日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ)
西村大臣のドタバタ劇をみると、日本の官僚機構には大局的な意思決定をする中枢が機能していないとあらためて感じる。これは日本の大組織がタコツボ的な小集団の集合体で、組織内の調整が属人的なすり合わせで行われているためだ。

こういう組織は、緊急事態や戦争には向いていない。特に前線と後方の連絡が悪く、作戦がバラバラになってしまう。日本軍が「情報軽視」だったとよくいわれるが、情報部門の暗号解読能力は高く、米軍のもっとも高度な「ストリップ暗号」まで解読していた。問題は、こうして収集された情報がほとんど戦略決定に生かされなかったことだ。

敵がどこで何をしているかというインフォメーションは単なる事実の集積で、軍事的に重要なのは戦略に応じてそれを分析し、情勢を判断するインテリジェンスである。欧米ではインテリジェンスの地位は高く、エリートの職業とされているが、日本軍における情報部門の地位は低く、その収集した情報を分析するのは作戦部門だった。

日本軍は作戦部門が意思決定を行い、情報部門はそれに応じて情報収集する特異な構造になっていた。これは日清・日露のような局地戦で相手に一撃を与えて和平を結ぶ戦争に適応した組織で、兵站を計算に入れていなかったので、第2次大戦のような総力戦では補給や後方支援が途絶し、餓死者が戦死者を上回る結果になった。

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