大前研一「ニュースの視点」Blog

KON829「大阪府/外出規制/PCR検査~PCR検査の対応が遅れる日本がとるべき戦略」

2020年5月18日 PCR検査 外出規制 大阪府

本文の内容
  • 大阪府 自粛解除へ「大阪モデル」発表
  • 外出規制 外出自粛の緩和、カギは
  • PCR検査 新たな感染症の検査体制不備

名声を下げた西村氏と政府。吉村知事の対応は見事


大阪府は5日、政府が緊急事態宣言を5月末まで延長したのを踏まえ、独自の解除基準となる「大阪モデル」を発表しました。

これは感染経路不明の新規感染者の増加比など、4つの指標が7日間一定水準を下回った場合、自粛を解除するものです。

一方、国が解除基準を示さないとして吉村知事が批判したことについて、西村経済再生担当大臣は6日、「仕組みを勘違いしている。解除は知事の権限」と述べ、不快感を示しました。

今回の西村経済再生担当大臣と吉村知事の言い争いは、吉村知事の圧勝だと思います。

西村氏は「すでに仲直りしていて、2人は仲が良い」などと言っていますが、私からすればその態度すらみっともないと思います。

本来なら、吉村知事が提示したような指標について、良い事例として紹介する、といった動きをとるべきでしょう。

あるいは、吉村知事が提示した4つの条件に問題があるのなら、それを堂々と指摘するべきです。

一方、吉村知事は、西村氏に指摘を受けた点について素直に謝罪し、その上で国として出口戦略を示してほしいと意見を述べています。

明らかに西村氏よりも上手な対応です。

今回の件で、西村氏および政府が名声を下げ、吉村知事のそれは向上したはずです。

大阪の吉村知事以外でも、千葉の熊谷市長、北海道の鈴木知事など、地方自治体の方がうまくリーダーシップを発揮したケースが見受けられます。

東京都の小池知事は、当初、国に緊急事態宣言を迫るなど積極的な動きを見せていましたが、今になっても、自粛解除の明確な基準を示せず、その他の具体的な対応策も提示できていません。

こうした対応を見ていると、結局、7月の都知事選にしか興味がなかったのか、と私は感じてしまいます。




PCR検査数が伸びなかったのは政府の責任と自覚せよ


日経新聞は2日、「外出自粛の緩和、カギは」と題する記事を掲載しました。

政府の専門家会議が1日、外出自粛を緩和するにはPCR検査の迅速な実施が必要との見方を示したと紹介。

日本は諸外国と比べて検査の実施件数が少なく、新規感染者数の正確な把握が難しいためで、ICU(集中治療室)など医療体制の整備も急務としています。

PCR検査を受ける相談や受診の目安とされてきた「37.5度以上の発熱が4日以上」などの条件が撤回されました。

これについて加藤厚生労働大臣は「目安が一つの基準のように捉えられた。我々から見れば誤解」などと述べ、世間からのひんしゅくを買っているわけですが、これはしかたないことでしょう。

PCR検査数が少ないのは、日本の縦割り行政の問題であって、まずそこを素直に認めるべきだと思います。

韓国やドイツ並みに検査数を増やせなかったのは、政府の責任です。

安倍首相としては寝ずに解決にあたっても良いほど重大な問題だと私は思います。

日本は検査をするための機器開発もできていますから、できなかったという言い訳は通用しないでしょう。

この問題について安倍首相はどう考えているのでしょうか。

そのために何をやってきたのかということも、全く見えてきません。




日本はCT検査を活用することが、重要な戦略になるかもしれない


政府の専門家会議は4日、国内のPCR検査の数が国際的に少ない要因は、新たな感染症に対応する検査体制が整わなかったためとする分析結果を公表し、対応の遅れを認めました。

専門家会議のメンバーの話を聞いていても、あれこれと検査数が伸びなかった理由が出てきますが、「ではどうすればいいのか?」という具体的な提言は全く示されません。

同じ専門家でも、ドイツの場合は違います。

ロベルト・コッホ研究所が、明確な責任を負って指揮をとっているため、言い訳などありません。

日本の専門家会議も、本来は陣頭指揮をとって、検査数が伸びない問題についてアドバイスするべき立場なのに、機能していると言えません。

日本にとって重要な意味を持ってくる可能性があるのが、コンピューター断層撮影装置(CT)検査です。

重症度の判定にCTの画像診断が威力を発揮することがわかってきています。

実は、日本はCTを世界一保有している国です。

中高齢者の重症化判定にあたり、CT検査を活用できるなら、非常に大きな効果を生むでしょう。

PCR検査の検査状況を見ると、日本は人口1000人あたり1.5人です。

一方で、MRIとCTの設置台数を見ると、人口100万人あたりMRIは51台、CTは107台となっていて、どちらも世界一です。

過剰投資ともいえるくらいのレベルで保有しています。

PCR検査数が伸び悩む中、MRIやCTを使って対応していくのが、今後の日本にとって重要な戦略になってくると私は思っています。




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※この記事は5月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は大阪府のニュースを大前が解説しました。

大阪府は、外出自粛解除の基準となる「大阪モデル」を発表しました。

物事を適切なタイミングで判断するためには、あらかじめ判断基準を決めておく必要があります。

何をもって判断するのか?
判断材料となるデータは十分揃っているか?

とりあえずデータを集めてから考えるのではなく、軸を決めて進んでいくことが大切です。


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