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菅義偉首相の後継を争う戦いは、告示2日前に大きく動いた。野田氏が、最大の課題だった国会議員の推薦人20人確保のハードルをクリアしたことを関係者が明らかにした。16日にも出馬表明を予定している。高市氏と史上初となる女性2人を含めた乱立で構図は一変する様相だ。

野田氏は推薦人確保に手応えを得た前日14日、自身のブログを更新し、「やはり私自身が動く必要性を強く感じ」などと出馬予告したものとみられている。同じ無派閥の三原じゅん子厚労副大臣らから支持する動きが広がっている。初の女性候補2人を含む本格的な総裁選となれば、多様性を持った党としての改革のアピールになり、コロナ対策などで国民の批判にさらされている流れを変える一手にもなる。

河野氏は「次期衆院選を戦える新しい顔」として派閥を横断した支持を拡大させている。この日、石破茂元幹事長から支持表明を受け、追い風を得たが、候補の乱立で票の分散が現実味を帯び、一転してピンチに陥る可能性も出てきた。

総裁選は国会議員383票、党員・党友383票の計766票によるフルスペックで行われ、トップが過半数に達しなかった場合には上位2人による決選投票となる。決選投票では国会議員383票と、都道府県連各1票の計47票、合計430票で争われ、国会議員票の重みが増す。仮に河野氏、岸田氏による決選投票となった場合、国会議員票は岸田氏に流れる可能性が高い。

河野氏が所属する麻生派(53人)も河野氏支持で一枚岩ではなく、高市氏を支援する安倍晋三前首相も河野氏には警戒感を示す。安倍氏の出身である最大派閥の細田派(96人)は「自主投票」としたが、この日、細田派を中心とする原発推進グループの会合で、出席者の大半が、出馬を機にトーンダウンしたとはいえ「脱原発」を訴えてきた河野氏への不信感をあらわにし、岸田氏支持をうかがわせた。他の派閥も割れる意見に配慮して自主投票としているが、決選投票となれば、今後の人事、処遇などをにらみ、派閥の論理で「勝ち馬」に乗る動きが決定的になる。初戦で河野氏に投じられた票が、決選投票では反河野票に転じる可能性もでてくる。それだけに河野氏は初戦で勝ち切ることが最善策だ。野田氏が投じる一石が、政界に大きな波紋を広げることになりそうだ。【大上悟】

◆野田聖子(のだ・せいこ)1960年(昭35)9月3日、福岡・北九州市出身。上智大卒。帝国ホテル勤務を経て、1987年に岐阜県議となり、93年に初当選。当選9回。郵政相、総務相、女性活躍担当相などを歴任。昨年9月に自民党幹事長代行に就任。祖父は元建設相の野田卯一氏。岐阜1区。血液型A。

 

 

石破氏の不出馬で”神風”?野田聖子氏が総裁選出馬へ「河野氏の圧勝から岸田氏と接戦になる」自民党幹部

2021/09/15 21:42 AERA

総裁選の不出馬を表明した石破茂氏(C)朝日新聞社
総裁選の不出馬を表明した石破茂氏(C)朝日新聞社 9月17日の自民党総裁選告示を目前に控え、大波乱があった。

 

【写真】二階幹事長が推す総裁選のダークホースはこちら

 これまで出馬は「白紙」としてきた石破茂元幹事長が9月15日、記者会見し、不出馬を表明した。

 一方で、自ら率いる石破グループ「水月会」のメンバーには、「誰を支援するのか、それぞれの議員で考えるべき。グループとして拘束しない」と述べ、自主投票とする意向を示した。石破氏の不出馬で総裁選の候補者として急浮上したのが、野田聖子幹事長代行だ。

 推薦人に確保にメドがつき、4番目の候補者として明日にも出馬表明をするという。

 過去3度の総裁選で推薦人が足らずに断念した野田氏だが、今回は「これも神風かもしれません」(野田氏と近い衆院議員)という。

「石破氏が自主投票としたことでグループはフリーハンド。石破氏が出馬しないなら、政治的な共通点の多い野田氏を支援したい、推薦人になってもいい、という議員が出てきました。にわかに野田氏の推薦人集めが現実的になってきたのです。これまで石破氏に出馬を進めていた二階派の一部も野田氏の推薦人に応じると聞いています」(石破グループに属する国会議員)

 石破氏が不出馬を決めたことで、野田氏への「流れ」ができたというのだ。野田氏の推薦人集めは、過去の総裁選のときと同様に浜田靖一元防衛相らが中心いなっているという。

 野田氏が参戦すれば、河野氏、岸田文雄元外相、高市早苗前総務相に続いて4人目の候補となる。

 安倍晋三前首相、菅義偉首相の時、真っ先に支援を打ち出し、勝ち馬に乗ってきた二階派だが、今回は岸田氏が党役員改革案という「矢」を二階俊博幹事長に放ったため、退任を迫られ、迷走が続いた。二階派幹部はこう話す。

「石破氏がうちの要請には応じず、不出馬を決めました。河野氏に乗ろうという意見も多くあった。しかし、二階幹事長に引導を渡そうとした岸田氏以外ならこの際、誰でもいいんじゃないかという意見もある」

総裁選へ出馬予定の野田聖子幹事長代行(C)朝日新聞社

総裁選へ出馬予定の野田聖子幹事長代行(C)朝日新聞社

 

 一方で、高市氏の支持にも一部が回ればいいという意見もあるという。

「つまり、全方位外交ですよ。そこへ野田氏の推薦人確保があと数人というところまでになったという話が届いた。野田氏を幹事長代行に抜擢していたのは二階氏で、ずっと相談に乗ってきた関係上、出馬は大歓迎です。おそらく推薦人を出すのではないか」(同前)

「安倍前首相や派閥のボス、麻生太郎副総理兼財務相に支援を求めている河野氏が、2人と敵対してきた石破氏に協力要請したのは大きなバクチだった。だが、党員に人気がある石破氏はとりわけ、地方の党員票に強い。石破氏が不出馬なら、その党員票を取り込み、圧勝してその勢いで議員票もという戦略を描いていた。だが、野田氏が出馬すれば、正直、痛い。高市氏と女性候補が2人というのは、総裁選では初になる。河野氏が取れそうだった票が2人に流れてしまう可能性が高い。戦略通りにいかないのではないかと心配する声がでている」(河野氏支援の国会議員)

 もう一人の有力候補、岸田派の国会議員は野田氏の出馬を歓迎している。

「野田氏の出馬により、議員票で河野氏に勝てる可能性がでてきた。党員票でも思ったほど、河野氏が優勢というわけではない。例えば、大阪では日本維新の会が強いでしょう。河野氏が菅政権継承なら官邸と維新とのパイプも続き、否決された大阪都構想をもう一度と言い出しかねず、拒否反応も強い。そこへ野田氏が名乗りを上げたとなれば、党員票がさらに割れる。河野氏がダントツではなくなるので、うちにチャンスがあるかもしれない」(同前)

 岸田派は党員票383票の行方についてこう推測しているという。

「河野氏が160、岸田氏が120、高市氏と野田氏を合わせて100と予測しています。あるメディアが自民党員を対象に世論調査した内容では、次期首相は河野氏が25%、石破氏が21%、岸田氏が19%、高市氏が16%、野田氏が3%でした。世論調査の上位の1番の河野氏と2番の石破氏が手を組めば、普通は勝ちますよ。河野氏かと私も思った。しかし、党内の様子から一筋縄ではいかない感じがする。河野氏と岸田氏でかなり激戦になるという空気があります。野田氏は推薦人20人をよく集めたと思う。ひいき目ももちろん、ありますが、野田氏の出馬で、岸田氏へ有利な方に働いたのかな」(自民党幹部)

 河野氏圧勝ムードから一転、勝負の行方は混とんとしてきた。

(AERAdot.編集部 今西憲之)

 

 

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