シリアからの撤兵声明


放送大学名誉教授、高橋和夫さんはシリアについてもレジュメを用意していたが、時間の制約から先を急ぐと言って以下ようなことを述べた。


シリアはアサド政権が支配している。IS(イスラム国)を追い出したのはシリアのクルド人だった。一緒に戦ったアメリカはトランプがアメリカファーストを理由に撤兵を声明した。そこにトルコがクルド人の勢力が強まるのを防ぐため攻め込んだ。どこを頼りにすればよいか、ということになってロシアのプーチン大統領が出てきた。現在はプーチンの一人勝ちになっている。


トランプはアメリカファーストを優先したが、ISを追い出すため一緒に戦ったクルド人を裏切ったことに変わりはない。ISとの戦いで米兵の犠牲は少数だったが、シリアのクルド人は1万人以上が戦死、2万人が負傷した。クルド人の犠牲者には女性が多く痛ましい。それにもかかわらずトランプはシリアからの撤兵を宣言、クルド人を見捨てた。


サウジアラビアの二つの問題


サウジアラビアについて高橋さんは二つの問題について言及した。


政権は王族の同世代で回すという横パスから次世代へという縦パスになってきた。その中でムハンマド皇太子が進める改革が成功するか疑問だ。サウジアラビアには政治は王族にまかせ国民は政治に口を出さないという暗黙の契約があった。産油国のサウジでは働かなくても生活ができているからだ。ところが、皇太子の改革は、国民にも働いてもらおうというものだ。


国民に働く場を提供できる産業が育っていないのではないか。また国民が働き税金を納めるようになれば、税金がどのように使われるか口を出すようになるだろう。改革の先の道筋ができていない。


もう一つはドローン攻撃の意味だ。サウジはアメリカから武器を買っている。その金額は何兆円にも上る。サウジは軍事力を強化しようとしてアメリカから武器を買っているのではない。いざ攻撃を受けた場合、アメリカに守ってもらいたいと思っているのが武器購入の理由だ。


しかし、ドローンで攻撃を受けた際、アメリカ製のレーダーは阻止できなかった。防衛網をかいくぐってドローンに攻撃されるという事態になっている。ドローンに弾薬を搭載すればどうなるか、という新たな脅威が生じている。


これはサウジアラビアだけのことではない。その意味でも中東で起きている問題から国際政治を見る必要性があるということになる。

-了-