「改めてコロナ対策の強化図る」

 菅義偉首相は4日午前、首相官邸で年頭の記者会見に臨み、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を検討すると表明した。首都圏でのコロナ感染の深刻化を踏まえた措置で、「より強いメッセージが必要だと考えた」と語った。
 会見の詳報は次の通り。(2021年1月4日)

◇ ◇ ◇

 新年にあたり一言ごあいさつをさせていただきます。例年であれば五穀豊穣と人々の幸せを祈る伊勢神宮へ参拝した後に年頭の記者会見を行っておりましたが、今年は現在の新型コロナウイルスの状況を踏まえ、参拝をしかるべき時期まで延期し、ここ官邸において会見を行うことになりました。

 新型コロナウイルスについては引き続き1日の感染者数が3000人を超え、重症者数も高い水準で推移をしており、非常に厳しい状況だと認識をいたしております。まずは、年末年始も最前線で戦っておられる医療、介護をはじめとする関係の方々、そして外出や帰省を控えていただいている国民の皆様に心から感謝を申し上げる次第です。

4つのコロナ対策

 政府としてはこうした厳しい状況を踏まえ、改めてコロナ対策の強化を図ってきたい、こういうふうに思います。まずは、感染対策、さらに水際対策、医療体制、ワクチンの早期接種、この4点で強力な対策を講じることにいたしました。


 第一に感染対策です。12月の人出は多くの場所で減少しましたが、特に東京都近県の繁華街の、夜の人出はあまり減っておりませんでした。昨年以来、対策に取り組む中で判明したことは、経路不明の感染原因の多くは飲食によるものと専門家が指摘をいたしております。従って飲食でのリスクを抑えることが重要です。そのため夜の会合を控え、飲食店の時間短縮にご協力いただくことが最も有効ということであります。1都3県について改めて先般、時間短縮の20時までの前倒しを要請いたしました。そして、国として緊急事態宣言の検討に入ります。飲食の感染リスクの軽減を実効的なものにするために、内容を早急に詰めます。さらに給付金と罰則をセットにして、より実効的な対策を取るために特措法を通常国会に提出をいたします。


 第二に水際対策です。年末にウイルスの変異種が帰国者から見つかり、外国人の新規入国を原則として拒否することにし、入国規制を強化いたします。また、いわゆるビジネストラックについても相手国の国内で変異種が発見をされた際には即時停止とすることにいたします。


 第三に医療体制です。特に東京をはじめとするいくつかの都市で逼迫(ひっぱく)する状況が続いております。各地域において新型コロナウイルスを受け入れる病院・病床の数、増やしていただく必要があります。国として看護師などスタッフの確保、財政支援を徹底して行うとともに、各自治体と一体となって病床確保を進めてまいります。必要ならば自衛隊の医療チームの投入も躊躇いたしません。医療崩壊を絶対に防ぎ、必要な方に必要な医療を提供いたします。


 第四にワクチンです。感染対策の決め手となるワクチンについては、当初2月中に製薬会社の治験データがまとまるということでしたが、日本政府から米国本社に対して強く要請し、今月中にはまとまる予定であります。その上で、安全性・有効性の審査を進めて承認されたワクチンをできる限り2月下旬までには接種開始できるように政府一体となって準備を進めております。まずは医療従事者、高齢者、高齢者施設の従業員の皆さんから順次開始したいと思います。私も率先してワクチンを接種いたします。

 それまでの間、国・自治体そして国民の皆さまが感染拡大を減少に転じさせるために同じ方向に向かって行動することが大事です。これから新年会のシーズンを迎えます。引き続き、不要不急の外出などは控えていただきたいと思います。従来のウイルスも変異種も対策は同じです。マスク、手洗い、3密の回避をぜひお願いを致します。今こそ国民の皆さまとともにこの危機を乗り越えていきたいと思います。ぜひとも皆さま方のご協力をよろしくお願いを申し上げます。

年頭抱負

 まずは新型コロナウイルスの感染を収束させ、その上で新たな時代においてわが国経済が再び成長し、世界をリードしていくことができるように就任以来100日余り、これまでの発想にとらわれない改革を続けてまいりました。できるものから実現し、国民の皆さんに成果をお届けする。私は令和3年、そんな年にしたいと思います。

携帯料金・国土強靭化・農業

 携帯電話料金については大手が相次いで現在の半分程度となる大容量プランを実現すると発表し、本格的な競争に向けて大きな節目を迎えました。また地方の活性化については1兆5000億円の交付金を用意し、地域社会の立て直しを進めていただきたいと思います。また5年間で15兆円規模の国土強靭(きょうじん)化にも取り組んでいきます。農産物の輸出については新たな野心的な計画のもとで、米や牛肉などの専門的、重点品目の産地をしっかり支援をしていきます。

デジタル・グリーン

 さらに次の時代の、成長の原動力となるのがデジタルとグリーンです。今年の9月にはデジタル庁をスタートさせ、いよいよ改革を本格化させます。有能なデジタル人材が国や地方の現場で、また民間でも活躍をし、同時にすべての国民の方々が恩恵を実感することができるデジタル社会を目指して参ります。また2050年カーボンニュートラル。ここを目指して年末に取りまとめました、グリーン成長戦略をさらに具体化し、できるものから実行に移していきます。2兆円の基金、税制を活用して再生可能エネルギーの鍵となる蓄電池を筆頭に大規模な設備投資や研究開発投資を実現します。このような成長志向型の政策、これからも展開をしていきます。

不妊治療・待機児童・35人学級

 長年にわたり最大の課題とされる少子化問題についても大きく歩みを進め、これからの世代が希望を持てる年にしたいと思います。不妊治療の保険適用を来年4月から開始をします。現行の助成制度も所得制限を撤廃して、2回目以降の助成額を倍にした上で、予算成立後、1月1日にさかのぼって適用をいたします。さらに今後4年間かけて14万人分の保育の受け皿を整備し待機児童の最終的な解決を図ります。加えて40年ぶりの大改革として、長年の課題でありました35人学級。本年から実現をし、生徒一人ひとりに行き届いた教育を進めてまいります。このような少子化対策、若者の皆さんのための政策をこれからも続けていきたいと思ってます。

外交

 コロナが世界の対立を生み出し、修復の兆しがいまだ見えない中だからこそ、私は多国間主義を重視し、ポストコロナの秩序づくりにリーダーシップを発揮してきたいと思います。その上で最も重要なパートナーが米国です。バイデン次期大統領が就任された後、できる限り早くお会いをして、日米同盟の絆をより強固なものにしたいと思います。そして最も重要な拉致問題や国際社会が直面する課題の解決に、緊密に協力をしていく関係を築き上げていきたい、このように思います。この日米同盟を基軸にしながら豪州、インド、欧州、ASEANなどさまざまな国・地域と連携を深め、自由で開かれたインド太平洋の実現に取り組みます。また同時に、中国、ロシア、近隣諸国との安定的な関係を築いていきたいと思います。

五輪・結び

 当面は新型コロナウイルス、その克服に全力を尽くします。一日も早くこれまでの日常を取り戻し、皆さんに安心と希望をお届けしたいと思います。夏の東京オリンピック・パラリンピックは人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、また東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います。感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けするこの大会を実現するとの決意のもと準備を進めてまいります。今年は改革の芽を大きく育て、国民の皆さんにその果実を実感して頂きたいと思ってます。そして後に令和3年を振り返った時、「その年が新たな成長に向かう転機となった変革の年であった」、こう言われる年にしたいと思います。

 そうした思いで国民のために働く内閣として、今年も全力で取り組んで参ります。私からは以上です。