大前研一「ニュースの視点」Blog

KON956「コネクテッドカ―/自動運転規制/仏ルノー/三菱電機~日産は主導権を取り戻せるか」

2022年11月7日 コネクテッドカ― 三菱電機 仏ルノー 自動運転規制

本文の内容
  • コネクテッドカ― 通信途絶時にも自動運転継続の技術開発へ
  • 自動運転規制 許可制で「レベル4」解禁へ
  • 仏ルノー ルノー、日産の連合維持求め
  • 三菱電機 一連の品質不正問題で最終報告書公表

自動運転は通信に頼らない方向で進めるべき


スバルが、通信が途絶えた時にも自動運転を続けられる技術を開発する見通しです。

自分と周囲の車の位置情報をセンサー等で収集し、数秒後にどこにいるかを予測することで、速度や進路方向などを制御し、衝突等を回避するものです。

大規模な通信障害に備え、各社が自動運転の安全対策を進めている現状です。

私は通信に頼った自動運転の仕組みは危険だと考えています。

長いトンネルなどではどうするかという問題もありますし、突発的な通信障害に対応ができません。

5Gから6Gへと技術は進化を続けていますが、「通信は途切れる」という問題を常に考えておく必要があります。

自動運転を実現するなら、人間が運転する時と同様に、車自体にセンサーと判断能力を搭載するべきです。

周囲を見る、異音を聞く、アルコール臭などを嗅ぐといった機能を車に備えて、それらの情報から判断する能力を持たせる。

こうしておけば、もし判断できない状況になった時には安全なところに停車することで危険は回避できます。

スバルの新技術もセンサーを重視する仕組みのようですが、これは緊急時用の特別な機能ではなく、本来あるべき姿だと私は考えます。




世界から見ると遅い法整備


警察庁は先月27日、特定の条件下で運転を完全に自動化する、レベル4の運行許可制度を盛り込んだ改正道路交通法を、来年4月1日に施行する方針を示しました。

人による運転とは別に、システムによる特定自動運行の規定を新設するもので、レベル4の公道走行をめぐっては主要国ではドイツ、フランスに次いで、法整備を進めることになります。

運転と法整備の関わりで一番身近なものは運転免許ですが、レベル4に取り組んでいるうちはまだ関係ありません。

レベル4は「限定領域内でシステムが全ての運転タスクを実施」と定義されており、この「限定領域」とは高速道路などを指します。

なので、高速道路に乗るまでは今まで通りの運転をしないといけないので、免許制度は変わらないはずです。

レベル5になると、免許が不要になったり、あるいはオートマ限定免許のように自動運転限定免許が現れたりするかもしれません。

今回の道交法改正は 来るべき自動運転の時代に向けて、技術や制度を洗練する観点からも歓迎すべきことです。

とはいえ、自動運転タクシーの実証実験で先行するシンガポールや、限定的ながらも、既に自動運転車が運行しているミシガンに比べると、遅きに失していると言わざるを得ません。

ドイツやフランスが移行し、これ以上先延ばしにはできないところまで追い込まれて、ようやく始まるといった印象です。

やっと公道でレベル4の車が走り出すことになりますが、事故が起こった際にマスコミが騒いでまた逆戻りしてしまうことが心配です。




日産は主導権を取り戻せるか


フランスのルメール財務大臣は先月18日、フランス・ルノーと日産自動車の連合について、維持される保証を求める考えを示しました。

ルノーと日産は現在双方の出資率を15%に揃える方向で協議していますが、ルメール氏は「連合はルノーにとって、技術やプラットフォームの観点で利点がある」と指摘しました。

そもそもルノーはカルロス・ゴーンを送り込んできた責任をどう考えているのでしょうか。

フランスの法律にも抵触しているはずなのですが、その話はあまり触れられません。

また、ルノーと日産を比較すると、会社の規模も技術力も日産が勝っています。

私は両者の規模に応じた出資比率にすべきだと思いますが、差し当たりお互いの経営にあまり干渉できない15%で揃える今回の案は、ひとまず前進したと言えるでしょう。

電気自動車(EV)専門の会社を別途つくるという案もあるようですが、これの主導権がどうなるのかにも注目です。

EV関連特許の数は、日産が2,000件を超えているのに対しルノーは300件少々、研究開発費も累計販売台数も日産の方が上です。

今後ルノーはEVに特化していくとのことで、今年の販売台数こそルノーが勝っていますが、総合的な実績を鑑みれば日産がリードしていくべきだと考えます。

問題は、この交渉をまとめるだけの人材が日産にいるのかどうかです。

ルノーと日産の統括会社を見てみると、役員に英国・サンダーランドの日産工場出身の方がいます。

この方々なら言葉の面では不利はないので、期待したいところです。




自動運転は通信に頼らない方向で進めるべき


三菱電機は先月20日、鉄道車両用の空調装置で不正な検査が発覚した問題をめぐり、調査委員会がまとめた最終報告書を公表しました。

報告書によると不正件数は累計197件で、前会長の柵山正樹氏が関与した不正も発覚したとのことで、新たに役員10名に対し、報酬の減額や返納要請処分を実施したとのことです。

長年にわたり不正があり、さらに報告があったあとも不正を繰り返しているとなると、これは企業体質の問題だと言わざるを得ません。

日野自動車と三菱電機、他にも同じ問題を抱えている日本企業は存在すると推測します。

多くの日本企業には、品質管理部門はあっても品質保証部門がありません。

品質保証(クオリティアシュアランス)とは、技術について精通している人間が、企業として市場に出していいクオリティかどうか判断する役目を負い、社長であれどもこの判断には従わないといけないというものです。

日本にはこのコンセプトが一般的ではないために、「売り上げを伸ばすために新商品をすぐ発売してくれ」という経営側の要請があったときに、止める権限がある人がいません。

それが不正の動機になったり、品質に問題があるものを市場に出してしまったりする原因になっています。

相次ぐ検査不正を防いでいくためには、この品質保証の考え方を導入し、企業体質から変えていく必要があります。




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※この記事は10月30日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はコネクテッドカーのニュースを大前が解説しました。

大前は「通信が途絶えてしまう可能性を考えると、人間が運転するときと同様に周囲の状況を視覚・聴覚・嗅覚等で判断して通信障害が起きても安全に運転するシステムを開発することが重要」と述べています。

問題解決プロセスで大切なポイントは、「あるべき姿」を正しく設定することです。

本当に実現したいことは何かを前提や制約条件、今までの経験にとらわれずに考察していくことで、本質的な問題解決に繋がります。



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