大前研一「ニュースの視点」Blog

KON877「大阪感染者数/東京五輪・パラリンピック~小池都知事の発言は『都知事ファースト』」

2021年4月26日 大阪感染者数 東京五輪・パラリンピック

本文の内容
  • 大阪感染者数 新たな感染者数1220人
  • 東京五輪・パラリンピック 自民党・二階幹事長、中止も選択肢の考え

東京、大阪、山梨、各知事の手腕の違いが浮き彫りになった


大阪府は18日、府内で新たに1220人が新型コロナウイルスに感染したと発表しました。

1日の感染者数としては過去最多で6日連続で1000人を超えました。

また重症者の数が14日に239人となり、2週間前の2.6倍に増加。

病床の使用率が急上昇し、府は不急の入院や手術を延期してコロナの重症患者を優先治療するように府内の約60の病院に緊急要請を行いました。

東京と比較すると、入院患者数はそれほど変わりませんが、大阪の方が病床の使用率が圧倒的に高くなっています。

大阪の感染拡大問題の本質は、一言で言えば気の緩みだと思います。

一度落ち着いた時に安心してしまい、たがを外してしまいました。

20~30代の若者が出歩いてお互いに感染させあって、そのまま家庭内で感染を広げました。

これが全体の約半数に相当するのではないか、と言われています。

吉村府知事は、当初テキパキと明確な指示を出していて高評価を受けていましたが、今では完全に迷走している状態です。

世間からの評価も低くなってしまいましたが、現状を見ると致し方ないかもしれません。

英国型の変異ウイルスがいち早く広まってしまった大阪は、間違いなくステージ4であり、非常に苦しい状況が続いています。

吉村府知事が新型コロナウイルス感染拡大の抑え込みに苦戦する一方で、広島県や山梨県では、知事が陣頭指揮を執って見事に感染の抑え込みに成功しています。

例えば、山梨県では県独自のグリーン・ゾーン認証という基準を設けて、人が集まる施設が実施すべきチェック項目を明確にしています。

その上で、実際に現場でお店の人と対話をしながら、抜き打ち検査も行うなど厳しくチェックをしています。

感染防止意識を高め、お互いにけん制する雰囲気が作られているのは見事だと思います。

このように感染拡大の防止策を徹底しつつ、県民に無理な行動制限を設けることはしていません。

何も具体的な対策をせず、むやみに「東京に来るな、出かけるな」と言っている東京とは大違いです。

小池都知事は一体何をしたいのか、私には全く理解できません。

つい先日まで、小池都知事は「1都3県一体」を標榜し、飲食店への時短要請などを一体的に進めていると発言していました。

「東京に来るな」というのは筋が通りませんし、そもそも現実的に不可能です。

千葉、埼玉、神奈川から毎日通勤・通学でおおよそ100万人ずつ、人々が出入りしています。

その人たちに「東京に来るな」と言うつもりでしょうか。

そんなことを企業や学校が受け入れられると思っているのでしょうか? 全く理解に苦しみます。

千葉、埼玉、神奈川から300万人が出入りするのが東京という商圏であり、これを切り離すことはできません。

もはや小池都知事の発言は、都民ファーストではなく「都知事ファースト」になってしまっていると感じます。




五輪中止は選択肢の1つとして考えておくべき


自民党の二階幹事長は15日、東京五輪・パラリンピックの開催をめぐり、「これ以上とても無理ということなら、すぱっとやめないといけない」と語りました。

これに対して菅首相は「開催に向けて感染防止に万全を尽くしていくのは変わらない」と強調。

その後、二階氏も「何が何でも開催するのか?と問われれば、それは違うという意味で申し上げた」と弁明しました。

おそらく二階氏自身は、自分の発言のどこに問題があるのか本当の意味では分かっていないでしょう。

このあたりの感性は森喜朗氏と同様です。

先日、永田町で最も有名な80歳を超えているベテラン女性秘書について、森氏は「女性と言うには、あまりにもお年だ」と述べて物議を醸しましたが、やはり自身の発言の問題点について理解していないでしょう。

二階氏の感性はともかくとして、五輪中止は選択肢の1つとして全員が考えておくべきことだと私は思います。

戦争が勃発するといった非常事態以外は五輪中止を考えられないという論理は、冷静さを欠いていると思います。

実際、日本国民の過半数が、五輪の開催は難しいと感じていますし、他国からすれば、ワクチン接種が最も遅れている日本へ大切なアスリートを送り込むことは非常にリスクが高いと感じているはずです。

日本、そして国際オリンピック委員会(IOC)が批判を受けるのも当然です。

幸いにして日本は感染者数も死亡者数も少ないですが、ワクチン接種の体制整備の遅れは、英国などに比べると惨めとしか言えません。

そして五輪開催を考えると、圧倒的に医療施設などの準備が足りていないことは致命的です。

海外からアスリートを何万人も受け入れて、万一の事態が生じたとき、今の日本では十分にサポートすることはできないでしょう。

医療関係者もECMO(エクモ)などの医療設備も圧倒的に不足しています。

五輪開催まで約100日しか残されていませんが、こういった点を考慮すると、現実的に開催できるのかどうかかなり疑問です。

直前になって急に「国内の観客も禁止」などという事態になるかもしれません。

何が起こっても不思議ではないと思います。

それでも、菅首相には「中止」を明言する勇気はありませんから、今回の二階氏の発言は、そのガス抜きになったと私は感じています。




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※この記事は4月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は大阪感染者数のニュースを大前が解説しました。

大前は山梨県や広島県が取り組んでいる新型コロナウイルス対策を紹介しています。

同じ課題であっても、解決へのアプローチは多岐に渡ります。

同じ業種・業界に限らず、幅広い企業の事例をチェックすることで新しい課題解決のヒントが得られるかもしれません。


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