戦争の「先進地域」


さてシナイ半島やレバノンでの戦闘が多くの教訓を残したように、ウクライナでの戦争も各国の防衛政策に示唆する点が多いだろう。この戦争で我々の眼前で示されたドローンの威力は、恐らく軍事費の効率的な支出に関する議論を各国で引き起こすだろう。通常の高額な航空機と比較的に安価なドローンの保有数のバランスは、どうあるべきかなどの議論は尽きないだろう。


ウクライナの戦争が示すように、遺憾ながら、国際政治を規定する大きな要因は軍事力である。国際政治業界のカタカナ用語を使えばハードパワーである。時には、それは決定的な要因と言えるかもしれない。となると、不幸にも最新の兵器と戦術の実験場となってきた中東を知らずして軍事を語ることはできない。中東を知らずして、軍事は語れないし、国際政治も語れない。


こうした中東という地域の戦争に関する「先進性」を考えると、この地域の経験から学んだ者が次の戦場での勝者となる。トルコ製のバイラクタールTB2という名前のドローンがロシア軍の戦車を破壊する映像が発信するメッセージである。


略年表
1944年    ドイツ、V1ロケットを使用
1967年    第三次中東戦争
1973年    第四次中東戦争
1979年    セルチュク・バイラクタール、生まれる
1982年    レバノン戦争
1996年    エルバカン、首相に就任
1997年    エルバカン辞任
2001年    アフガン戦争
2003年    イラク戦争
2002年    エルドアン、首相に就任
2011年    エルバカン死去
2014年    エルドアン、大統領に就任
       バイラクタールTB2の原型の完成
2015年    TB2からの精密誘導兵器発射実験
2016年    TB2のPKKに対する使用始まる。
       バイラクタールとエルドアンの娘の結婚
2017年   トルコ、S400の輸入
2019年   ウクライナ、TB2を輸入
2020年   ナゴルノ・カラバフ紛争
2021年   TB2、エチオピアの内戦で「活躍」
2022年   ロシア軍のウクライナ侵攻


-了-