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6月16日(木) 改憲阻止へ、学んで伝え、伝える言葉を選び、伝える手段の工夫を! [論攷]

〔以下の記録は5月15日に開催された茅ヶ崎革新懇主催の「春の政治教養講座」での講演の要旨をまとめたものです。『神奈川革新懇ニュース』NO.247 、2022年6月号、に掲載されました。〕

 軍事力に依存すれば結局は安全を損ねる

 ロシアによるウクライナに対する明らかな侵略が行われている。この時にプーチンが使った口実が、ウクライナがNATOに入ろうとしていることだった。
 国連憲章は、加盟国に対し、主権の尊重、領土の保全、武力行使の禁止を義務付けている。本来、国の在り方は主権者であるその国民が決めることであり、外国は干渉してはならない。ところがプーチンは、軍事力でウクライナに干渉し、占領して、民間人まで殺戮した。理由はどうあれ、プーチンのこの行為は許されることではない。
 ウクライナがNATOの軍事力に頼って安全を確保しようという行為が、逆に侵略を狙っている周辺国に口実を与え、侵略を引き寄せた。軍事による安全を求めても、逆に安全を損ねて侵略を呼び寄せる、一種のパラドックス(逆説)が生じた。これが安全保障のジレンマというものだ。武力を強化すればするほど周辺国が警戒心を高め、軍拡競争を引き起こし、逆に緊張が高まり危険になる。このことは教訓として記憶しておく必要がある。
 ロシアは圧倒的な軍事力をもっているが、それでもウクライナ侵略戦争は2か月以上たった今も続いている。アメリカはベトナム戦争で大規模な侵略をしたが、結局は撃退された。他国に軍隊を送って仕掛けた戦争は成功しない。侵略はますます困難になっている。これが歴史の教訓だ。
 かつてベトナム戦争で失敗したアメリカは、ドルの価値を大きく低下させ、ドル支配が破綻した。アメリカ国内の反戦運動も招いた。ロシアはこれから同じように経済危機を招くだろう。道徳的な敗北による国際的な威信低下は避けられない。いずれロシア国内で戦争を忌避する動きが強まり、国際的な反戦運動や包囲網と結び付いて戦火が収まることを期待したい。

 危機便乗型改憲策動を打ち破る憲法闘争を

 ウクライナ侵略で軍事力依存の危険性が目の当たりになった。それにもかかわらず、自公政府はこれを好機と軍事には軍事との好戦的雰囲気を盛り上げ、安全保障を前面に出して軍備の拡大、憲法改悪へ向けた動きを強めている。敵基地攻撃能力の保有、軍事予算の倍増、内閣は否定するものの自民党内では核共有待望論まで出ている。
 「敵基地攻撃能力」は誤解を招くとして、自民党の安全保障調査会は「反撃能力」と言い方を変えた。今のミサイルは進化していて、発射されたら迎撃が難しい。だから、ミサイルを発射される前に敵基地を攻撃しなければと考えているのだ。「攻撃」される前に「反撃」だなんて、日本語が分かっているのか。
 ロシアによるウクライナ侵略という惨事に乗じて、軍事には軍事との好戦的雰囲気を盛り上げ、改憲を一挙に進めようとしている。憲法9条は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」としている。
 ロシアに9条があれば、プーチンは戦争できなかった。ウクライナにも他国に軍事的脅威を与えないという9条があれば、プーチンに侵略の口実を与えなかったはずだ。軍事的な威嚇により互いに隙を伺うのではなく、信頼によって周辺の国との関係を保てば戦争にはならない。
 周辺国との平和な関係を保つ努力を放棄して、抑止力なる危険なパラドックスを信じていては平和を保つことはできない。日本には9条という政治資産がある。軍事費が抑えられてきたという経済効果、平和国家というブランドの効果がある。世界各地で人道支援に携わり、日本は信頼されてきた。
 ウクライナ戦争が契機になって安全保障に対する国民の関心が高まっている。だからこそ平和憲法の意義と9条の価値を知らせていくことが重要だ。国会で改憲勢力に3分の2の多数を与えず、憲法の書き換えを阻止するだけでなく、憲法に沿って現実を変えていく。憲法違反を許さない政府を作っていく。これらの努力を多面的に進めていかなければならない。

 参院選の特別の意義と活憲政府へ

 日本政府は極端な対米従属で自主性がない。ところが、そのアメリカは中南米、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン侵攻など、戦後は間違い続きの戦争をしてきた。「台湾有事」も懸念される。   アメリカの言うままに戦争の手伝いを続けても良いのだろうか。
 国内政治でも、岸田首相は当初こそ、貧富の差の拡大を問題にし、新自由主義からの転換や金融所得課税などを掲げていたが、つぎつぎと撤回し現状を追認している。「新しい資本主義」と言わざるを得なくなったのは、「古い資本主義」が行き詰まったからだ。しかし、今の危機を乗り越える力はない。
 次の参院選では、壊れ始めた日本にストップをかけ憲法を活かす野党連合政権の樹立へと流れを変えなければならない。市民を介しての立憲野党間の共闘再建を果たし、1人区での統一、草の根の力を発揮した複数区での躍進を実現させよう。
 何もしなければ何も始まらない。既成事実に屈せず、声を上げれば変わるという確信を持ち、学んで伝える。伝わる言葉を選び、伝える手段を工夫する。個人で多くの人に発信できるネットとSNSの活用を進めよう。参院選の公示まで時間が短くなったが、諦めず努力を続けましょう。
(文責編集委員会)


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