口利きを求める建設業者から甘利明幹事長(72)と秘書が現金を受け取っていた問題で、「事情を全く知らされていない。寝耳に水だった」などとしている甘利氏の説明と異なる音声データがあることが、「週刊文春」の取材でわかった。また、「辞任会見で質問が出尽くすまで答えた」とする説明は虚偽だった。

岸田政権の幹事長に就任した甘利氏 ©共同通信社

 事の発端は、URが2013年当時、千葉県で進めていた道路建設を巡り、予定地と隣接する建設会社・S社との間で起きたトラブルだ。工事の影響で建物が歪み、地下から硫化水素が発生するなどしたため、S社はURに補償を求めていたが、交渉はなかなか進展しなかった。

 だが、S社の総務担当者が2013年5月、甘利経済再生担当相(当時)の公設第一秘書(当時)の清島健一氏に相談したのを境に事態は動く。S社は3カ月後の8月、URから補償金として約2億2000万円を得ることができた。

 一方、S社とURとの間には新たなトラブルが起きていた。産業廃棄物の撤去を巡り、S社がURに対し、30億円規模の補償を求める交渉へと発展していたのだ。

 そこで、総務担当者は2014年2月1日、地元事務所で改めて甘利氏に面会。この場で、甘利氏はURとの交渉資料を熟読した後、再び現金50万円を総務担当者から受け取っている。

現金を受け取る決定的写真

 だが、産業廃棄物撤去を巡る交渉は簡単には進まなかった。

 2015年10月5日、甘利事務所は、UR総務部の国会担当職員を地元事務所に呼び出している。音声データによれば、政策秘書(当時)の鈴木陵允氏がUR職員に対し、こう語っていた。

鈴木秘書「現状を確認して、で、千葉のURの理事か何かあるよね」

UR職員「ありますね、いますいます、はい」

鈴木秘書「あのへん出してもらって、現状を会社としてどういうふうに把握しているのか、というのを話聞いていただいて。そういうのは可能ですかね」

 さらに、交渉資料に目を通した後、以下のようなやり取りも重ねている。