No. 1290 ワクチン重視のWHO

新型コロナウイルスのパンデミックにより、これまであまり表に出ることのなかった世界保健機関(WHO)の活動がメディアで報じられるようになった。

5月の年次総会では、新型コロナウイルスを巡る公平で独立した包括的な検証と、透明性かつ公正で適切なタイミングでの治療法やワクチン開発を加盟国との協議の上で進めるという決議案が提出された一方で、米国がWHOを「中国寄り」だと批判し、資金拠出の停止に加えて脱退を検討すると通告した。WHO予算の約15%が米国からであることを考えると、それが止まればWHOの財源には多大な損失が生じることになる。

WHOに対する懐疑的な声は、WHOが活動資金を製薬会社などから得ているとして利益相反が以前から指摘されてきた。2009年の新型インフルエンザの時にもWHOはパンデミック宣言を行い、各国政府は多額のワクチン予算をとったが、ワクチンが来た時には流行は終わっていて使われることはなかった。欧州議会はこれに対して製薬会社がWHOに不当な影響を与えたとして審議を行い、WHOは製薬会社の影響を否定したが、パンデミックかどうかを決定する委員の構成も公表しない秘密主義では疑惑が出るのは当然であろう。

米国に次いでWHOに2番目に多く資金を拠出しているのはビル&メリンダ・ゲイツ財団で、3番目はGAVIアライアンスというワクチンと予防接種を推進する同盟である。GAVIに資金を拠出しているのはワクチン業界や各国政府、そしてここでもゲイツ財団が資金提供者となっており、WHOに対してゲイツ財団がどれほど強い影響力を持っているかは言うまでもない。WHOのテドロス事務局長はかつてGAVIの理事を務め、今はWHOで新型コロナウイルスのワクチンアジェンダを推進している。

利益相反といえば、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の所長で米国政府コロナ対策チームの主要メンバーであるファウチ博士も熱心なワクチン擁護者だが、ファウチ博士に関する腐敗を暴露した「Plague of Corruption」(腐敗の疫病)という本が米国で話題になっている。著者マイコビッツ氏はウイルスの研究者であり、本の中でファウチ博士がワクチンの特許を持っていて、それによって大もうけをしていると指摘しているのだ。

アフリカのマダガスカルでは、マラリアに効果があるとされている植物で作った「コヴィッド・オーガニック」という薬草茶を大統領が新型コロナ感染の治療薬として承認し、無償または低価格で国民に配布しているという。同国では新型コロナで死者を出していないが、WHOはこの薬草茶の服用を警告している。治療薬が見つかってしまえばワクチンの出番は無くなってしまうからであろうが、この対応からもWHOの方向性が治療よりもワクチン重視であることがうかがわれる。トランプ大統領は「中国寄り」を理由にWHO脱退をほのめかしているが、WHOとゲイツ財団やワクチン業界との密接な関係についても我々は注視しておく必要があるだろう。