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10月5日(月) 菅新政権をどう見るか―安倍なき「安倍政治」を受け継ぐ亜流政権(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、東京土建一般労働組合の機関紙『けんせつ』第2331号、2020年10月2日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 密室談合で幕開け前に終了
 変えないことを約束

 菅義偉新政権が発足しました。この政権の発足によって、何が変わるのでしょうか。基本的には何も変わりません。変えないことを約束しての政権樹立だったのですから。
 菅さんを担ぎ出したのは二階幹事長でした。それは、石破茂元幹事長の総裁選出を阻止するためです。地方票の比重が低くなる投票方法を採用したのも同じ狙いからでした。
 その後の経過は、二階さんのシナリオ通りの展開となりました。「勝ち馬」と見られた菅候補に主要5派閥の支持が集まり、アッという間に菅優位という構図が出来上がりました。密室での談合によって、幕が上がる前にドラマは終わっていたのです。 

 前政権3本柱が残留
 新入閣わずか5人に止まる

 「思い切った人事を宣言しながら、留任や横滑りが多く代わり映えしない顔ぶれだ。これで国民の支持が高まるのか」。自民党の中で、このような「先行きを、不安視する声」が上がっているそうです(『朝日新聞』9月16日付朝刊)。それもそうでしょう。安倍亜流政権の亜流人事にすぎないのですから。
 第1に、政権の骨格に変化はありませんでした。安倍政権を支えてきた「3本柱」がそのまま残ったからです。菅さんは首相になり、二階俊博幹事長と麻生太郎副総理兼財務相は留任しました。自民党役員では森山裕国対委員長、主要閣僚では、茂木敏充外相、萩生田光一文科相、梶山弘志経産相、赤羽一嘉国交相、西村康稔経済再生相、橋本聖子五輪相の5人が留任し、加藤勝信官房長官、河野太郎行革担当相、武田良太総務相はポストを変えての再任です。
 第2に、党の役員や閣僚として安倍政権を支えた議員の再入閣も目立ち、新入閣はたったの5人でした。上川陽子法相、田村憲久厚労相、小此木八郎国家公安委員長、平井卓也デジタル担当相の4人は安倍政権で閣僚になった経験があります。
 第3に、菅新首相自身は無派閥出身ですが、5つの主要派閥に支持されたことを反映して、各派閥への目配りもなされています。派閥均衡がはっきりと示されているのは自民党4役の人事で、二階幹事長(二階派)と森山国対委員長(石原派)をはじめ、佐藤勉総務会長(麻生派)、下村博文政調会長(細田派)、山口泰明選挙対策委員長(竹下派)が選任されました。閣僚ポストも各派閥にほぼ均等に配分されています。

 従米外交、コロナ対策、消費税
 難題は山積するまま

 新政権の前途には難題が山積しています。本来であれば、政権交代を機に新たな方針を打ち出して新政権への期待を高めることもできたはずです。しかし、今回は「振り子の論理」も働かず、独自の国家観やビジョンが不明な菅さんが後を引き継ぐことになりました。政策転換のチャンスを自ら放棄したことになります。
 安倍首相が得意とし、一般的には評価の高い外交ですが、実態は散々なものです。日米関係を重視するからといって、一方的に従う必要はありません。譲るばかりの従米外交から対等平等な関係に変え、外交・安全保障政策を刷新することが求められています。
 具体的には、日米地位協定の改定、沖縄・辺野古での土砂投入の中止、武器爆買いの見直しなどに着手すべきです。憲法違反の敵基地攻撃論ではなく専守防衛の厳守、北東アジアでの軍縮・緊張緩和の提案、韓国はじめ周辺諸国との関係改善を進めなければなりません。もちろん、全く前進しなかった拉致問題と領土問題の打開、核兵器禁止条約の批准などの課題にも取り組む必要があります。
 内政面では、コロナ対策の強化、医療・保健・介護などのケア優先の社会への転換を図らなければなりません。コロナ禍によって新自由主義的な自己責任論や効率優先の社会のあり方の脆弱性と問題点が明らかになりました。非正規労働者や女性、外国人労働者など社会基盤の維持に不可欠な労働者(エッセンシャルワーカー)への差別をやめ、処遇を抜本的に改善することが必要です。
 また、消費増税とコロナ禍で大打撃を受けた経済を立て直さなければなりません。大企業と株主優遇から中小企業・地方重視の経済政策への転換、賃上げや最低賃金の引き上げなどによる可処分所得の増大、コロナ倒産の防止と雇用の確保、非正規・女性・若年労働者の処遇改善、真の女性活躍とジェンダー平等政策の具体化、原発の再稼働中止などに取り組んでもらいたいものです。

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