大前研一「ニュースの視点」Blog

KON895「アフガニスタン情勢/タリバン統治/トルコ情勢/アフガン難民~新政権の動向をどのように見るべきか」

2021年8月30日 アフガニスタン情勢 アフガン難民 タリバン統治 トルコ情勢

本文の内容
  • アフガニスタン情勢 タリバンが大統領府掌握
  • タリバン統治 ツイッターで出社拒否訴え
  • トルコ情勢 アフガン駐留トルコ軍撤収判断は「時期尚早」
  • アフガン難民 欧米や周辺国、アフガン難民の多数流入懸念

タリバン新政権の動向をどのように見るべきか?


アフガニスタンの武装勢力・タリバンが15日、首都カブールにある大統領府を掌握しました。

ガニ大統領は衝突による流血を避けるため退去を決断したとし、タリバンが勝利したと表明。

一方のタリバンは、17日、制圧後初の記者会見を開き、アフガン戦争の集結と全国民に対する恩赦を宣言しました。

タリバンの状況を見ると、全体としてはまだどのような展開を見せるのかわからない状態だと言えます。

一般的にタリバンは、バーミヤンの石仏の破壊や、女性の権利の極端な制限などにより、世界中から嫌われている側面があります。

タリバン側はイスラム教の教えだと主張していますが、他のイスラム国家と比べても極端だと言えるでしょう。

また、アルカイダのようなテロ集団の温床となったというのは、国際的に嫌悪される大きな理由でしょう。

こういった点が修正できるのであれば、米国が20年かけて構築してきたものを一気に崩壊させた力もあり、統治する力もあるでしょうから、期待できるかもしれません。

一連のタリバンの動向を見ていると、約20年前の911テロ事件では、あっという間に英米に抑え込まれてしまったことを猛省しているように感じます。

世界に向けて「20年前の自分たちは違う」ということを一生懸命にアピールしているのだと思います。

ただし、現状においては20年前とは違うという確証はありません。

タリバン新政権のトップは、代表としてカブール入りをしたバラダル師ですが、彼はオマル師とともにタリバンを創設した人物です。

その他の指導者を見ても、お馴染みの人ばかりが並んでいます。

以前のやり方を反省して新しい政府としてやっていくと言われても、このようなメンバーを見ていると簡単には鵜呑みにできないでしょう。




国境が複雑で長いアフガニスタン、周辺国への影響が大きい


タリバンはそもそも宗教団体であり、スンニ派が主体となっています。

その母体から考えると、イランとは対立することもあるでしょうが、スンニ派人口が一定以上存在するイラクとは手を組める可能性はあるかもしれません。

トルコのチャブシオール外相は、他国がいなくなったら空港の警備などのためにアフガニスタンに駐留しても良いなどと発言していますが、エルドアン大統領は賛同していないと話しており、トルコの動向は不明です。

また、私が注意して見ておくべきだと思うのは、パキスタンです。

元々、パキスタンがタリバンを支援しているからです。

なぜ、パキスタンがそのようなことをしているのか。

インドとの関係性を有利に進めるために動いているのかもしれませんが、この点についても詳細を解明する必要があると思います。

そしてこの先、大きな問題になってくるのがアフガンの難民です。

パキスタン、タジキスタンに逃れる人、さらにはイランなどを経由してトルコに逃れている人も大勢います。

英国のジョンソン首相は、アフガニスタンの難民を2万人ほど英国で受け入れる用意があると述べています。

ドイツのメルケル首相も相応分の難民受け入れについて表明しています。

また、米国も同様に難民を受け入れる姿勢を見せていますが、現実的にどのように難民を移動させるのか、という問題があります。

タリバンが支配している道路や空港を通過して、米国まで難民を連れていくのは至難の業です。

今回の件は、米国にとっても完全に予想外でしたから、難民を連れてくる準備も整っていないでしょう。

国境を接する国、あるいはその関係国は、この難民問題に頭を悩ませていると思います。

アフガニスタンは、中国、インド、パキスタン、タジキスタンなどと国境を接していますが、国境が複雑で非常に長いため、周辺国へ様々な影響が予想されます。

そのような場所を得体の知れないテロリスト集団が支配することは困惑を招きますし、周辺国にとっては非常に厄介な問題でしょう。

タジキスタンが最も国境を長く接しており、今ここに人が溢れかえっています。

この点については、ロシアも懸念しているはずです。

また中国も、国境から新疆ウイグル自治区が近いため、そこに難民が流れ込んでくる可能性を懸念していると思いますし、中国は西方戦略の見直しを図る必要があるかもしれません。

一方で、泡を食っている米国を横目に見ながら、状況が落ち着いてきたら、中国はタリバンに近づいていくことも考えているはずです。

すでにタリバンのナンバー2を北京に呼んで話し合いをしています。

中国、ロシア、トルコがどのような動きを見せるのか、非常に重要だと思います。

イランは宗教的にはシーア派なので、タリバンと同調するのを嫌うでしょうが、他国の状況によっては妥協するかもしれません。

今、世界の難民ではシリア人が一番多くなっていますが、ここから一気にアフガニスタン人の難民が増えていくことは間違いないでしょう。

難民問題を含め、タリバンについては様々な情報が錯綜している状況です。

アフガニスタン国営放送の女性キャスターが命の危険を訴えるなど、正式なスポークスマン発表とは異なる情報も多く、状況の変化を慎重に見守ることが重要だと思います。




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※この記事は8月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はアフガン新政権のニュースを大前が解説しました。

大前はタリバンメンバーの動向や、女性キャスターの訴えに触れ、「情報が錯綜している状況であるため、様子をしばらく見守る必要がある」と述べています。

同じ出来事であっても、それぞれの立場や価値観によって大きく捉え方は異なります。

ニュースについても、一つの情報源に頼りすぎず、多角的な視点から状況を判断することが必要です。


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