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2018年に第二次安倍政権下で公表された自民党の改憲案「たたき台素案」によると、自民党は従来の憲法9条に以下の条文を書き込んで、自衛隊を明記するとしています。
ちなみに、憲法9条の本来の条文は以下の通りです。
憲法9条
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
自民党はこれに以下の条文を書き加えて、戦争放棄や武力の不保持を台無しにしようというわけです。
憲法9条の2
1 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
2 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
なぜ、このように自衛隊の存在を憲法9条に書き込むと、9条全体の趣旨が損なわれるのか。
第1に、軍事力行使に対して自衛隊違憲論がかけてきた立憲的な歯止め(大陸間弾道弾や地上攻撃ミサイルなどの攻撃的な武器は持たない、防衛予算は抑制的にするなど)がはずされてしまいます。
これまで戦力を持たないとされた9条に違反していないと言いぬけするために、自衛隊は「必要最小限度の実力」でしかあってはならないとされてきたのに、その歯止めさえなくなるのです。
まさに、岸田政権が狙っている敵基地攻撃能力具備や軍事費のGDP2%突破などやりたい放題です。
「必要な自衛の措置」を取れるのですから、核兵器でさえ必要という事にして、憲法上はもう日本が製造・保持できない理由はなくなります。
第2に、法学的には、9条の2によって従来の9条は自衛隊に及ばなくなったと政府が主張することが可能になるのが大問題です。
法の世界では、後法(9条の2)が前法(9条1項、2項)より優先されるのは当然です。
それは、加憲した後法によって9条全体が書き換えられたのと同じ効果を持つからです。つまり戦争放棄、戦力不保持なども意味がなくなるし、集団的自衛権も限定的でなくなり歯止めがなくなるのです。
戦力を持たないという規定が有効だからこそ、アメリカが戦争で攻められたときに日本の自衛隊がこれを守るという集団的自衛権は日本の自衛と存立が危ない緊急時だけ行使できるというように、安倍政権は安保法制でも限定をつけざるを得ませんでした。
しかし、真正面から自衛隊が憲法上の存在ということになれば、安保法制はさらに改定されて、集団的自衛権が無限定となり、とにかくアメリカが戦争状態になったら日本も参戦するということになりかねないのです。
第3に、改憲の国民投票で自衛隊に国民の過半数の支持が示されれば、政府はその「期待に応える」として、自衛隊の活動範囲を広げ、防衛費を増やし、軍需産業を育成し、武器輸出を推進し、自衛官の募集を強化し、国防意識を教育現場で強制するなどして、太平洋戦争時のように 「国防国家」へと進みやすくなります。
第4に、「国防」という価値を憲法が認めることにより、それが人権を制約する根拠である「公共の福祉」の内容であるとされ、徴兵制など、国防目的の人権制約ができるでしょう。
もともと、基本的人権は他者の権利を侵害しない限りで保障されるという意味で、人権と人権の調整原理である「公共の福祉」に反しない限り保障される、と規定されています。
しかし、自衛隊が憲法上の存在となればその存立・維持も憲法上の要請となりますから、自衛隊員募集のために住民票などの個人情報を国が利用することも、プライバシーに対する公共の福祉からの憲法上の制約となるでしょう。
さらには、徴兵制も、職業選択の自由などに対する公共の福祉からの制約であり、合憲であるとされる可能性が高まります。
ちなみに、もともとはリベラル左派と目された人々から、新9条論といってやはり自衛隊を憲法に明記した方がいいのだ、そのことによって自衛隊を「立憲的」に制御できるのだという珍説が披露され、一時ブームになりました。
しかし、実際には存在しているけれども憲法に明記されていない政府機関の方が圧倒的に多いのはご存じですか?
憲法上の存在であるのは衆議院・参議院・内閣・裁判所・最高裁判所・会計検査院などくらいで、他の国の機関は例えば防衛省など全部法律で定められた存在です。
ですから、自衛隊をコントロールしたいのであれば自衛隊法を改正してちゃんと規定すればいいだけのこと。
自衛隊が憲法に書き込まれれば安全な存在にできて文民統制できるだなんておためごかしの空論ですし、自衛隊が憲法9条に明記された存在になることで公然化することの弊害の方が比較にならないほど大きいのです。
新9条論に反対する。立憲主義の理想は達成できず、危険な改憲に利用されるに決まっていて非現実的。
自民党の改憲4項目では良くも悪くも緊急事態条項という、ナチスドイツの国家緊急権や絶対的天皇制下の戒厳令や緊急勅令に類する危険な条文が取り上げられがちです。
しかし、ウクライナ戦争を受けて軍事国家に進もうとしている日本で、唯一の歯止めになっているのはすべての戦争と戦力保持を禁止している憲法9条だけなのです。
そのダムが決壊すれば、私たちが押し流され、かえって戦争の危機が目の前に押し寄せるのは必定です。
第一次安倍政権の時の「九条の会」のあの市民運動の盛り上がりが今こそ必要です。
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山尾志桜里氏の「立憲的改憲論」=新9条論に反対する。これは「敵の土俵」に乗る超危ない玉砕戦術。
自民党が「立憲主義の観点から憲法9条にわかりやすく自衛隊を明記すべき」。新9条論が利用されている。
憲法9条2項がなければ、日本はアフガン・イラク・湾岸・ベトナム・朝鮮戦争に本格的に参戦していた。
安倍・菅と強面の総理が続いた後、優柔不断な岸田政権が誕生したが、これが安倍元首相の傀儡政権。
柔和なイメージで高支持率を維持して、それを背景にウクライナ戦争を利用して改憲。
今のところ、日本の有権者がまんまと騙されているようで、歯ぎしりしてしまいます。
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岸田首相は憲法記念日の3日、東京都内で開かれた改憲派の集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、自衛隊の明記など同党が掲げる改憲案4項目について「いずれも極めて現代的な課題であり、早期の実現が求められる」と述べ、改憲への意欲を強調した。
改憲案4項目は同党が2018年に「たたき台素案」としてまとめたもので、〈1〉自衛隊の根拠規定の明記〈2〉緊急事態条項の創設〈3〉参院選の合区解消〈4〉教育の充実――からなる。
首相は「自衛隊は大規模災害や新型コロナに懸命に対応しており、国民から感謝され、支持されている。それにもかかわらず自衛隊を違憲とする声があることも事実だ」と述べ、根拠規定の明記で、自衛隊の合憲性をより明確にすべきだとの考えをにじませた。
自民案は戦争放棄や戦力不保持を定めた9条は維持し、「9条の2」を新設して自衛隊の保持を明記するとしている。
また、首相は「新型コロナへの対応、ロシアによるウクライナ侵略を受け、緊急事態への備えに関心が高まっている」と述べ、大災害時の国会議員の任期延長など、緊急事態条項の議論を促した。
首相は昨年の就任当初は改憲の発言には慎重だったが、最近は徐々に積極的な発信も目立っている。自民は夏の参院選で勝利すれば、国会での改憲論議をさらに活発化させる方針だ。
憲法記念日に岸田総理「時代にそぐわない部分 憲法改正すべき」…改憲反対派も集会「9条 戦後最大の危機」
配信
TBS NEWS DIG Powered by JNN
憲法記念日となる3日、岸田総理は憲法について「時代にそぐわない部分、不足している部分については改正していくべき」と訴えました。 岸田総理は、都内で行われたシンポジウムに自民党総裁としてビデオメッセージを寄せました。
自民党 岸田文雄総裁 「現行憲法も施行から75年が経過し、時代にそぐわない部分、そして不足している部分については改正していくべきではないか」
憲法への自衛隊の明記や緊急時の内閣の権限強化など自民党が掲げる改憲4項目については「いずれも極めて現代的な課題で早期の実現が求められる」と述べました。
先月のJNNの世論調査では、憲法を改正すべきとした人が53%と、改正すべきでないの32%を上回りました。
20代 「ウクライナのこととか、他人ごとではないなと。日本で言っても憲法の問題も浮き彫りになってきたり」
一方、都内では、憲法改正に反対する集会も開かれました。
立憲民主党 奥野総一郎衆院議員 「ロシアよりも許せないのが今の与党であります。ウクライナの問題をダシにして、改憲に突き進もうという姿勢を、私は許すわけにはいかない」
集会の参加者は「憲法9条は戦後最大の危機を迎えている」などと訴えたほか、政府・与党で進むいわゆる敵基地攻撃能力の保有の議論にも批判の声があがりました。
TBSテレビ
9条への自衛隊明記
安倍晋三首相(自民党総裁)が憲法記念日に提起した内容に沿い「9条の2」を新設して自衛隊の存在を明記した。政府は自衛隊を合憲と解釈してきたが、違憲論を解消することを目的とした。
憲法に自衛隊の存在を明記しても自衛隊の権限と役割に変更がないことを明確にするため、戦争放棄をうたった9条1項、戦力不保持と交戦権を否定した2項とその解釈を維持。9条とは別条文となる「9条の2」を設け、既存の9条は一切変更しないことを強調した。
自民党の石破茂元幹事長らが強く主張した2項削除論は、集団的自衛権をフルスペック(際限のない形)で認めることにつながりかねないと判断。「公明党の理解が得られず現実的でない」(党幹部)として、条文素案に採用しなかった。
「加憲」を掲げる公明党に配慮しているが、公明党は拙速な議論に慎重な姿勢を崩しておらず、まだ与党協議は始まっていない。野党の立憲民主党などは憲法違反だとする安全保障関連法を前提とした9条改正に反対している。
緊急事態条項の創設
緊急事態を「大地震その他の異常かつ大規模な災害」と定義した。ただ、戦争などの人災は公明党や野党の慎重論を踏まえ、定義から省いている。国会が機能しない場合、内閣が政令を出して一時的に権限を集中する条文を新設する。国政選挙が実施できないときは、衆参両院で出席議員の3分の2以上が賛成した場合、国会議員の任期を延長する。
参院選「合区」解消
47条と92条を改正し、参院選の「合区」解消と都道府県単位の選挙制度の維持を図る。衆参両院の選挙区と定数は、現行憲法の人口比例による基準とは別に、「地域的な一体性」などを「総合的に勘案」して定めるとした。特に参院選について「改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる」と明記した。
ただ、公明党は参院選を全国11ブロックに分ける大選挙区制を提唱し、自民案に否定的だ。「一票の価値の平等」を損ねる恐れがあるとして、他党からは異論も出ている。
教育の充実
自民党の素案では「経済的なハンディが教育に反映しないように、誰でも教育の機会が得られるようにする」(細田博之・自民党憲法改正推進本部長)ことを主眼に26条を改正し、国が教育環境を整備する努力義務を規定する。89条も改め私学助成の合憲性を明確にする。
ただ、日本維新の会が求める幼児教育から大学までの教育無償化は、必要財源を確保するのが困難として明記を見送った。維新は自民案が現状のままなら反対する考え。立憲民主党などの野党は改憲する必要性はないとの立場だ。
(原川貴郎)
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