ロシアのウクライナ侵攻の意味


さて、今年2月下旬、ロシアがウクライナに大規模な軍事侵攻を開始しました。この戦争に関しては多くが語られてきましたが、ここでは、その特徴の一つに言及します。それは核兵器保有国ロシアによる、核兵器を放棄した国ウクライナに対する攻撃という事実です。


世界には、これまで保有していた核兵器を放棄した国が四つあります。一つは南アフリカです。他の三つは旧ソ連の構成国だったベラルーシとカザフスタン、そしてウクライナです。ソ連時代に配備されていた核兵器を、この三か国は放棄したのです。もしウクライナが核兵器を放棄していなければ、ロシア軍の大規模な攻撃はなかったのではないか、との思いを多くの人々が抱いているでしょう。それゆえに、ウクライナの経験が、イランを含め多くの国々の指導層の心に、核兵器を保有しようとの動機を強めるのではないかと懸念されます。


名誉ある地位


最後に、イラン核合意の問題に対する日本の政策に関して確認しておきましょう。国際関係の基本は合意の尊重です。ところが、すでに見たように、アメリカは一方的にイラン核合意から離脱しました。これは国際関係の基本を揺るがす行為です。ところが、イランと友好的な関係を維持していると自称する日本は、アメリカの意向を受けてイランからの石油の輸入を止めるなど、同国に対する制裁に参加しています。国際合意を守っていた方ではなく、破った方に加担しているわけです。日本の指導層の言動から、その自覚と言うか、羞恥の感情が感じ取れないのは残念です。


日本が合意を破った方の味方をしているというのは、国民として誇りのもてる光景ではありません。日本国憲法の前文に「日本国民は……国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」との文言があります。日本の外交官たちが心のよりどころとしてきた前文です。残念ながら、現在のアメリカとイランに対する日本の立ち位置は、名誉ある地位という理想からは、無限に遠く見えてしまいます。


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