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8月7日(日) 自民に「漁夫の利」与えた参院選(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『全国商工新聞』第3517号、8月1日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

消費税減税、憲法闘争広げ
共闘再建で解散総選挙早く

 日本の命運をかけた参院選が終わりました。新型コロナ禍や物価高などによって傷ついた国民生活をどう立て直すのか、ロシアによるウクライナ侵略を受けて日本の安全保障をどうするのか―などが大きな争点となった選挙でした。
 選挙結果は与党が過半集を維持して勝利しています。自民党は改選過半数の63議席を確保し、1減で13議席となった公明党と合わせて76議席になりました。しかし、自民党は比例で昨年の総選挙から165万票も減らし、有権者全体の中での絶対得票率は16.8%でした。支持を減らしているにもかかわらず、一人区で議席を増やして勝たせてもらったのです。
 憲法改正に前向きな自民・公明・維新・国民民主と無所属を合計した「改憲勢力」は179議席となり、発議に必要な3分の2である166議席を上回りました。
 対する野党は、立憲民主党が選挙区で6減の10、比例は改選7を維持して17議席、維新の会は選挙区で1増の4,比例は5増の8となって12議席に倍増しました。比例では立憲を上回って野党第一党となっています。
 日本共産党は東京で1議席を得たものの比例では2減の3となって合計4議席、国民民主党も改選7から2減の5議席、れいわ新選組は3議席、社民党は1議席を得て得票率が2%を超え、政党要件を維持しました。このほか、NHK党と諸派の参政党がそれぞれ比例で1議席を得ています。

 野党不利の情勢 銃撃事件加わり

 野党が敗北した理由の一つは、厳しい情勢の下での選挙だったということにあります。事前の選挙予測でも与党の堅調が伝えられていました。
 その第1は、安倍内閣以降、顕著になってきた日本社会の右傾化や保守化の流れがあります。実質賃金の低下や2度にわたる消費税の増税、新型コロナ禍での生活苦や営業の困難などによる中間層の没落、貧困化などからくる不満や不安が未来志向の「改革」幻想に期待を寄せ、維新の会やNHK党、参政党への支持増大、連合の保守化などをもたらしました。
 第2は、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気、安全保障への関心の強まりと大軍拡・9条改憲の大合唱などです。ソフトな印象の岸田首相の手ごわさ、内閣支持率の安定などに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない岸田首相の政治姿勢が功を奏しました。
 そして第3には、安倍元首相に対する銃撃死という衝撃的な事件の影響があります。投票日2日前に勃発したこの事件によって自民党に対する同情が集まり、物価高対策で失った支持を盛り返したのではないでしょうか。
(続く)



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