【ウクライナ発】国家存亡の危機に生きていた記者の連帯 「この人もジャーナリストですから」

ボディーガードに付き添われ法廷から出てきたポロシェンコ前大統領。疲れ切っていた。=17日深夜、ペチェルスキー地裁内 撮影:田中龍作=

 「傍聴人が多いと裁判長もいい加減な判決を書けませんから」。日本の裁判でよく聞く言葉だが、ウクライナも同じなのだろうか。

 国家反逆罪に問われているポロシェンコ前大統領の公判が17日あった。裁判は、今の政治状況を象徴しているので、内容は次回判決が出た時に書く。

 「(ロシアの傀儡だった)ヤヌコビッチ政権時代のような独裁国家にしてはならない」。前大統領が、裁判所前に集まった支持者たちに言い残して、入廷したのが午前11時。

 審理は12時間に及んだ。朝から降り続いていた氷雨は、夜になるとシャーベット状の重い雪に変わった。

 身も凍るような寒さのなか、数千人の支持者たちは、声をあげ続けた。

「ポロシェンコ、火薬(ポロ)出して」
「ウクライナに栄光あれ」
「英雄に栄光あれ」・・・政権転覆を呼びかけるような激しいシュプレヒコールは、打ち鳴らされる数十基のドラム缶の音と共に法廷まで届いた。

 長い長い審理を終え、廷外に出てきた前大統領は、夜遅くまで抗議を続けた支持者たちに向かって叫んだ。

 「ありがとう。寒いなか皆さんがこうして集まってくれた御陰で(裁判官は)判決を出せなかった」。

氷雨のなかドラム缶を打ち鳴らす前大統領支持者たち。=17日夕方、ペチェルスキー裁判所前 撮影:田中龍作=

 法廷は狭いため傍聴できたジャーナリストは先着順でわずか数名。残り数十人のジャーナリストは法廷につながる通路で待った。田中もそのうちの一人だった。

 裁判所の建物に入れたのは、地元記者が「この人もジャーナリストだから」と警察に口添えしてくれたからだった。

 地元記者に言われるまま、パスポートと手製(英語表記)の記者証を見せると警察は通してくれた。

 記者クラブ員以外を厳しく排除する日本では2万パーセントありえないことだった。

びっしりと並んだ黒装束は警察の機動隊だ。デモ隊と見間違うほどの数だった。=17日夕方、ペチェルスキー裁判所前 撮影:田中龍作=

 便宜を図ってくれた地元記者が田中に「ウクライナは初めてか?」と聞くので、「4回目だよ。前回はドンバス戦争が始まった直後の2014年秋だったね」と答えた。

 当時、ドンバスの中心部はすでにロシア側にほぼ制圧されていた。ジャーナリストといえどもウクライナ人が入るのは不可能だ。下手をすれば殺される。

 田中はロシア人ドライバーと一緒だったので、運よくドネツク州中奥まで入れた、というだけだ。

 基地を移動する親露派の武装勢力を取材車に乗せた話などを、地元記者に聞かせると、彼は目を輝かせた。

 ウクライナは30年前まではソ連の構成国だった。田中の通訳の祖父はレーニンを批判した かど で逮捕され、極寒の地に投獄された。

 「あの時代に戻してはならない。自由の砦を守るんだ」。地元記者たちのDNAにジャーナリズムが脈打っているように思えた。

  ~終わり~

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