昨年末の講演のレポートです。
年末からのイラン・アメリカ危機の構造が良く見えるかと思います。
文書を提供くださった川面氏の御好意に御礼を申し上げます。


川面 忠男 氏
早稲田大学・政治経済学部卒(1964年)
元 日本経済新聞社・大阪経済局流通経済部長 仙台,横浜支局長
元テレビ愛知(株)常務取締役


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レジュメにないアフガニスタンの話


久しぶりに東京・一ツ橋の如水会館に出かけて新三木会の12月例会に参加し講演を聴いた。講師は国際政治学者・放送大学名誉教授の高橋和夫さん、演題は「トランプ大統領と混迷の中東情勢」だった。あらかじめ資料の以下のレジュメに目をとおした。


レジュメは「ノアの箱舟を見た事がありますか?」、「パレスチナ・イスラエル」、「イラン」、「なぜイランを攻撃しないのか?」、「シリア」、「サウジアラビアという暗黙の契約」という6項目になっている。


ところが、高橋さんはレジュメにないアフガニスタンのことから話し始めた。それはアフガニスタンで銃撃されて亡くなった中村哲医師が高橋さんと同じ北九州市の出身であったことが関係している。


高橋さんはアフガニスタンで戦争が起きた時、テレビの仕事で一緒になったという。その時、中村さんはどこか俳優の高倉健に似ているという印象を受けた。中村さんの母方の祖父は北九州の若松で石炭の荷下ろしをする沖仲仕の元締めだった玉井金五郎だ。その息子の火野葦平の小説「花と龍」は父の金五郎をモデルにしている。「花と龍」は映画化されて俳優の高倉健が金五郎の役を演じた。高倉健も北九出身であり、中村医師と男気が通じていると高橋さんは感じたようだ。


アフガニスタンの話になった。以下はそのポイントだ。


かつて南下するロシアと北上する英国とが衝突することを避けるため英国は緩衝地帯としてワハンという地域をアフガニスタンにくっつけようと試みた。現在、アフガニスタンは中国とかすかに国境が接している。パキスタンとも同様だ。中国、パキスタンはそれぞれアフガニスタンの和平実現にそれぞれの役割が期待されている。


米国のトランプ大統領はタリバンと和平を結んで代表をワシントンに連れて行きたかった。アメリカの仲裁で外交が成功していると言いたかったのだが、タリバンが応じないので実現しなかった。トランプの外交は成功しているとアピールでき、大統領の再選につなげようとしたが、タリバン側と和平条件が折り合わず失敗した。


和平の枠組みはできているが、それにはタリバン側の和平のハードルを引き下げないと実現しない。そこでアメリカは中国に大きな役割を期待している。タリバンに影響力のあるのはパキスタンだ。そのパキスタンに影響力を持つのが中国であるからだ。


>>次回につづく