西村大臣の事件は、日本社会の意外に大きな変化を示していると思う。今までだったら、役所が行政指導で銀行を使って飲食店をいじめるという話は、ありふれていてニュースにもならなかっただろう(初期にはマスコミも取り上げなかった)。

それが玉木雄一郎氏と山尾志桜里氏がツイッターで取り上げたら、ネット民の怒りが爆発し、政府は全面撤回に追い込まれた。これは役所が許認可権や補助金を脅しに使って業界を締め上げる伝統的な行政指導がきかなくなったことを示している。



これはきのう日本維新の会の2人と話したベーシックインカムとも関係する。BIには二つの考え方がある。一つは1960年代にフリードマンが提案した負の所得税で、もう一つは1970年代に新左翼の提案した平等主義的なBIだが、両者は算術的には同じである

このように政治的には両極の思想から、同じ提案が出てくるのは偶然ではない。すべての個人に一律に最低所得を保障するという考え方が、今の社会保障とは根本的に異なるからだ。

初期の社会保障の対象になったのは成年男子の労働者で、年金も医療も世帯が単位である。女性や子供は「被扶養者」としてしかカウントされていなかったが、これでは単身世帯や母子家庭などの貧困層が救済できないので、生活保護などの裁量的な給付が建て増しされ、複雑で不公平な社会保障制度ができた。

しかし超高齢化で、現役世代の負担は大きくなる一方だ。これは世代間格差だけではなく、もっと根深い対立を生んでいる。これからは「小さな政府か大きな政府か」ではなく、フェアな政府かアンフェアな政府かという問題が大きくなるだろう。

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