株式会社経世論研究所 講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッターはこちら
人気ブログランキングに参加しています。

チャンネルAJER更新しました。

「日銀が3月に金融政策を変更した理由(前半)」三橋貴明 AJER2024.4.2

  

令和の政策ピボット呼びかけ人に「独身研究家 荒川和久先生」が加わって頂けました。

 

森永卓郎氏が暴露!「日航機123便墜落事故」と「対米従属」に隠された恐ろしい関係[三橋TV第843回] 三橋貴明・saya


https://youtu.be/J0tp0u7wUEk

 

 これまでも何度か取り上げましたが、半導体の露光装置の分野ではオランダのASML社がシェア95%と、ほぼ独占状態にあります。特に、最先端(一桁ナノ)の半導体の製造には、EUV(極端紫外線)露光装置が欠かせません。現時点で、EUV露光装置を作れるのは、ASML一社のみ。
 

 これって、安全保障上、どうなんだ? と、思っていたのですが、話は逆だったのかも知れません。
 

 ASMLさえ押さえてしまえば、世界の「半導体安全保障」をコントロールできる。

米政府がASMLに中国向けサービス業務打ち切り要請へ=関係者
 バイデン米政権は来週、オランダの半導体装置メーカー最大手ASML(ASML.AS)に対して、中国での製造装置向けの保守点検などのサービス業務を打ち切るよう要請する方針だ。事情に詳しい2人の関係者が明らかにした。
 関係者の話では、エステベス米商務次官(産業安全保障担当)が8日にオランダ政府当局者やASML幹部と面会し、こうしたサービス契約を巡る問題を話し合う。協議の中では、米国側がオランダの半導体製造装置の出荷を制限する中国の半導体工場のリストの追加を求める可能性もあるという。(後略)』

 露光装置には、メンテナンス・サービスが欠かせません。


 中国における露光装置のメンテナンスを打ち切るということは、
「中国市場を捨てる」
 のと同意になります。


 ASMLの売上高に占める中国のシェアは29%。ASMLにとっては、およそ三割の市場を捨てろ、と言われるのも同然です。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

皇統論第六十二回「壇ノ浦に滅ぶ」、歴史時事第六十二回「大陸封鎖令とロシア遠征」が配信になりました。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 国家の安全保障上の都合で、特定の国に対するビジネスを規制される。すでに、アメリカはEDA(電子設計自動化支援、アメリカが独占状態)について、多国間輸出規制を行っています。

 

 さらに、(事実上)露光装置も、という話ではあるのですが、ASMLはオランダ企業です。アメリカの規制に従う必要はありません。


 アメリカ政府とオランダ政府、そしてオランダ政府とASMLの関係の問題になるのですが、自由貿易全盛期には、特定企業の特定ビジネスを政府がコントロールすることは難しかった(というか、考えられなかった)わけです。まさに、世界は様変わりした。


 オランダ政府は、すでに特定の先端半導体製造装置の輸出について「国の認可要件」の対象としています。オランダのリースュ・スフライネマッハー外国貿易・開発協力相は、
「(輸出規制という)措置は安全保障対策のためだ」
 と語っています。半導体関連技術は、軍事用途にも転用が可能で、製品や技術の輸出制限がされないことは「安全保障上のリスクになり得る」ため、輸出管理は妥当で、半導体製造の主要技術を持つオランダの責任だとしています。


 さらに、今回のメンテナンス・サービスの打ち切りということは、
「既販製品も使用不能とする(使用不能になります)」

 ことを目的としており、これまでの「自由貿易」の考え方からしてみれば、「さらに強烈な規制措置」と表現しても構わないでしょう。


 もっとも、ASMLはあくまで民間企業です。「安全保障上の都合」で自社のビジネスを制限されることについて、いかなる経営的な判断を下すのか? 先日、ASMLのCEOが、
「国内で移民や留学生といった優秀な人材の確保が困難になった場合、他の場所で確保する」
 と表明し、オランダ政府が半導体産業の強化を目的に、新たに約25億ユーロを投資する計画を発表した件を取り上げました。


 中国ビジネスを失うことが決定的になったASMLは、それでも「安全保障」上の理由から、「他の場所の確保」には打って出ないのか? ASMLの株主は、どのような判断をするのか? そもそも、ここまで踏み込んだ政府の規制を、法律の改訂なしに実施できるのか?


 色々と興味が尽きないところですが、とりあえず、自由貿易は終わった。対中輸出や対中サービス提供の問題は、日本企業にとっても他人事ではありませんよ。
 

「自由貿易は終わった」に、ご同意頂けた方は、↓このリンクをクリックを!

本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。

◆関連ブログ
日本経済復活の会のホームページはこちらです。

㈱日本富民安全研究所のブログ絶望の先にはこちらです。
◆三橋貴明関連情報
新世紀のビッグブラザーへ ホームページはこちらです。
メルマガ「週刊三橋貴明~新世紀のビッグブラザーへ~」はこちらです。