指摘すればもっと良い。しかし「おんぶオバケ」のアベがそうさせない。

◆だからボロが出ぬ内に総選挙

 そこで、政権のボロが出ない内に、総裁選でのメディア・ジャックの効果がまだ残っている内に、コロナ感染が収まっている内に奇襲ともいうべき短期決戦に打って出た。
 メデイアは「自民に勢い」などと報じていたが、終盤には「自公VS野党共闘」と報道するようになっている。それがどう影響するか注目される。

◆奇襲攻撃に対する迎撃態勢を

 この総選挙で、もし自民が踏みとどまればそれは「自分を捨てて自民を救おう」としたスガさんの作戦勝ちということになる。
 これに対して野党の側は、4野党と市民連合による「共通政策」を合意。立憲と共産の党首会談でも部分的な閣外協力を合意し、200以上の小選挙区で与・野党1対1という構図をつくり出した。私も八王子市長選に出たことがあるが、立候補を決意するのは当事者の人生がかかったたいへんなことだ。それを取り下げる。自己犠牲的な献身だと言える。このような犠牲を踏まえて、共通政策の実現に向けての歴史的な一歩が始まっている。

◆憲法12条が求める不断の努力

 しかし、共闘への根強い逆風もあり、「選挙では協力を」、「しかし政権には口を出してほしくない」などという声もある。民間大企業労組を抱える「連合」からは「共産党との共闘はダメ」との横やりが入る。これらは根拠のない「反共主義」に根ざすもので、自公政権を利するものだ。
 野党共闘が首尾よく効果を発揮し、自公が過半数を割ったとしても、参議院は自公が多数。衆参がネジレになるだけだ。
 だが、コロナ禍で命が脅かされ、職が奪われ、食うや食わずの暮らしになっている。それで良いのか。役割を終えた自民党政治を転換する必要がある。総選挙の結果がどのようなものであっても、共生と連帯への展望を持ち続けなければならない。そのためには、憲法12条のいう「不断の努力」が求められる。
 いのちと立憲主義、憲法9条を守るために、総選挙で追い込み、来年の参院選で逆転する。これを草の根から支える運動を不断に前進させよう。


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