だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

バーチャルレクチャー空き家活用と移住定住指南(4)

2022-11-30 17:22:21 | Weblog
 ここまでの説明で、中山間地域の空き家が貸したり売ったりされる背景には、思いもよらぬ深い物語があることをご理解いただいたと思います。その上で、空き家を借りたり買ったりして田舎へ移住をしたいと考えている方は、どう考え行動したら良いでしょうか。まずは考え方について。
 何としても避けて欲しいのは、入居後にご近所とトラブルになることです。都会のマンションならいざ知らず、田舎ではご近所の冷たい視線の中で暮らし続けるのはほぼ不可能です。ごくたまに「都会の人間関係が煩わしくて田舎で暮らしたい」という方がおられますが、田舎の方が何十倍も人間関係が濃密です。都会では「群衆」の一人として隠れていられますが、田舎では一人一人の存在感が大きいので、どうやったって目立ちます。外からの移住者ならなおさらです。
 トラブルになる原因は生活習慣の違い、というか生活感覚の違い、もっと言うと価値観の違いです。移住者は何もない自然の中で暮らすのはいいなあと思ってやってくるのですが、地元の人は「こんな何もないところにいてもしょうがない」と子どもたちを都会に出してやっているわけです。その都会からなぜわざわざやって来るのか、本当には理解できないのです。
 例えば、田舎の人は刈った草を燃やして、もうもうと煙がでることがあります。都会ではバーベキューをやっただけで消防署に通報されたりするわけで、その感覚からすればとても容認できないと思う人もいます。せっかく空気のおいしいところに来たのに台無しだと。そう思った時に、直接ご近所さんに声をかけられる関係性があれば良いのですが、いきなり行政に苦情の電話をしたりすると、もうアウトですね。農家が草を燃やすのは行政的には認められているのですが、一方煙による悪臭などは環境上の問題として、役所もなんらかの対応をせざるを得ないわけです。
 この場合の正しい対処法は、自分の思うところを自治会長さんとか、地元の顔役の方にまず相談して、可能ならば寄り合いの時に議題にしてもらい、煙が気になる人もいるということをまずは皆さんに知ってもらうということですね。生活感覚が多様化していることをまずは認識して考えてもらうということです。
 これは多文化共生という課題です。普通は外国人と地元民との関係で議論されますが、中山間地域の移住者は外国人並みの価値観の違いがあるわけです。どちらかが一方的に合わせるということではなく、お互いに違いを理解しあい、認め合って、ほどほどのところで仲良く暮らすということです。田舎では住民自治の力がありますので、問題があれば皆で話し合い、解決策を探ることができます。この住民による自治的な問題解決能力は、都会で考えるよりずっと高度なものがあります。これは江戸時代に村々では高度な自治を行ってきた伝統と知恵があるからです。このことは逆に都会の人が理解していないところですね。
 ただし、田舎ならどこでも、ということではなくなって来ました。高齢化が進み、年寄りばかりの集落になると自治能力が低下します。これが限界集落というもので、定義的には65歳以上が過半数を占める集落のことですが、そのココロは限界とは住民自治が限界ということです。自治会の役員をやる人がいなくなり、寄り合いが開催できず、最後は回覧板も回らなくなります。こうなると地域の問題を自分たちで解決することができなくなります。
 ですので、移住したいと思ったら私は限界集落はオススメしません。もちろん65歳以上が過半数でもしっかり自治ができている集落はたくさんありますので、そういうところは一概に限界集落とは言えません。移住を決める前によくよく観察する必要があります。
 いずれにせよ、引越した時におおむね温かく迎えてくれる地域を選び、かつそういう入り方をするのが肝要です。そうすればご近所さんが分からないことは(分からないことだらけです)親切に教えてくれるし、野菜は持ってきてくれるし、子どもをかわいがってくれるし、困った時には助けてもらえます。恵那市笠置町に移住した方の例では、奥様が切迫早産になって動けないという時に、近所のおばさまたちはおかずを作って届けてくれたり、ママ友たちは上の子を連れ出して遊んでくれたりして、本当に助かったという話を聞きました。都会では考えられないですよね。
 では具体的にどのようにそういう地域を探し、空き家をゲットすれば良いのでしょうか?(つづく)
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