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5月1日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月1日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「このまま本土決戦? 五輪を中止にできない“戦前と同じ国”」

 全国3600万人のうち首都圏に住む65歳以上の高齢者は約900万人だが、5月末に東京で始まる予定の大規模接種センターが想定しているのは1日1万人への接種とされる。3カ月後の8月末でも90万人で、1割がやっとだ。

 米国では1日に約300万人が接種を受け、すでに2億回に達したというのに、日本はまだ全国で200万回強で100分の1だ。この差は何なのか。国力を総動員の準戦時体制でもこのありさまでは、常識的にも能力的にも五輪開催は不可能だろう。自衛隊の医官を動員する国難なのは間違いないが、それは国民の安全と健康を維持するためであり、決して五輪のためではないはずだ。

 「国民の多くは、五輪開催は無理だと思っているはずです。五輪のために医療リソースが割かれ、国民の健康や生命を犠牲にすることなど倫理的にもあり得ないし、それは近代五輪の精神にも反する。しかし菅首相は、五輪を開催さえすれば国民世論が盛り上がり、秋までの解散・総選挙で有利だという思惑から、撤退は念頭にないのでしょう。五輪の成功しか政権浮揚の打開策がないからです。神風が吹くことをひたすら願っている。強行開催すれば、日本がウイルスをバラまいて国際的な批判を受ける可能性もありますが、もし不測の事態が起きても、五輪スポンサーでもあるメディアを使って『大成功』の虚偽報道を繰り返し、選挙になだれ込むつもりでしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 海外メディアが懸念を示したように“一大感染イベント”になる可能性も、日本発のウイルスをバラまいて国際的な批判を浴びるリスクもおそらく分かっているが、希望的観測にすがっている。国民世論を考慮すれば、五輪中止をブチ上げた方が支持を得られる可能性は高いのだが、非科学的な精神論で突き進もうとしているのだ。

 「いまの政府がやっていることは、科学的データを軽視して戦線を見誤り、戦力の逐次投入で失敗し、最後は精神論で乗り越えようとした戦前の軍部と同じ神頼みです。上層部のメンツのために中止を決断できず、我慢を強いられる一方の国民が犠牲になる。仮になんとか五輪を開催できても、その後の感染爆発の引き金になり、本土決戦は焼け野原になりかねません」(五十嵐仁氏=前出)

 一度決めたことは止められない。それで誰も責任を取らない。そういう「国の在り方」が戦前と変わっていないことが恐ろしい。この国は何度、同じ過ちを繰り返せば気が済むのか。

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