- 本文の内容
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- ユニ・チャーム 連結純利益192億円
- ディー・エヌ・エー 連結赤字491億円
- 山形県 県内の観光支援策開始
- 中豪関係 豪産大麦に追加関税
マスクで好調なユニ・チャーム、ゲームもプロ野球も厳しいディー・エヌ・エー
ユニ・チャームが14日発表した2020年1-3月期の連結決算は、純利益が前年同期比51%増の192億円となりました。
1-3月期としては過去最高。
新型コロナウイルス感染拡大でマスクなどの衛生用品の販売が好調だった他、不採算事業の縮小など構造改革を進めたことも寄与したとのことです。
まさかマスクのおかげで好業績になるとは、ユニ・チャームとしても予想外のことだったと思います。
業績に比例するように、株価も好調です。
日本はマスク供給の大半を輸入に頼っている状況です。
ユニクロもマスク生産に乗り出すと発表がありましたが、今後どのような動きになるのか注目したいと思います。
一方、大きく業績を悪化させたのがディー・エヌ・エーです。
14日に発表した2020年3月期の連結決算は、最終損益が491億円の赤字となりました。
主力のゲーム事業で511億円の減損損失を計上したほか、新型コロナウイルス感染拡大でプロ野球のシーズン開幕が遅れ、横浜DeNAベイスターズのチケット販売などが落ち込んだことも響いたとのことです。
今は非常に苦しい状況だと思います。
2010年に買収した米国のゲーム会社ngmocoは軌道に乗らないまま2017年には清算済みですが、今回、ngmocoの「のれん」について減損処理に踏み切ったため、511億円の減損損失を計上する形になりました。
ディー・エヌ・エーはゲーム事業がメインなので、ゲームのヒット作が出ると売上が大きく跳ね上がりますが、現状はやや厳しい状況です。
加えて、調子がよかった横浜DeNAベイスターズの売上も、新型コロナウイルス感染拡大の影響で激減してしまいました。
プロ野球の開幕は6月下旬からの予定で、しかも無観客試合が続くとなれば、こちらの売上もしばらくの間は期待できないでしょう。
とは言え、大きな損失処理は終わったので、今後は純粋にこれからのビジネスがうまくいくかどうかを見ていけば良いと思います。
バンヤンツリーが打ち出した驚異的なキャンペーン施策
山形県は15日から「県民県内お出かけキャンペーン」「県民泊まって応援キャンペーン」を開始しました。
2000円の買い物ができるクーポンを1000円で発行し、道の駅などの観光施設で利用できるほか、県内の旅館ホテルで利用できる5000円の宿泊割引クーポンを発行するもので、資金繰りに苦しむ宿泊施設からは期待の声が上がっているとのことです。
ニュースとして取り上げられたのは山形県だけでしたが、他の地域でも似たような施策を打ち出しているところはいくつもあり、各地で工夫している様子が伺えます。
しかし、まだまだ日本の地域が打ち出している数千円程度のキャンペーンでは甘いと思います。
シンガポールのバンヤンツリー・ホールディングスは、「Pay now, Stay later(今支払って、後から宿泊する)」というキャッチコピーで「78%OFF」という驚異的なキャンペーンを展開しています。
2泊3日朝食付きのプランを「今すぐの支払いで78%OFFにする」というものです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で劇的に客足が遠のき、キャッシュフローにもかなり影響が出ているはずです。
それゆえ、今すぐキャッシュを得るための施策です。
昔、アメックスの有名なCMに「Play now、Pay later(今遊んで、支払いは後から)」というものがありましたが、それを参考にしたのかもしれません。
それにしても、78%OFFというのはかなり思い切った施策です。
しかし、バンヤンツリーは世界的に非常に評価も高く、お気に入りにしている人も大勢いるでしょう。
そういう人にとっては、この78%OFFという価格はかなり魅力的だと思います。
日本の観光業はインバウンド需要よりも、国内需要の回復から始めるべき
今後の日本の観光業を懸念する声として、「インバウンド需要の回復にはどのくらいの時間がかかりそうか?」というものがあります。
一刻も早いインバウンド需要の回復を期待しているのかもしれません。
しかし、私はすぐには回復しないと見ています。
インバウンド需要で大きいのは、結局のところ中国からの観光客です。
ところが、かつてのように、中国から1000万人規模の観光客が訪れるとなると、おそらく国内から懸念や反対の声があがると思います。
というのは、中国が発表している新型コロナウイルス関連の数字に不信感を持ち、本当に感染が収束したのかどうか怪しいと感じている人も多いからです。
かといって、欧米からの観光客を受け入れるのも、欧米諸国の感染率や死亡率の高さを考えると、積極的に動きづらい状況です。
ゆえに、いきなりインバウンド需要を戻すことを考えるのではなく、まずは国内観光に力を入れて、5年ぐらいかけて海外からのインバウンド需要を戻していく、という時間軸で考えるのがよい、と私は思っています。
そもそも日本には1900万人分の宿泊施設しかなく、膨れ上がったインバウンド需要に対応できるインフラが未整備でした。
昨年3000万人の観光客が訪れてくれましたが、ホテルや旅館などのまともな宿泊施設が足らないために、中にはラブホテルやカプセルホテルなどに宿泊せざるを得なかった人も大勢いました。
政府は無責任に4000万人~5000万人のインバウンド需要を目指すなどと言っていましたが、全く実現性がない口先だけのもので、3000万人でもすでにキャパオーバーでした。
こうした状況をなくすためにも、国内需要を高めるところから始め、インバウンド需要はゆっくりと回復させ、その間にインフラを整備し直して大きなインバウンド需要に耐えられるようにするべきだと私は思います。
米国以外にはめっぽう強気な中国、オーストラリアを牽制
中国商務省は18日、オーストラリアから輸入した大麦の価格が不当に安いとして、追加関税をかけることを発表しました。
不当な補助金を相殺する関税と合わせて80.5%を上乗せする方針です。
中国はすでにオーストラリア産の食肉輸入も一部停止しており、新型コロナウイルスの発生源の調査を求めるオーストラリアを牽制する狙いと見られています。
中国は米国に言われると、少しは受け止める姿勢を見せて検討しますが、米国以外の相手だと、そうはいきません。
オーストラリアのモリソン首相が新型コロナウイルスの発生源調査について積極的な姿勢を見せた途端に、中国は報復とばかりに関税の上乗せを発表しました。
さらには、中国の成競業・駐オーストラリア大使が「中国の一般市民がオーストラリア製品の購入やオーストラリアへの留学を考え直すかもしれない」と警告するに至っています。
米国以外の国に対する、この強気一辺倒の態度は非常に中国らしいと感じます。
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※この記事は5月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は観光業のニュースを大前が解説しました。
大前は「日本の観光業は国内需要の回復から始めるべき」と述べています。
観光業に限らず、今回の新型コロナウイルス感染拡大は日本の経済全体に影響を及ぼしています。
そこからいかに回復させるのか。
アフターコロナでは、これまでと同じ形に戻すのではなく、新しい経済を創り出していく必要があります。
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