大前研一「ニュースの視点」Blog

KON1031「東京証券取引所/国内半導体産業/韓国半導体大手/台湾TSMC」

2024年4月26日 台湾TSMC 国内半導体産業 東京証券取引所 韓国半導体大手

▼東京証券取引所 インドネシアVC、東証への上場推奨
さらなる東南アジア企業の東証上場拡大は、日本側からの働き掛けが必要


日経新聞は12日、「インドネシアVC、東証への上場推奨」と題する記事を掲載しました。これはインドネシアのベンチャーキャピタル、インドジェン・キャピタルが新興企業に対し、東証への上場を勧めていると紹介。東南アジアの新興企業が資本や技術面で、日本企業と連携する足掛かりができる他、アメリカ・ナスダックと比べて上場の要件や東南アジアへの理解の面で利点があることなどが要因ということです。

本来であれば東証から働き掛けるべきところを、インドネシア側から上場推奨がなされました。今、東証に単独上場している外国企業には、ケイマン諸島に本社を置くビート・ホールディングス、カリフォルニア州サンノゼのテックポイント・インク、シンガポールのオムニ・プラス・システムやYCPホールディングスがあります。今後は日本側から積極的に東南アジアに働き掛け、東証への上場をさらに拡大していただきたいと思います。また日本ペイントなどは東南アジアでの投資が非常に多くなっていますので、今後は東南アジアの優良企業の盛り上げを期待しています。

▼国内半導体産業 群馬県伊勢崎市に新工場建設へ
新工場建設で、半導体素材の世界シェアはさらに拡大か


信越化学工業は9日、群馬県伊勢崎市に半導体素材の新工場を建設すると発表しました。およそ830億円を投じ、フォトレジストや原版材料など先端半導体の製造に欠かせない材料を生産するもので、信越化学が国内で製造拠点を新設するのは56年ぶりです。

信越化学はシリコンウエハーや塩化ビニル樹脂などにおいては世界シェア1位であり、現在、世界シェア2位であるフォトレジスト他を生産する新工場を伊勢崎市に建設予定です。大変お金持ちの会社ですから、この程度の投資については当然のことだと思います。

▼半導体材料大手 JSRへのTOB成立
半導体生産の上流工程においては、日本勢の競争力はさらに高まる


半導体素材大手のJSRは、JIC、産業改革投資機構によるTOBが成立したことを発表しました。JSRは日本政府とブリヂストンとの共同出資の半官半民企業「日本合成ゴム」が前身で、その後、完全民営化を果たし、現在は時価総額の高い優良企業です。今回、JICが約9040億円で買収する見通しで、国家がテイクオーバーする形となります。JSRはフォトレジスト市場においては世界シェアトップであり、今後は新工場を建設予定の信越化学工業と競うことになります。

半導体そのものに関しては、日本は勢力を落としましたが、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンや、素材生産では世界シェアトップである信越やJSRなど、力のある会社が多くあります。上流工程においては、今後も日本がシェアを押さえ続けてほしいと思います。

▼韓国半導体大手 米インディアナ州に工場建設
韓国勢の工場移転は、アメリカでの補助金目当てか


韓国の半導体大手、SKハイニックスは4日、アメリカ・インディアナ州に半導体工場を建設すると発表しました。38億7000万ドル、およそ5800億円を投じ、生成AIの駆動に必要なHBM、広帯域メモリーと呼ばれる高性能半導体の仕上げ工程を整備するということで、半導体の国内回帰を進める米バイデン政権の方針に対応する考えです。

韓国勢や台湾勢は、アメリカでの補助金を稼ぐために工場移転を進めています。SKハイニックスはインディアナ州に工場建設を予定していますが、サムスンはテキサス州工場への投資額を倍増し、その額は6兆7000億円となっています。

▼台湾TSMC アリゾナ州新工場に約1兆円助成
生産拠点によっては、米中関係悪化が多大なリスクを生む


米商務省は8日、台湾TSMCがアリゾナ州に建設する新工場に最大66億ドル、およそ1兆円の補助金を支給すると発表しました。TSMCは既に二つの工場をアリゾナ州に建設中ですが、第3工場では回路線幅2ナノメートルか、それ以下の先端半導体を製造するということです。

TSMCは誘致したい会社のナンバーワンであり、熊本県菊陽町に第2工場を、そして場合によっては3ナノを製造する第3工場をつくるとも言われています。アメリカではかなり前からTSMC工場の建設を始めていましたが、予定どおりには進まず、工期が遅れています。さらに人材も恐らく足りないのではないかと言われており、アメリカは必死に遅れを取り戻そうとしています。

TSMCは12インチ、8インチ、6インチ、バックエンドの全ての製造品の生産拠点を台湾に置いていますが、12インチは中国江蘇省の南京市昆山でも生産しています。しかし昆山で生産したものは今、米中関係悪化によりアメリカには持っていけませんので、日本や台湾、そしてアメリカ国内で生産することで、TSMCはリスク分散を行っているようです。8インチは上海にも製造拠点がありますが、中国製の半導体を中国に売ってしまうと、それを組み込んだ製品はアメリカには持っていけなくなり、またトランプ政権が実現するとなれば、さらにひどいことになることでしょう。

▼半導体設計支援 半導体設計支える台湾勢
日本は委託先選定の眼力を磨くことが必至


日経新聞は10日、「半導体設計支える台湾勢」と題する記事を掲載しました。これは台湾で半導体の設計支援を手掛けるアルチップ・テクノロジーズなど、主要3社の売上高の合計が、過去4年間で3倍超えに拡大したと紹介、アメリカIT大手が半導体の自前設計に取り組む一方、これらの企業は開発経験がまだ十分でないため、設計を支援するサービスに商機が生まれているということです。

台湾のナンバーワンはメディアテックです。日本では半導体設計ができない会社が非常に多くなり、メディアテック参りをして設計を依頼し、道の反対側にあるTSMC、そのまた反対側にあるUMCなどに製造を委託するなど、台湾の中で多くを賄う状況となっています。また孫正義氏により買収された英アームはスマホなどの設計力に優れていますが、やはり製造はTSMCに頼っています。TSMC自身は設計を行いませんが、メディアテックやアルチップといった設計支援を手掛ける会社が台湾には多くあり、日本にもロームという設計を行える会社が京都にあります。

昔は日本の半導体メーカーは設計から製造まで、全ての工程を行えましたが、今は上流の設計を行う技術者が少なくなり、他社に依存せざるを得なくなりました。台湾では設計から製造まで全てを行えるため、日本勢はどこに何を頼むのか、アルチップなのか、グローバル・ユニチップなのか、またフェラデーなのか、そういったことを詳しく知っておくことが非常に重要になってくるということです。

---この記事は2024年4月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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