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- 建設業統計問題 統計データで不適切な取り扱い
- デジタル政策 デジタル化重点計画を閣議決定
- 医療制度改革 オンライン診療で応酬
建設業統計問題は正しいルールを定めてやり直すしかない
国土交通省は先月15日、建設業の毎月の受注動向などを示す建設工事受注動態統計で、データの不適切な取り扱いがあったことを明らかにしました。
データは事業者から毎月集めていますが、国交省は都道府県の担当者に対して、事業者から期限に遅れて複数の月の報告がされた場合、直近の1ヶ月の受注額に合算する形で書き換えるよう指示していたとのことで、国交省は他の統計への影響を検証する方針を明らかにしました。
会計原則で言えば、売上が計上されたタイミングでコストも計上されます。
しかし建設工事は会計年度をまたぐ長期間に及ぶことが多いため、この原則をそのまま適用すると、最初の数年間は何もデータがないまま最後に一気に売上とコストが計上されるという形になってしまいます。
実態に近い形になるよう、例えば4分の1の想定収入とコストをそれぞれ算出して計上するというルールを定めます。
本来なら、財務省がこういったルールを定めて方針を提示するべきです。
何も計上するものがないという報告や、数年分の売上を一気に報告するというのは、おそらく意図的にやっていたことだと私は思います。
忖度する立場の人たちからすると、思うがままに数字を調整しやすく、またとにかく大きな数字として報告するため二重三重に報告してきたのだと思います。
岸田首相は相違分について国内総生産(GDP)を再計算すると言っていますが、建設工事のデータは1年半で消去されるため、実際のところ再構築できません。
新しくルールをきちんと定めて、これからは正しく計上するしかありません。
デジタル化重点計画に集まった人材のレベルが低すぎる
政府は先月24日、デジタル社会実現のための重点計画を閣議決定しました。
デジタル化による成長戦略、地域の活性化、デジタル人材の育成・確保など6つの分野の取り組みの方向性を示したもので、現在、税、社会保障、災害の3分野に限っているマイナンバーの利用対象拡大や書面、対面の全面的な見直しを盛り込んだものになっています。
ついでのデジタル化ではなく、全ての書類について一から十までデジタルで完結させるというものであり、本当に実現できるなら非常に良いことだと思います。
しかし、生体認証すら取り入れる予定がないというのは今の時代においてリスクが高すぎますし、4種類あるパスワードをあらためて整理する必要があるなどと言っている状態ですから、実現性が高いとは思えません。
率直に言って、このプロジェクトに関わっている人のレベルが低すぎて、このままでは全く成功できるイメージが湧きません。
国が重点計画として定めるというのは非常に良いことだと思いますが、そうであればもっとレベルが高い人材を集めるべきです。
デジタル庁の求人の中には「任期1年、稼働日数は週3日~5日」という非常に甘い条件が提示されているポジションもあり、本腰を入れて取り組めるのか疑問です。
10年~20年先を見据えて真剣に取り組むのであれば、フルタイムで配属するか、あるいは世界で最高レベルの人たちを集めるべきです。
本気ではないパートタイムでの雇用、しかも自ら所属する団体の利益代表のような人たちを600人集めたところで、最初から機能しないでしょう。
こんなプロジェクトに国の重点計画としてお金を使うのは無駄だと思います。
オンライン診療、日本は米国や中国に遅れるばかり
日経新聞は先月23日、「オンライン診療で応酬」と題する記事を掲載しました。
政府の規制改革推進会議がまとめた報告書で、オンライン診療の普及拡大に向けて対面より低い診療報酬の見直しや診療上の優位性を、厚生労働省の指針に明記するように求めたとのことです。
一方で日本医師会は顔色や匂いなど対面診療でなければ得られない情報があると主張するなどオンライン診療の拡大に慎重で、医療のオンライン化をめぐる鞘当てが続くとしています。
オンライン診療の推進にあたり、医師会が反対の立場を取っているのは昔から分かっていることですが、医師会側もせめて「こういう条件なら許可できる」とか「医師会もここまでの準備ならできる」といった反応を示すべきだと思います。
兎にも角にも反対意見を先に言うだけでは全く建設的ではありません。
医師会はオンラインでは十分な診療が行えず正しい判断ができないと主張していますが、海外に目を向けると米国や中国などでは既に実現しています。
特に中国では携帯・スマートフォンで医師に24時間アクセスでき、緊急事態なら専門家を紹介するという非常に優れた仕掛けが機能しています。
私に言わせれば、日本だけが中国や米国などに比べて著しく遅れている状況です。
今は新型コロナの問題もあって通院が怖いという人も多いでしょうから、オンライン診療を進める絶好の機会です。
実際、診療のオンライン化について一般の人たちに聞くと「忙しい人や遠方に通院している人に有用」などとポジティブな意見もあります。
一方、診療のオンライン化に医師はおしなべて一般人よりネガティブな意識を持っています。
そのような医師の意見を聞くよりも、米国や中国のやり方を研究して「彼らはこうやって実現しているけれども、日本ではどうすればいいのか?」というような建設的な議論を交わすべきでしょう。
少なくとも携帯・スマートフォンで24時間医師にアクセスして相談できるだけでもまずは十分ではないでしょうか。
それすらも実現できずずっと今のままでは、日本は世界から遅れるばかりです。
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※この記事は12月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は医療制度改革のニュースを大前が解説しました。
大前は「日本医師会はオンライン診療に慎重だが、既に海外ではオンライン診療が進んでいる国がある」と指摘し、「海外でオンライン診療が進む背景ややり方を研究し、医療体制に24時間アクセスできるシステムを整えないと遅れるばかりになってしまう」と述べています。
新しい施策を実行するにあたり、他社の成功事例から成功した理由や手法を学ぶことは重要です。
日々ニュースなどを通じて情報収集し、自社課題の解決に繋がるヒントをストックしておきましょう。
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