- 本文の内容
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- ANA HD 連結赤字4050億円
- 日本航空 春秋航空日本を子会社化へ
- 豪航空大手 カンタス、JALの共同事業認可しない方針
- パナソニック 米ブルーヨンダー買収で合意
苦境に立たされている国内航空大手、JALが見せた将来を見据えた動き
ANAホールディングスが先月23日に発表した2021年3月期連結決算は、最終損益が4050億円の赤字でした。
コロナ禍を受けて過去最大の赤字。
運行規模の縮小や航空機の小型化などのコスト削減、及び繰延税金資産の計上などで従来予想からは上振れとなっています。
ですが、国内線は半減し、国際線はほとんど壊滅状態です。
日本航空(JAL)共々、4000~5000億円の損失を出しており、普通なら倒産するレベルです。
一時、ANAとJALの合併案が持ち上がっているとも報じられていましたが、私に言わせれば、病人同士を一緒にしても活路が見いだせるとは思えません。
また、両社が一緒になることで国内の競争がなくなると、やりたい放題になるでしょうから、その意味でも合併は不要だと私は感じています。
そんな中、JALが面白い動きを見せています。
日本航空(JAL)は中国系のLCCである春秋航空日本を連結子会社にする方針を固めました。
6月中をめどに数十億円を追加出資し、同社株を追加取得する方針です。
今回JALが買収を発表したのは、春秋航空の子会社です。
春秋航空そのものは中国から日本へ多くの航空便を展開していますが、主に地方の空港に乗り入れています。
そこから、日本の地方空港同士をつなぐため、JALなどと協力して国内線ライセンスを取得した日本の子会社を作ったという経緯があります。
今回はその日本の子会社をJALが買収するという話です。
長期的に見ると、この子会社を活かして中国の春秋航空と協働し、スケジューリングなどを調整することでペイする可能性は高いと思います。
特に新型コロナが落ち着いて、中国のインバウンド需要が戻ってくれば、かなり期待できます。
しかしながら、今この瞬間で言えば、この子会社を買収したからといってすぐに収益的に効果があるものではありません。
カンタスとJALが手を組んでも、カルテルを結ぶことになるだけ
豪州競争・消費者委員会(ACCC)は6日、カンタス航空と日本航空が提出した共同事業計画について認可しない方針を示しました。
カンタスはこの契約について、オーストラリア、日本、ニュージーランドの29都市間を結ぶ路線で乗り継ぎの利便性を高め、新型コロナ禍からの出航を促進すると主張してきましたが、同委員会は両社の競争が阻害され公共の利益に悪影響を及ぼすと指摘しました。
オーストラリアの消費者委員会は、良いところに目をつけていると思います。
同委員会が指摘する通り、カンタス航空とJALが一緒になれば、カルテルを結ぶ可能性が極めて高いと私は見ています。
カンタス航空にしてもJALにしても、「そういう体質」の会社だからです。
日本国内において、JALも特に地方においてはANAと競争せずに談合しているように感じることが多々あります。
羽田空港や成田空港でも、JALとANAの時間が上手にズレていて料金が安くならないように調整されているように感じます。
同じようなことをオーストラリアで行っているのがカンタス航空ですから、もしもJALと手を握ったら、よくオーストラリアに行く私にしてみても、料金が釣り上げられるイメージしか浮かびません。
カンタス航空とJAL以外の選択肢はほとんどありませんし、唯一対抗できる可能性があるANAも阿吽の呼吸で調整してくると思います。
そういった状況を見据えて、今回オーストラリアの消費者委員会が認可をしなかったのは英断だと思います。
家電メーカーの世界地図は変わり、日本のIT人材不足は深刻
パナソニックは先月23日、米ソフトウェア大手・ブルーヨンダーホールディングスの買収で最終合意したと発表しました。
現在保有する20%以外の全株式を71億ドル(約7800億円)で取得し、完全子会社化します。
これによりパナソニックはソフトウェアの知見を取り込み、企業のDX支援を収益源の1つに育てる考えです。
この会社は、SOMPOホールディングスが資本業務提携を発表した、グーグル出資のAI企業ABEJAと同様、DX分野において相当なノウハウを持っています。
特にロジスティクスの分野の強さには定評があります。
パナソニックとしては、自社の製造機器と連動し、AIを通じたトータルの物流サービスを提供するといった見込みでしょう。
この狙いは非常に良いと思います。
先日パナソニックは、中国テレビ大手のTCLにテレビ生産を委託する方向で交渉に入ったと発表しています。
かつて世界のテレビ業界ではチャンピオンとして君臨していましたが、中国のチャンピオンに屈する形になりました。
この10年でテレビの世界シェアは様変わりしています。
トップはサムスンで変わりありませんが、TCLが2位に急浮上しています。
そして韓国のLGが3位で、中国ハイセンス、スカイワース、小米、そして日本のソニーという順位になっています。
東芝のテレビ事業はハイセンスに譲渡され、シャープは本体そのものが台湾のフォックスコン(鴻海精密工業)の傘下に入っていますから、日本勢は総崩れとしか言いようがありません。
これは、家電メーカーの時代の流れを如実に表していると思います。
かつて米国の家電メーカーが日本にとって代わられたように、日本の家電メーカーが中国勢や韓国勢にやられているという流れです。
このような流れを見ると、日本におけるIT人材の育成について懸念する人も多いと思います。
まず、今の日本を見ていると国が主導するのは不可能でしょう。
大学に期待したい気持ちもありますが、大学も明治時代の遺物と化していて、各大学の特徴が薄れて競争力が失われていると感じます。
今の日本ではIT人材が育つ土壌はほとんどありませんから、高校生をインターンで活用してみるとか、海外からの就職を受け入れやすくするとか、あるいは起業支援を行うようにするなど、方向性を変えた施策が必要だと思います。
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※この記事は5月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は日本航空のニュースを大前が解説しました。
大前は春秋航空日本の子会社化について、「中国の春秋航空とコードシェア等を上手く進めることで、特に中国のインバウンド需要が戻った時に成功すると考えられる」と述べています。
関係者がお互いのニーズを理解して協働を進めることで、大きな相乗効果を生むことが出来ます。
コロナ収束後にはどんなビジネスチャンスがあるか、どのように協働を進めることが出来るか、今から考えて行動することが大切です。
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