「良き友人だった」。安倍元首相の死亡に、悲しみをこらえるように会見した岸田首相=8日夜、首相官邸(撮影・矢島康弘)

6月22日の参院選公示から約2週間にわたり、精力的に全国各地を回っていた安倍氏。投開票直前、街頭演説中に銃弾に倒れるという想像を絶する最期に、政界も大きなショックに見舞われた。

岸田首相は8日午前、山形県で自民党候補の応援に入っていたが、日程を切り上げ、自衛隊のヘリコプターなどを乗り継いで急きょ午後に帰京。

関係閣僚会議を開催して対応を協議し、訃報が流れた夜、官邸で改めて記者団に対応。険しく、沈痛な表情で「どうにか一命を取り留めていただきたいと祈っていたが、祈りもむなしく、こうした報に接することになってしまった」と安倍氏の突然の死を報告した。

参院選中に元首相が命を奪われるという惨劇。「卑劣な蛮行。断じて許せるものではなく、最も強い言葉で改めて非難する」と怒りをみせた。時折、鼻をすすり、涙をこらえているようだった。

憲政史上最長の8年8カ月間首相を務めた安倍氏について、「卓越したリーダーシップ、実行力で厳しい内外情勢に直面するわが国を導いた。この国の未来を切り開くために多くの実績をさまざまな分野で残された」と感謝。今後、国葬などの予定については、「敬意を表してしっかりとした対応を考えていく」とした。

安倍氏とは1993年に衆院に初当選した同期。自身が首相就任後は助言や激励の言葉をもらっており、「多くの時間をともにした良き友人でもあった」としのんだ。

事件後、幹部らの地方遊説を中止し、多くの候補者が街頭演説を取りやめたが、9日の選挙戦最終日は安全を強化して続行するという。「民主主義の根幹である自由で公正な選挙を、絶対に守り抜かないといけない。暴力に屈することがあってはならない」。弔いのラストデーを迎える。