梶ピエールのブログ

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 朝日新聞の「(耕論)国に不信?アプリ不振 新型コロナ」という記事でインタビュー記事が掲載されました。インタビューされたときは日本と中国における感染対策における監視やプライバシー保護の「構え」について一般的な話をしたつもりで、政府の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」のことは特に意識していなかったのですが、先日のココアの通知漏れの問題が明るみに出たので、そこに焦点をあてた構成になったようです。

 なお、私のインタビュー中に「世界を「生存」と「自由」のどちらを重視するかで分類した調査によると、西欧や英米は「自由」を重視するグループになります」とありますが、この「調査」とは、現在Wave 7が公開されているWorld Value Survey(世界価値観調査)のことを指します。これは80カ国、1国あたり1000人から5000人に約300の質問を含むアンケートによって、世界の異なる国の人々の社会文化的、道徳的、宗教的、政治的価値観を分析しようとするプロジェクトです。

www.worldvaluessurvey.org
 
ja.wikipedia.org

「西欧や英米は「自由」を重視するグループになります」という記述の背景は、このWorld Value Surveyを元にいくつかの変数を二次元の変数(“伝統的-世俗的・合理的” と “生存-自己表現”)に圧縮し、世界の国々を特定の文化的な地方に分類した「イングルハート-ヴェルツェル図」に基づいたグループ分けです。ここで、伝統的な価値観は、宗教の重要性、親子の絆、権威への敬意、伝統的な家族の価値観を強調したもの、生存的価値観は、経済的・物理的な安全性を重視したもので、比較的民族中心的な見通しおよび信頼と低い寛容性とリンクしています。

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 この図ではProtestant Europe、English-Speakingのグループが右上に位置しており、もっとも世俗的価値観、自己表現を重視するグループになっています。また、中央上に位置しているのが日本を含むConfusianのグループで、「東アジア諸国は「生存」を優先する傾向が強く、台湾、ベトナム、韓国も含まれます」「日本人の価値観はどうなのでしょうか? 「生存」を重視する東アジアグループに入るものの、その中においては比較的「自由」を重視するという立ち位置です」という記述はこれを基にしたものです。

 もちろん、これだけで各国のコロナ対策への「構え」を説明できるものではありませんが、何らかの補助線にはなるのではないでしょうか。