- 本文の内容
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- 金融市場 ダウ平均が過去最大の1190ドル安
- 東京五輪 開催の判断基準は「5月下旬」
- ビジネス 富士フイルムが上場来高値
金融市場の下落も、まだ株価の調整段階には至っていない
先月27日、米国ダウ工業株30種平均は前日比1190ドル下落し、2万5766ドルで取引を終了しました。
下げ幅は過去最大です。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国企業が相次いで業績への悪影響に言及したことが要因と見られています。
1日の下落幅ではブラックマンデーを上回り、過去最悪とのことです。
日経平均も大きく落ち込みましたし、確かにこれほど大きな下落は、私も見たことがありません。
ただし、日経平均とダウ平均の騰落率の推移を見ると、今回のような大きな下落は1年のうちに数回発生していることがわかります。
1日の落差としては最大でしたが、もう少し長い目で見ると、それほど衝撃的な状況ではないと言えます。
まだ、金融経済が実体経済に近づくように「株価の調整が入る」という段階にも至っていないと私は思います。
東京オリンピックの開催是非は、5月下旬では遅すぎる
国際オリンピック委員会(IOC)で1978年から委員を務めるディック・パウンド氏は、先月25日、東京オリンピック開催是非の判断期限は引き延ばせても5月下旬との見方を示しました。
もし日程の再検討が必要となれば「理論上は同じ開催時期で2021年に延期される可能性がある」と述べ、年内の延期については欧米のスポーツと時期が重なることから非常にまずいとの見解を示しました。
IOCのバッハ会長も公式見解ではないと述べているように、このパウンド氏の発言は決して練られたものではありません。
しかし、バッハ会長も完全否定はしていないので、ある程度同意なのかもしれません。
東京オリンピック開催是非の判断を5月下旬までにするべきとのことですが、「遅すぎる」と私は思います。
5月下旬から6月初旬というのは、7月24日の開会式に備えてもう選手が来日してくるタイミングだからです。
それを考慮すれば、今から数週間以内に判断する必要があります。
対策として3つの方法が考えられます。
1つは、「東京以外の場所で時期を変更せず」に開催するというもの。
選手の立場からすれば、この時期に合わせて調整をしてきているので、延期するよりも望ましいという考えです。
2つ目が、パウンド氏が言うように「1年延期して東京で開催する」という選択肢。
そして3つ目が、「時期を数ヶ月ずらして東京で開催する」というものです。
例えば、1964年の東京オリンピックのように10月に開催するというのも良いでしょう。
この選択肢について、パウンド氏は欧米のスポーツの時期と重なるために難しいという見解を示していますが、私はそうは思いません。
欧米スポーツとの兼ね合いの中で最も大きいのは、米国のNBC放送局の影響でしょう。
そのスポンサー料は約240億円と言われていますが、今回の事情に鑑みれば、同等の資金を世界中からクラウドファンディングで集めることも可能だと思います。
日本としては、パウンド氏の勝手な判断で決めるべきではない、と抗議するくらいの姿勢を見せてほしいところです。
いずれにせよ、これからの数週間で東京オリンピック開催の是非について、何かしらの判断をする必要があります。
まず、その認識を持つことが大切だと思います。
そして、同時に日本政府に強く求めたいのは、新型コロナウイルスの危険性について誤解を招かないように、世界に対して正しい広報活動をするということです。
先日、TIME誌に「The Olympics-size risk of COVID-19」という記事が掲載されていました。
そこでは、東京オリンピックの開催を疑問視する論調で、2019年に中国から「960万人」が日本を訪れていること、新型コロナウイルスの感染が確認された国が「30カ国」もあること、そして、日本国内で確認された感染者数が「695人」もいること、という大きな3つの数字が掲載されていました。
私が特に問題だと思うのは、日本の新型コロナウイルス感染者数として「695人」という数字が使われていることです。
ダイアモンド・プリンセス号の乗客を含んだ数字ですが、まるで日本国内で広がった感染者数のように思われてしまいます。
これはNHKなどの報道に問題があります。
日本国内で感染した人数なのか、武漢で感染して帰国した人数なのか、ダイヤモンド・プリンセス号で感染した人数なのか、それぞれを明確に分けて報道するべきです。
官房長官が発表するのではなく、しっかりとした広報機関を作り、政府が誤解を招かないように責任を持って数字を出していくべきだと思います。
いざというときに備えて、在宅勤務の準備をしておくべき
先月25日東京株式市場で富士フイルムホールディングスの株価が上場来高値を更新しました。
系列の富士フイルム富山化学が製造するインフルエンザ治療薬「アビガン」が新型コロナウイルスに効果があるとされたことが材料視された形です。
一方、自動車や住宅設備メーカーなどでは、中国からの部品調達が滞り、受注停止や商品の納期遅延が相次いで発生しているとのことです。
「アビガン」はもともと富山化学が持っていた薬ですから、富士フイルムにとっては買収してよかったというところでしょう。
一方、中国からの部品調達などが難航し、ビジネスに支障をきたす例もたくさん出てきています。
中国に注文した家具が届かないためにオープンできないホテルもあるようです。
だからといって現地に行っても、日本へ戻ってくることができなくなってしまうので、何もできない状況でしょう。
このような状況で、国内の日本企業には「自粛ムード」が高まっています。
例えば、原則として社内の歓送迎会なども自粛するところが多く、平常通り行う企業は5.7%にすぎないとのことです。
また、これを機に一時的な在宅勤務を実施している企業も見られますが、ややその場しのぎの対応に見えます。
今回のような非常事態になる前に、いざとなったらいつでも在宅勤務に切り替えられるように準備をしておくことが重要だと思います。
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※この記事は3月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は新型コロナウイルスの影響について大前が解説しました。
大前は東京五輪の秋開催について「クラウドファンディングでお金を集めることも可能だと思う」と述べています。
問題を解決する際、いままでの経験をもとに考えることも大切ですが、それだけでは視野が狭くなってしまう可能性があります。
前例のない選択肢こそ解決のカギを握っているかもしれません。
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