No. 2126 世界がイランの次の動きを待つ中、ロシアと中国が未来を描く

Russia and China Sketch the Future as the World Awaits Iran’s Next Move

by Pepe Escobar

ガザ大量虐殺を行った聖書的サイコパスによるダマスカスの領事館/大使公邸への攻撃に対する、避けられないと公言しているイランの対応を地球全体が固唾をのんで待っている。

秘密のオーラに包まれ、日を追うごとにその挑戦の巨大さが表にでてくる。非対称的な対応は、象徴的で、実質的で、説得力があり、合理的で、理性的でなければならない。それがテルアビブを完全にヒステリックにさせ、米国の決定的瞬間を難しくさせている。

筋金入りのシオニストと米国のクリスチャン・シオコンから見れば、この夢精のような演出は、ヒズボラとテヘランの両方に決定的な打撃を与えるというイスラエルの悲願の計画に米国を引き込むための重大な挑発行為であることは、頭脳がある人なら誰でも知っている。

イスラエル国防軍(IDF)のヘルジ・ハレヴィ参謀総長はこの日曜日、「われわれは米国やこの地域の戦略的パートナーと協力して活動している」と言ってうっかり秘密をばらしてしまった。

つまりそれは、米国を信用してはならないのだ。たとえスイスの仲介者経由で、ワシントンはテルアビブに対するテヘランの対応に干渉しないという話が浮上していても。第一次湾岸戦争前のサダム・フセインに対するワシントンの「保証」を思い出せばいい。

米国の裏ルートでの保証を額面通りに受け取ることはできない。ホワイトハウスと国防総省は、キエフが米英の衛星情報、兵站、兵器を使い、事実上の作戦統制下にあるNATOとともにロシア連邦の奥深くを攻撃するたびに、ホワイトハウスと国防総省は時折ロシアにこうした「保証」の情報を流す。

外交特権に関するウィーン条約を破って行われたたダマスカスへの国家テロ攻撃は、重要なのは、それは拡大したBRICSと上海協力機構(SCO)への攻撃でもあったことだ。イランはこの2つの多国間組織のメンバーであり、その上、ロシアや中国とも戦略的パートナーシップを結んでいる。

したがって北京とモスクワの両指導部が、イランの次の一手がもたらしうるあらゆる影響を慎重に検討しているのも不思議ではない。

テルアビブの意図的なエスカレーション(西アジアでの戦争拡大)は、偶然にももう一つのエスカレーションを映し出している。NATOのウクライナにおける唯一の道は、進むしかなく、終わりが見えないままだ。

それは能力のないブリンケン国務長官が、ウクライナはNATOの一員になるだろうと公言したことから始まった。脳が機能している人なら誰でも、これは信じられないほど悲惨な結果をもたらすロシアとNATOの武力戦争への道しるべであることを知っている。

ブリンケンの犯罪的な無責任さに英仏のコンビが迎合し、反響を呼んだ。英国のキャメロン外相とフランスのステファン・セジュルヌ外相の発言である。「ウクライナが負ければ、我々全員が負ける」。

少なくとも彼らは、時間がかかったが、NATOが宇宙的な屈辱に近づいているということに関して正しく理解した。

「二重の抵抗」から「二重の抑止」へ

ではピエロのようなおちゃらけた役者から、理性のある合理的な決定をする人々の話に移ろう。セルゲイ・ラブロフ・ロシア外相と王毅・中国外相は今週初め北京で、文字通りあらゆる資料について話し合った。

ラブロフと王は、ロシアと中国の戦略的パートナーシップの前途についてこれ以上ないほど明確に語った。

彼らは、ユーラシアの安全保障に関するあらゆる事柄について共に取り組んでいく。

ラブロフの言葉を借りれば、彼らは西側の「二重の抑止力」に対抗するために「二重の抵抗」を行う。

彼らは、「歴史の自然な流れを遅らせよう」とするいつもの容疑者たちのあらゆる試みに対抗するだろう。

さらに、プーチン大統領と習主席が2024年に少なくとも2回、二国間会談を行うことが確認された。6月のSCOサミットと10月のBRICSサミットである。

一言で言えば、永遠の戦争の犬たちが吠え続ける一方で、ユーラシア統合のキャラバンは進んでいく。

ラブロフと王は、「歴史の自然な流れ」を舵取りして、ロシアと中国の戦略的パートナーシップはロシアの利益を考慮しながらウクライナの悲劇を解決する道を模索し続けることを明確にした。

つまりNATOは目を覚ましてコーヒーの匂いを嗅いだ方がいいだろう。

今回の北京での外相レベルの二国間協議は、中国が通常「世界の力の相関関係」と表現するものの地殻変動が現在進行中であることを示す、またとない生々しい証拠である。来月にはプーチンが北京を訪問することが確認されている。

2022年2月4日、同じく北京でプーチンが習近平に、ロシアにとってNATO/米国のウクライナ進出が受け入れられない理由を自ら説明したことは、決して忘れてはならない。習近平はその利害関係を理解し、その後SMOに反対することはなかった。

今回、ラブロフは昨年北京が提案したウクライナに関する12項目の和平計画に言及せざるを得なかった。この計画は、「主にヨーロッパと世界を含む不可分の安全保障を確保するという文脈で」根本原因に対処するものである。

あなたの “過剰生産能力 “が私をイライラさせる

テヘランもモスクワも、米国の意図に関しては深刻な課題に直面している。選挙期間中の民主党がイスラエルが引き起こした西アジアでの厄介な熱戦を進んで煽ると考えるのは直感的ではないが、ダマスカスでのテルアビブのイラン攻撃について、ワシントンが蚊帳の外だったと断言することは不可能である。

しかしホワイトハウスが支持するガザでの大量虐殺が、イスラエルとイラン/抵抗勢力の対立という枠組みを拡大しようとしている可能性は常にある。米国は事実上、無数のレベルで関与しているのだから。

このような緊張を和らげるために、この状況下では笑いをとる話を紹介しよう。「イエレン、中国へ行く」という冒険話である。

ジャネット・イエレン米財務長官が北京に赴いたのは、基本的に2つの脅しを伝えるためだった(なにしろ米国なのだ)。

  1. イエレンは、中国企業が「ロシアのウクライナ戦争への物質的支援」を行った場合、「重大な結果」に直面する可能性があると述べた。
  2. イエレンは、特に電気自動車(EV)産業における中国企業の「過剰生産能力」を非難した(ちなみに、世界のEV企業上位20社のうち18社が中国企業である)。

中国側は予想通り、ただ単純に米国は中国の競争優位に対処できず、したがってまたしても「デリスキング」を煽ったとして、この話を一蹴した。

要するに、これはほとんど隠れた保護主義なのである。中国の王文涛商務相は単刀直入にこう言った。「中国の優位性は補助金ではなく、イノベーションの上に築かれている」。他の人は、さらに2つの重要な要素を付け加えた。「サプライチェーンの効率性と、超ダイナミックな市場競争である」。中国では、EVはリチウム電池や太陽電池とともに、新たな「3大アイテム」として知られている。

イエレンの北京での芝居は、かつての超大国による必死の策略であることは容易に見分けがつくはずだ。軍事的覇権をもはや享受しておらず、支配的なMICIMATT(レイ・マクガバンの卓越した表現による軍産・議会・情報・メディア・アカデミア・シンクタンクの複合体)もなく、 完全に管理されたロジスティクスとシーレーンもなく、無敵のペトロダラーもなく、強制的で無差別な制裁への恐怖もない。そして何よりも、ガザでの大虐殺に対する米国支援に対する怒りと全くの軽蔑にグローバル・サウス全域がとって代わった、恐怖そのものへの恐怖さえもない。

単なるギリシャ悲劇のリミックス

今回もまた、マイケル・ハドソンが簡潔に言い表している。

 米国の公式見解では、もはや米国は産業輸出国にはなれないと認識している。しかしドルの為替レートを支えるために、どうやって国際収支を均衡させるつもりなのだろうか?解決策はレント・シーキングである。だからこそ米国は世界貿易における新たなレント・シーキングの主な機会は何か?と言っている。それは情報技術とコンピュータ技術だ。

だから米国は中国と激しく戦い、バイデン大統領が何度も何度も「中国は最大の敵だ」と言ったのだ。まず5G通信でファーウェイに対抗し、今度はヨーロッパや米国、台湾の輸出業者にコンピュータ・チップを中国に輸出させないよう、またオランダにチップ刻印機を中国に輸出させないよう働きかけている。もし米国が、他国がハイテクの知的財産権でレントを生産することを阻止できれば、他国は依存するようになるだろうと考えているのだ。

レント・シーキングの真の意味は、実際の生産コストよりもはるかに高い金額を支払うという選択肢しかなければ、他国に依存するということである。価値以上の価格がレントである。米国は、生活費と人件費が高いため、価値で競争することができず、できるのはレントを独占することだけだ。

しかし中国も負けてはいない。中国は米国を飛び越え、独自のエッチング機械、独自のコンピュータ・チップを生産している。問題は、世界の他の国々はどうするかということだ。世界の他の国々とは、一方ではグローバル・マジョリティー、ユーラシア、BRICS+、他方では西欧を意味する。西欧はまさにその真ん中にいる。果たして西欧は通常の利益を含むコストではるかに安価な中国からの輸出を見送るつもりなのか、それとも、コンピュータ・チップだけでなく軍事兵器に至るまで、アメリカのレント・エクストラクション技術に縛られるつもりなのだろうか?

絵で表したようにこの1週間でまた新たな失態がおきた。習近平が、イエレンがまだ北京にいるときにラブロフを公式に迎えたのである。中国の学者たちは、米国とロシアの関係の悪循環の膠着状態と比べれば、複雑な三国関係の中で北京の立場がいかに柔軟であるかを指摘している。

この行き詰まりをどう打開するかは誰にもわからない。はっきりしているのは、イランと同様、ロシアと中国の指導者も、いつもの容疑者たちが、自分たちが銃撃戦で打ち負かされ、生産量で上回られ、数で圧倒され、知恵で出し抜かれたことを知って、すべてを賭けてチェス盤を徘徊する危険性を熟知しているということだ。

まさにギリシャ悲劇のリミックスだ。それでもソフォクレスの悲劇の感動や壮大さのない、ただの不快で凶暴な一団が、眼を見開いて、自らに課した運命へと突入していくだけなのだ。

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