大前研一「ニュースの視点」Blog

KON817「国内経済/デジタル社会/AWS/教育改革~日本は国家としてさまよっている」

2020年2月24日 AWS デジタル社会 国内経済 教育改革

本文の内容
  • 国内経済 逃げ水の「GDP600兆円」
  • デジタル社会 規制のあり方、課題の議論開始
  • AWS ITシステムクラウド化へ調整
  • 教育改革 「GIGAスクール構想」へ意見交換

逃げ水というよりも、嘘。日本は国家としてさまよっている


日経新聞は12日、「逃げ水の『GDP600兆円』」と題する記事を掲載しました。

政府が4年半前に掲げた名目GDP600兆円の達成が一向に視野に入らないと指摘。

米中貿易戦争など想定を超えて膨らんだ海外リスクに加え、経済のデジタル化が見かけの成長を低く抑え込んでいることなどが影響した一方、中期的に成長率が実質2%、名目3%を上回るとした試算の前提が現実離れしていることも要因としています。

政府が述べてきた数字は、逃げ水というよりも「嘘」だと私は思います。

2020年にはプライマリーバランスの黒字化を目指すという話も、谷垣氏のような政治家が政治の一線から退いてしまい、全く実現する見込みは見えてきません。

GDP600兆円を達成するには、実質2%、名目3%の成長が必達でしたが、今年は0%成長といったところでしょう。

新型コロナウイルスの問題が大きくなってしまうと、マイナス成長もあり得ますし、中国経済が落ち込めば、大きなマイナス成長の可能性すらあります。

桜を見る会、モリカケ問題など、安倍政権は逃げ水だらけで、日本という国がさまよっている状態だと私は感じます。




検討ばかりしていて、実行に行き着かない日本


政府の規制改革推進会議は12日、デジタル社会に対応する規制のあり方や課題についての議論を開始しました。

これは遠隔の診療や服薬指導の際、対面確認が必要な手続きを減らすほか、インフラ分野では道路や橋梁などの目視点検の代わりにドローンを活用することなどを検討するとのことです。

この「検討する」というのも、日本がよく使う逃げ水の1つです。

今の技術を考えれば、遠隔医療が実現可能なのは、検討するまでもないことです。

「検討する」のではなく、具体的に実現に向けて「できるようにする」のが当たり前だと思います。

それが技術進歩につながり、実績になり、AIなどの発展にもつながっていきます。

日本は常に議論だけで検討を繰り返しています。

会議を開いても、そのたびに「医師法に抵触するのでは?」などという話になり、日本医師会のような団体が関わってきて、実行段階の前に止まります。

そして最終的には、実現している他国に「見学に行く」だけで話が終わってしまうのですから情けない話です。




地方自治体の業務をクラウド化すれば、9割の業務は削減できる


政府が今秋からスタートするITシステムのクラウド化をめぐり、各所共通の基盤システムをAWS(アマゾンウェブサービス)に発注する方向で調整に入ったことがわかりました。

自前で保守管理する従来のシステムに比べてコストを1/3に抑えられるということで、発注先として今春に正式決定する方針です。

AWSでもマイクロソフトでもどこでも良いのですが、クラウドのシステムを使うということは、町役場の仕事の大半が必要なくなる、という本質を理解するということが大切だと思います。

究極的には地方公務員を含めて、9割以上の業務・人員削減につながっていく話です。

地方自治体については日本国憲法第8章で定められていて、その業務の大半は憲法に基づいて委託された同じ内容です。

それをクラウドでひとまとめにするのであれば、地方独自の戦略などを別として、町役場の規模の大小を問わず、人事・給与管理などの同一業務はすべて削減対象になるはずです。

このシステムに300億円を使うのであれば、全体としては3兆円規模のコスト削減ができるはずですし、それを目指すべきだと私は思います。




GIGAスクール構想の裏に見え隠れする利権


すべての小中学校で1人1台のパソコンを使えるようにする「GIGAスクール構想」をめぐり、関係省庁と民間企業による意見交換会が14日開催されました。

その中で、萩生田文科相は「パソコンについて必要十分なスペックで長く使えるものを低価格で提供してほしい」と協力を要請。

メーカー側は、年間に必要な台数や導入後の更新がどのように行われるかなどの情報提供を求めたとのことです。

「Society5.0時代」など言葉だけが一人歩きしているような印象を受けます。

「子供たち一人ひとりにパソコンを1台」ということですが、世界的に見れば、今さらそんなことを言っているほうが驚きでしょう。

また、パソコンについて「必要十分なスペックを求める」ということですが、学校に行ったときに子供たちが使うだけの限定利用であれば、ダム端末のようなもので問題ないはずです。

サーバー側に学校のコンテンツ、全国の学校の共通のコンテンツなどを格納し、子供たちが使うパソコン端末は、そこに接続するだけで良いからです。

それほど複雑な機能もスペックも必要ありません。

家で宿題をやる必要があるときは、データの一部をメモリで持ち帰り、家のパソコンで宿題をやって再びメモリで学校に持ってくれば問題ないでしょう。

パソコン1台に20万円ほどの予算が見込まれているそうですが、私に言わせれば、1台2万円ぐらいの予算でも実現できます。

どうにも聞こえてくる話は、「予算額が1桁違っているのでは?」と感じます。

IR推進法と同じく、何かしらの利権が絡んでいるのかもしれません。

メーカーからすれば、莫大な数のパソコンを納入するチャンスなので、様々な人が暗躍していても不思議ではありません。




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※この記事は2月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はAWSのニュースを大前が解説しました。

大前は「300億円を使うのであれば、3兆円規模のコスト削減ができるはず」と述べています。

何かを始める際、「やるべきか、やらざるべきか」「どんなツールを使うか」に注目が集まりがちですが、それらを決めたところでスタート地点に立ったにすぎません。

「そのツールで最大の効果を発揮するためにはどうするべきか」を考え、行動に落とし込んでいくことが大切です。


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