第479号の目次です。

●週刊金融日記 重要バックナンバー(夜間飛行)
http://yakan-hiko.com/PU14

●週刊金融日記 重要バックナンバー(まぐまぐ)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52160749.html

●週刊金融日記 重要バックナンバー(note)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52021876.html

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// 週刊金融日記
// 2021年7月13日 第479号
// 人間は組織の利益は考えないということと中国巨大IT企業の行く末
// 締め付けられる中国巨大IT企業
// 過密都市の香港の地鶏は割と美味しい
// 教育投資が報われる医療職種は4つだけ
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 東京オリンピックは23日に開会式ですが、すでに21日から女子サッカーやソフトボールの競技がはじまるので、もう来週にはオリンピックが始まっていることになります。

●東京オリンピック日程一覧
https://2020.yahoo.co.jp/schedule/olympic/

 容易に予想できたことですが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、結局、無観客での開催になりました。無観客でもIOCは放送権料を契約通りに確保できるので、IOCとしてはオリンピックが開催さえされてしまえば、観客の有無などはどうでもいいわけです。しかし、開催国の日本は、期待していたインバウンドも当然ゼロ、無観客で国内経済への貢献もゼロ、と経済的にはただただ貧乏くじを引きましたが、こればっかりは運が悪かったので仕方ないと思います。

●開幕直前の無観客決定 スポンサー恨み節「全て無駄に」
https://www.asahi.com/articles/ASP7974ZJP79ULFA00G.html

●組織委幹部「開催さえ果たせば、IOCの腹は痛まない」巨額の放送権料確保にめど
https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20210708-OYT1T50305/

 国民は感染拡大が進む中でのオリンピック開催に複雑な心境ですが、僕はここは菅首相の思惑はだいたい正しいと思います。古代ローマで権力者がパンとサーカスを市民に与えて満足させ、自らの地位を安定させたように、菅首相はここは国民にサーカスを与える絶好の機会だと考えているのでしょう。日本人が金メダルをたくさん取れば、自然とオリンピックは盛り上がっていくことでしょう。その余韻で衆議院選挙を迎える、という作戦ですね。

●支持率低迷に危機感、党内から内閣改造求める声も…読売世論調査
https://www.yomiuri.co.jp/election/yoron-chosa/20210712-OYT1T50296/

●気になる衆院選は実際のところ「いつ」なのか、5つのシナリオ
https://news.yahoo.co.jp/byline/oohamazakitakuma/20210616-00243174/

 しかし、このサーカスでも低迷する菅内閣の支持率が回復しないとなると、いよいよ自民党内でも菅おろしの声が出てくるでしょう。菅さんでは選挙に勝てない、目玉となるフレッシュなリーダーが必要だ、ということになります。そうなると、日本初の女宰相の可能性が出てくるわけです。
 都民から絶大な人気を博す小池百合子東京都都知事ですね。自民党のキングメーカーである二階氏も、オリンピックで菅が息を吹き返せなかったときのプランBとして、すでに水面下で百合子を担ぐ準備をしていそうですね。

●小池氏国政復帰なら歓迎 二階氏
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070800988

『女帝 小池百合子』石井妙子
https://amzn.to/3wvJY4c

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- 所長のブログのサーバの費用はいくらぐらいですか
- トヨタ自動車はEV化の潮流に乗れるでしょうか
- 教育投資が報われる医療職種は次の4つだけです
- NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の老化防止効用について

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.人間は組織の利益は考えないということと中国巨大IT企業の行く末

 恋愛工学は進化生物学を基礎にしているので、このメルマガ読者は自然と正統派の進化生物学を学んでいることになる。進化論と言えば、ダーウィンの『種の起源』があまりにも有名で、大半の人たち、特に教養がある人たちの多くがこの本の間違った世界観に基づいて動物たちの本能を誤解している。それは多くの生物が自分たちの「種」が生き残り、繁栄するように行動している、という極めて誤った牧歌的な生物界の理解である。
 そして、じつは生物学者たちの間でも、このような群淘汰の考え方が根本的に間違っていることが理解されはじめたのは、1970年代ぐらいからなのである。僕が見る限り、多くの言論人たちの動物行動の理解は、これ以前の種単位で生物の淘汰が起きている、という非常に間違ったままのものである。
 このような話は、このメルマガの初期のころのバックナンバーにいくつも書かれているので、まだ、読んでいない人は読んでみるといい。以下、いくつかのバックナンバーや書籍を選んでおいた。

週刊金融日記 第12号 Good Genes or Good Dad?
週刊金融日記 第13号 女の生理周期と浮気の関係
週刊金融日記 第92号 血縁淘汰理論による父娘関係と非モテ理系男とキャリア女の考察
週刊金融日記 第147号 恋愛工学で読み解くイスラム国
週刊金融日記 第184号 父系制社会と母系制社会
週刊金融日記 第365号 進化生物学と経済学とセックスと暴力とブックガイド

●『種の起源』Amazon検索結果
https://amzn.to/3yQ2Axx

『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス
https://amzn.to/3wI34V3

『進化と人間行動』長谷川寿一、長谷川真理子
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 淘汰は群単位では起こらない。それぞれの種の中で、各個体が自分の繁殖の成功だけを目指している、というのが現代の進化生物学の基本である。これはとても簡単なことで、ある個体が自分の利益と種全体の利益のどちらかを優先しないといけない場面があったとして、後者の全体の利益を優先する個体は、どうあがいても数世代の間に滅びていくことになるからだ。個体は常に利己的でなければいけないのである。そして、種全体の繁栄という点で、淘汰圧はかからない。
 この生物(の本能)は種のことをまったく考えず、あたかも常に自分の遺伝子を同種内のプールで増やすためだけに競争し、進化していくということを実証的にはじめて見つけ出す萌芽となった研究は、日本の動物行動学の研究者によるものであった。

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 それは、私がドンタロウと名付けたオスの率いる、9頭の大人メス(内5頭は子持ち)、6頭の若オス(1〜4歳)、3頭の若メス、5頭の赤ん坊からなるグループでした。1962年5月31日午後2時、ドンカラ群と名付けたこのグループをいつものように歩いて見に行くと、ドンタロウが足から血を流しながら木の上で疲れ切った様子で威嚇の声をあげていたのです。その下では、7頭の離れオスのグループがメスたちに近づこうとしており、数頭のメスはすでに侵入者の側につき、なかにはプレゼンティング(発情したメスがオスに交尾を誘いかける行為)をしている者さえいました。
 それから数日間、オスたちの闘いが続き、結局7頭の侵入者のうちの1頭(エルノスケ)が勝利を収め、ドンタロウは追い出されたのです。若オスも父親と一緒に出ていき、他の離れオスも追い払われました。エルノスケを核とする典型的な単雄群になってしまったのです。
 7日目のことです。赤ん坊が1匹いなくなり、腹のあたりがざっくりと切れている赤ん坊もいました。そして、2ヵ月ほどの間に5頭の赤ん坊がすべて消え、赤ん坊を失った母親はみな発情して6カ月後に子供を産んだのです。
 初めは頭の中が混乱しました。しかし、オスが赤ん坊を抱いたメスを攻撃し、赤ん坊が全滅し、やがてメスが発情してオスと交尾し、子供を産むという一連の流れを見ているうちに、これは因果関係があると思わざるを得なくなったのです。何か大変なことを観察しつつある。次はどうなるんだろう。単雄群の社会維持の秘密が今明らかになりつつあるのだと、必死で観察を続けました。

●「サルの森にて」杉山幸丸(京都大学名誉教授、東海学園大学教授)
http://brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb/no31/index.html
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 それまで、種の繁栄のために生物たちは行動している、という牧歌的な生物観が生物学者の間でさえ信じられていたので、杉山教授の研究は、当初はただの異常行動として片付けられた。しかし、1970年代には、ライオンやイルカのような他の哺乳類でも同様の子殺しが頻繁に起こることが観察されることとなる。ハーレムを作る哺乳類では、オスが戦いに破れて他のオスにメスたちを奪われてしまうと、そこの群れにいた子どもたちは殺されてしまうのである。そして、こうした動物たちの行動は、前述の利己的な遺伝子の仮説により、よく説明されるのだ。
 現在は、すこし群淘汰ということもまた見直されているのだが、やはりそれは非常に限られたケースでしか起こらないと考えられている。種単位で生物の淘汰が起こる、ということが利己的な遺伝子により否定され、進化生物学の骨子が作られ、その後にまた見直されることとなった群淘汰について紹介することは、このメルマガ記事の範囲を超えるので、興味がある方は以下のWikipediaでも読むといいだろう。

●群選択
https://w.wiki/3cvc

●Group selection
https://en.wikipedia.org/wiki/Group_selection

 さて、利己的な遺伝子が大筋では如何に正しいかは、このメルマガ読者は痛いほどよくわかっているだろう。恋愛工学で我々が研究してきた女性たちの本能、そして、本能に突き動かされる行動は、この利己的な遺伝子の進化生物学から導かれるものと大変に整合的であるからだ。
 また、大企業に務め、ある程度まで昇進した人なら誰もがわかると思うのだが、ある程度以上行くと、社員の仕事のほとんどが社内政治である。社内での権力闘争なのである。誰も会社全体の利益など考えていない。
 現在の企業のコーポレートガバナンスも、あるいはアメリカや日本の民主主義という政治システムも、このようにみんなが利己的に振る舞い、誰も全体の利益を考えていなくても、なんとか全体が上手くいくように作られているのだ。だからこそ、こうした株式会社や民主主義というシステムをたまたま採用した国が、これほど繁栄することになったのであろう。

 毎日、社内政治に多大な時間を費やしている大企業に比べて、オーナー経営者という絶対的な権力者がすべてを決定するベンチャー企業は、時として驚くほどのスピードで成長し成功していく。日本のコロナ対策のグダグダを見ていれば、民主主義というものが、どれほど効率の悪いシステムかというのは嫌というほどわかる。
 そして、こうした民主主義国の間隙を突いて、一気に急成長し、経済力でもアメリカを抜かすかもしれない、というところまで来たのが、共産党独裁と自由市場経済の組み合わせで繁栄してきた中国である。前置きは長くなったが、その中国が変調し始めてきたのかもしれない、というのが今週号のテーマである。
  まずは、中国株に関して読者からの質問がいくつかあるので、紹介しよう。

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- 中国版Uberのディディに何が起こっているのですか

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2.今週のマーケット

●中国共産党は力をつけすぎた中国巨大IT企業をつぶしたいのか(金融日記 Weekly 2021/7/2-2021/7/9)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52191000.html

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3.ブログではいえないお店

- 過密都市の香港の地鶏は割と美味しい

 香港というのはご存知のように超過密都市でして、食べ物はほぼすべて輸入しており、そのおかげで関税などなく世界中から美味しいものがわんさか入ってきて、東京もすごいですが、こちらもなかなかのグルメ都市です。それで、狭い香港に畜産なんかないと思っていたのですが、これが意外とあるのです。ビーフは世界中から当然のように関税なしで輸入しているので、アメリカ産やオーストラリア産はもちろんのこと、高い日本の和牛も食べれるのですが、ローカルの香港ビーフというのもあり、これがなかなか美味しいのです。

★サーフィンに行ったらビーチに黒毛牛がいました。これがそうかはわからないのですが、香港ローカルビーフもなかなか美味しいです。
https://www.instagram.com/p/CFmA4LJDSFc/

 香港ローカルビーフは別の機会に紹介するのですが、今回は香港ローカルチキンのほうを紹介したいと思います。熟成させるビーフと違って、チキンは鮮度も大切なんで、香港の良いレストランに行くと、ニューテリトリーという上の方のあまり開発されていないエリアで飼育されたチキンがよく出てきます。先日行ったレストランでは、このチキンの塩釜焼きが大変に美味しかったので、紹介したいと思います。

★しっとりとした香港地鶏の塩釜焼き。これはこのお店の名物料理のチキンライスになります。
https://www.instagram.com/p/CQBdt5BBhPW/

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4.藤沢数希の身もフタもない人生相談

- 所長のブログのサーバの費用はいくらぐらいですか

藤沢所長、こんばんは!
所長のブログのサーバの費用は毎月どのくらいなのでしょうか?
長年続けてらっしゃるのでそれなりの額になっているのではないかと思い質問させて頂きました。

- 藤沢数希の回答

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