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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

中国疾病対策医療センター・米国立衛生研究所「若者の感染者は少ない」vs日本政府の専門家会議「若者が感染拡大のもと?根拠はないが説明がつかない」。専門家まで安倍首相への忖度を始めたら世も末だ。

2020年03月04日 | 自公政権の拙劣なコロナ対策

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 フランスの国際通信社AFPの2020年3月3日つけ「【解説】新型コロナウイルス、死亡リスクが高いのは誰か」という記事には、新型コロナウィルスの感染率についてこう書いてあります。

『中国疾病対策予防センター(CCDC)の週報によると、臨床検査によって2月中旬の時点で感染が確認された4万4700人については、60歳以上が80%以上を占めていた。またその半数は70歳以上だったという。

 中国以外の国でも同じような結果が報告されている。イタリアでの死者の大半は80代で、60歳未満は一人もいなかった。また、死亡した人の複数に心臓疾患があったのだ。

 中国の研究では、男性の致死率が女性の2~3倍に上っていることも分かっている。だが、この傾向と中国での男性の喫煙率の高さ、さらにはホルモンなどの生物学的な要因が関係しているかは今のところ不明だ。

■子どもの感染者

 さらに中国の研究で目立つのは、子どもの感染者がほぼいないことだ。

 10~19歳の感染者は1%にとどまっており、死者はいない。10歳未満では感染者は1%に届かず、十代と同様に死亡例の報告はない。

 米国立衛生研究所(US National Institute of Health)フォガーティ国際センター(Fogarty International Center)の疫学専門家セシル・ビブー(Cecile Viboud)氏はAFPの取材に対し、

「20歳未満の感染者が少ない理由について調査を進めている」

と述べた。』

 つまり、新型コロナウィルスについて、若者は重症化率はもちろんのこと、そもそも感染率が低いのです。

China CDC Weekly COVID-19.pdf
https://www.docdroid.net/XyuMmdb/china-cdc-weekly-covid-19.pdf

 

 

 ところが、2020年2月29日、安倍首相は全国の小中高等学校に一斉休校を求め、全く根拠がないと猛批判を浴びています。

 それを受けて、3月2日、政府の専門家会議は北海道の新型コロナウィルスについて、若者は感染しても症状が軽い人が多く、感染に気づかないまま重症化しやすい高齢者らに感染させている可能性があるとの見解を示しました。

 

 専門家会議の押谷仁・東北大学教授は記者会見で、

「若年層で感染が大きく広がっているエビデンス(根拠)はないが、そうでないと説明がつかない」

と話しました。 

 およそ、政府の専門家とか医者とか言われる人が、エビデンス(根拠)はないけどそう思う、ってカンみたいなことで記者会見したらダメでしょう。

 同教授は、都市部の感染リスクの高い場所に集まった若者の間で感染が広がり、症状の軽いまま道内の別の地域に移動して全域に感染が拡大したと分析するのですが、それは全くの推論です。

 北海道を旅して移動しているのは、むしろこの時期学校のあった若者世代ではなく、もっと上の世代のはずです。

 どうして、若者が移動して感染を拡大させたのでなければ、何の説明がつかないのか、読んでいてもちっともわかりません。

 

 

 厚労省のホームページの、専門家会議からのメッセージの末尾にも、突然

6.全国の若者の皆さんへのお願い

10代、20代、30代の皆さん。
若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。
でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、
重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。
皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、
多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。

という記載があるのですが、症状が軽いまま感染を広めてしまう可能性は全世代にあるのに、なぜ10~30代の人だけに呼びかけをしたのか、唐突すぎて全然意味が分かりません。

 年金問題でも若者と高齢者を対立させる世代間格差を持ち出すネオリベラリストが多いのですが、ここでも若者を悪者にして、安倍首相をかばっているだけのような気がしてなりません。

厚労省が、専門家会議が言った事はそのまま無批判にマスコミが垂れ流してしまうというのに。

 

 

エビデンスはないけどこう思うと専門家が言い出したら、それって安倍首相と同じことでしょう。
 
専門家の死です。
 
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2020/2/28 日経グッデイ
中国の新型コロナウイルス感染症患者の年代別患者数と致命率。分析対象は、中国で新型コロナウイルス感染が確認された確定例4万4672人。30~60代の患者が8割を占め、10代までの若年層は患者数、致命率ともに低かった。(データ出典:China CDC Weekly 2020.)
中国の新型コロナウイルス感染症患者の年代別患者数と致命率。分析対象は、中国で新型コロナウイルス感染が確認された確定例4万4672人。30~60代の患者が8割を占め、10代までの若年層は患者数、致命率ともに低かった。(データ出典:China CDC Weekly 2020.)
日経Gooday(グッデイ)
 

世界中を揺るがせている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、2月17日、これまでで最大規模となる7万人超の患者の分析データを中国疾病対策予防センター(中国CDC)が発表しました[注1]。新型コロナウイルスの感染が確定した患者の8割は軽症で、致命率(患者数に対する死亡者数の割合)は2.3%、死亡者の多くが60歳以上の患者か、併存疾患(心血管疾患、高血圧、糖尿病など)のある患者でした。

症状のない感染者を含む7万2314人のデータを分析

今回データを取りまとめたのは、中国CDCの新型コロナウイルス肺炎に対する緊急対応疫学チームです。同チームは、2020年2月11日までに中国で報告された、新型コロナウイルス感染症の確定例、疑い例、臨床診断例、無症状感染者あわせて7万2314人の特徴を分析しました。

中国では、新型コロナウイルス感染症が届け出義務のある感染症に指定されたため、全例が速やかにInfectious Disease Information Systemに報告されており、感染経路の調査も行われています。今回分析対象になった7万2314人の患者のうち、4万4672人(62%)が確定例で、1万6186人(22%)が疑い例、1万567人(15%)が臨床診断例、889人(1.2%)は無症候感染者でした。それぞれの定義は以下の通りです。

【確定例】:のどの奥から取った標本からコロナウイルスの遺伝子が検出された患者
【疑い例】:臨床症状と感染者との接触歴に基づいて診断された患者
【臨床診断例】:疑い例で肺の検査画像がコロナウイルスによる肺炎の特徴を示した患者(2月13日から湖北省でのみ用いられている定義)
【無症候感染者】:標本からウイルスの遺伝子が検出されたが、COVID-19の症状は1つも見られなかった患者

無症候感染者の発症日はウイルス陽性が確認された日とし、それ以外の患者については、本人が発熱または咳が出始めたと記憶している日を発症日としました。

患者の8割が30~60代で小児は少ない

確定例4 万4672人について、さらに詳しく分析しました。患者の年齢層の中心は30代~60代で、78%を占めていました。若年層の患者は少なく、10歳未満は0.9%、10代は1.2%、20代は8%にとどまりました。70代以上の高齢者は12%でした。男女比はほぼ同じ(51%が男性)でした。

 

確定例のうち、1023人が死亡しており、致命率は2.3%でした。10歳未満の子どもに死者はおらず、30代までの致命率も0.2%と低率でしたが、40歳以上では、年齢上昇と共に致命率も上昇し、60代で3.6%、70代では8%、80代以上では15%でした。

[注1]The Novel Coronavirus Pneumonia Emergency Response Epidemiology Team. The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 Novel Coronavirus Diseases (COVID-19) - China, 2020[J]. China CDC Weekly 2020.

重症度は以下の3段階に分類しました。確定例のうち、軽症が81%を占め、重症は14%、重篤は5%でした。

【軽症】:肺炎ではない患者、または、軽症肺炎の患者 →81%
【重症】:呼吸困難、血液中の酸素レベルの低下や、肺の検査画像において肺炎の急速な進行が見られた患者など →14%
【重篤】:肺での呼吸がうまくいかない呼吸不全が発生、感染症による炎症が全身に及び低血圧が持続する敗血性ショックが発生、多臓器不全が発生 →5%

軽症と重症の患者に死亡はみられませんでしたが、重篤だった患者の致命率は非常に高く(49%)、ほぼ2人に1人が死亡していました。

併存疾患がなかった患者の致命率は0.9%で、併存疾患のある患者、特に心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、脳卒中など)を抱えていた患者の致命率は10.5%と高くなっていました。

(データ出典:China CDC Weekly 2020.)

新規発症者の数は2月1日にピークを越えたが…

新型コロナウイルス感染症の流行は、たった30日で武漢市のある湖北省から中国全土に広がっていました。患者が湖北省外に初めて見つかったのは2020年1月19日で、2020年2月11日までに、中国国内の31省のすべて(1386県)で患者が報告されました。しかし、患者のほとんど(確定例の86%)は武漢市在住者、または発症前に武漢市を訪問していた人々でした。

新型コロナウイルス感染が確定した患者の9割近くが武漢市在住、または発症前に武漢市を訪問していました。(C)urfl-123RF

縦軸を発症者数、横軸を自己申告された発症日として、7万2314人全員のデータをプロットし、流行曲線を描いたところ、発症者増加のピークは2月1日で、それ以降は1日あたりの発症者が減少していたことが明らかになりました。確定例についても同様に行ったところ、発症者増加のピークは1月23~26日で、それ以降2月11日にかけて低下していました。

 

研究チームはさらに、医療従事者(医師と看護師だけでなく、あらゆる医療施設の全従業員とした)の感染について、詳しく分析しました。医療従事者の確定例、疑い例、臨床診断例、無症状患者は、422施設に3019人報告され、うち1716人が確定例で、5人が死亡していました。致命率は0.3%でした。また、流行曲線における発症のピークは2月1日でした。

研究者たちは、多くの住民が、春節の長期休暇から戻って日常活動を再開したことから、「中国は国内での流行の再発に注意を払う必要がある」と述べています。

(図版制作:増田真一)

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday2020年2月21日付記事を再構成]

 

 


【解説】新型コロナウイルス、死亡リスクが高いのは誰か

2020年3月3日 9:24 発信地:パリ/フランス [ フランス ヨーロッパ 中国 中国・台湾 ]

「【解説】新型コロナウイルス、死亡リスクが高いのは誰か」の画像検索結果


中国・武漢の病院で、新型コロナウイルス感染者の治療に当たる医師ら(2020年3月1日撮影)。(c) AFP

【3月3日 AFP】新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」が世界的な広がりをみせるなか、ウイルス感染での死亡リスクが高いケースについて関心が高まっている──。AFPの取材に複数の専門家らが応じた。現状においては、正確な致死率は判明していない。

 これまでに報告されているデータでは、心臓の疾患や高血圧などがある高齢者での死亡リスクが著しく高くなることが示されている。対象となったデータには、中国の新型ウイルス感染者7万2000人以上を調べた調査結果も含まれている。

 中国疾病対策予防センター(CCDC)の週報によると、臨床検査によって2月中旬の時点で感染が確認された4万4700人については、60歳以上が80%以上を占めていた。またその半数は70歳以上だったという。

 中国以外の国でも同じような結果が報告されている。イタリアでの死者の大半は80代で、60歳未満は一人もいなかった。また、死亡した人の複数に心臓疾患があったのだ。

 中国の研究では、男性の致死率が女性の2~3倍に上っていることも分かっている。だが、この傾向と中国での男性の喫煙率の高さ、さらにはホルモンなどの生物学的な要因が関係しているかは今のところ不明だ。

■子どもの感染者

 さらに中国の研究で目立つのは、子どもの感染者がほぼいないことだ。

 10~19歳の感染者は1%にとどまっており、死者はいない。10歳未満では感染者は1%に届かず、十代と同様に死亡例の報告はない。

 米国立衛生研究所(US National Institute of Health)フォガーティ国際センター(Fogarty International Center)の疫学専門家セシル・ビブー(Cecile Viboud)氏はAFPの取材に対し、「20歳未満の感染者が少ない理由について調査を進めている」と述べた。

 また、カナダ・トロント大学(University of Toronto)の疫学専門家デビッド・フィスマン(David Fisman)氏も、子どもの感染者数が少ないことを不可解に感じているという。

 電子メールで取材に応じた同氏は、「子どもの感染者はどこに行ったのか」「これは重要な部分だ…。子どもは軽症なため検査されていない可能性がある」と指摘する。

 2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)でも若者の感染率は低かった。中国広東(Guangdong)省で発生したSARSもコロナウイルス感染症で感染者は8096人、死者は774人に上った。

医療従事者の死

 若い世代にも犠牲者が出ている。新型コロナウイルス感染症の拡大に警鐘を鳴らした武漢(Wuhan)の眼科医、李文亮(Li Wenliang)医師(34)が2月上旬に死去している他、20代の医療従事者らも複数命を落としている。これら医療従事者の死をめぐっては、繰り返しウイルスにさらされたことや極度の疲労がその背景にあるとの見方もある。

 事実、ソーシャルネットワークに投稿された複数の動画からは、看護師や医師が患者に対応しきれずパニック状態に陥っている様子も見て取れる。

 香港大学(University of Hong Kong)のジョン・ニコルス(Jonh Nichols)教授(病理学)はAFPの取材に対し、「若い医療従事者は自らの経験および訓練の水準を超えた事態への対処が求められ、そこで感染している可能性がある」と指摘する。

■致死率の推移

 これまでに明らかになっている死者数に基づくと、新型ウイルスによる致死率は3.4%だと推測できる。だが、感染しているにもかかわらず検出されていないケースが、中国ならびに諸外国で最大3分の2に上るとする研究結果が複数あり、これらを考慮すると、感染による致死率はさらに低くなる可能性がある。

 豪メルボルン大学(University of Melbourne)ピーター・ドハーティ感染免疫研究所(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity)のシャロン・ルウィン(Sharon Lewin)所長は、「現時点では、実際の致死率はよく分かっていない」「約2%と推定される」と豪テレビで述べている。

 SARSでは、感染者10人にほぼ1人の割合で死者が出た。だが、感染後しばらく経過してから命を落とすケースが目立ったこともあり、当初発表された致死率は過小評価されていたことが後に明らかになっている。

 ただ、2009年に流行したH1N1型インフルエンザでは逆の現象が起こった。ビボー氏は、「アウトブレイクから数週間以内に、その症状が重症肺炎からインフルエンザの一般的な症状に移ったため、致死率は当初の10分の1、そして100分の1にまで下がった」と説明している。

 同氏はまた、現時点で推定されている新型コロナウイルスの致死率について、それが極端に高かったり低かったりすることはないとしながら、おそらく2%を下回ることになるとの考えを示した。

 季節性インフルエンザの平均致死率は約0.1%だが、感染者が多いため、世界の死者数は毎年最大で40万人に上っている。

 CCDCの研究では、確認されているCOVID-19の症例の80%以上について「軽症」だったことが示されている。(c)AFP/Marlowe HOOD

 
 

一斉休校は「科学より政治」の悪い例 クルーズ船対応の失敗を告発した岩田教授に聞く

毎日新聞2020年2月29日 18時28分(最終更新 3月4日 10時43分)

 新型コロナウイルスの感染者が多発したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の内部に入り、「カオス状態」と告発した神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授(48)。生々しい内容に賛否両論が巻き起こり、教授は2日後に動画を削除した。しかし、陰性とされて下船した乗客がその後に陽性となるケースが国内外で相次ぎ、教授の警告どおり船が「ウイルス培養器」と化していたことが明らかになった。我々はどこで間違ったのか。政府や自治体が取るべき対策は何か。2月27~29日、岩田教授に電話とメールで聞いた。【國枝すみれ/統合デジタル取材センター】

「ゴールをはっきりさせないと政策の成否が判然としない」
 ――安倍晋三首相が全国の小中高校に3月2日から春休みまでの臨時休校を要請しました。これは感染拡大を防ぐために有効でしょうか。

 ◆小児の発症、重症化が少ない中で、学校だけ休むのは合理的ではありません。小児患者が発生している北海道は理解できなくもありませんが。

 休校を正当化するならば、その方策がもたらすゴールをはっきりさせる必要があります。休校で感染をゼロにするとか、1日何人まで減らすとか。そういう目標設定がちゃんとあり、その背後に根拠があれば、事後的に政策の成否が分かります。それなしに、ただ「やる」と言われても、その成否は事後的に判然としません。クルーズ船のときと同じ、「みんながんばったね」が残るだけです。ゴールが見えず、ただ場当たり的に政治的判断がなされており、「科学よりも政治」という、またしても悪い前例となってしまいました。


記者会見で新型コロナウイルス対策として全国の小学校、中学校、高校、特別支援学校に対する臨時休校の要請などについて説明する安倍晋三首相=首相官邸で2020年2月29日午後6時11分、川田雅浩撮影
「クルーズ船でしくじり。公開する情報が不足」
 ――日本政府はどこでボタンをかけ違えたのでしょうか。

 ◆ボタンをかけ違えたとは思いません。日本は細かい失敗(エラー)はたくさんしましたが、間違った道筋を選んではいない。日本の感染者数は、クルーズ船での感染者を除けば、イタリアや韓国よりも少ないのです。日本はおおむね妥当な対策を取ってきたのです。しかし、クルーズ船でしくじりました。クルーズ船の感染者が東京、千葉、神奈川の病院に搬入され、新たな感染者の受け入れ能力を下げています。

 それ以外の問題は公開する情報の不足です。米国の疾病対策センター(CDC)には広報部があり、感染症情報を国民に分かりやすく効果的に広報しますが、日本政府にそういう部署がない。これでは「心配するな」と言われても、国民の不安は募ると思います。

「入国禁止はもろ刃の剣」
 ――米国は中国滞在者の入国禁止に踏み切りましたが、日本はしなかった。2月1日に武漢市のある湖北省に滞在歴がある外国人の入国を拒否しただけです(2月12日に浙江省も禁止)。中国全土に感染が拡大していたのに、これは間違いだったのではないですか?

 ◆入国禁止は一つ検討に値します。しかし、もろ刃の剣です。人や物が入ってこなくなり、中国で作っている医薬品も入ってこなくなる。それによって死ぬ人も出てくるかもしれない。そういったマイナス面と感染症のリスクを考えなくてはいけない。日本が1月の段階で中国からの入国禁止を決めるのは難しかったと思います。米国やロシア、北朝鮮などは比較的早期に入国禁止に踏み切りましたが、他の国も判断が難しかったから、対応が割れたのです。

 水際作戦には、いくつか種類があります。空港などで熱を測る、問診票を提出させるのは、ほとんど効果はありません。次に検疫。クルーズ船を留め置いたり、武漢からのチャーター便帰国者をホテルで14日間隔離したりするのがこの例です。

 最後が国境封鎖ですが、これは大変な覚悟がいります。国境封鎖に抵抗が薄い人も北海道封鎖や東京訪問禁止となったら、どうでしょうか。中国は武漢を封鎖しました。ある意味、このコミュニティー内の人々を感染リスクにさらすわけです。クルーズ船と同じですね。閉じ込められる恐怖、感染する危険の中にずっと留め置かれる恐怖。イタリアでも感染拡大地域で外出禁止令などが出されています。日本でもそういう判断をしなくてはいけない時がくるかもしれません。


クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した乗客らを乗せて出発するバス=横浜市鶴見区で2020年2月19日午後3時22分、滝川大貴撮影(画像の一部を加工しています)
クルーズ船は「上下水道混じった水を飲んだのを見た感じ」
 ――ダイヤモンド・プリンセス号ですが、最大の問題はレッドゾーン(感染危険がある区域)とグリーンゾーン(安全区域)の分離が完全でなかった点ですか?

 ◆レッドゾーンとグリーンゾーンが明確に分かれていないということは、いつどこにウイルスがいるのか区別できないということです。

 船内に入った途端に驚きました。専門家じゃない人にその衝撃を伝えるためには、どのように説明すれば分かりやすいのか、とよく考えるのですが……。例えば、上下水道が混じっていて、トイレの汚水が混入した水をみんながリラックスして飲んでいる場面を見てしまった、とでも言えばいいでしょうか?

 ――非常に分かりやすいです……。80人以上の乗員が感染していることもショックです。彼らが乗客に食事などを配っていたわけですよね。

 ◆発熱した乗員は隔離されることになっていましたが、医務室まで歩いてきた乗員もいました。英語の問題もあったと思います。日本語が通じない乗員に対し、きちんとメッセージを伝えることができていなかったと思います。

専門家は「船に戻ってこなかった。怖かったからだと推測」

記者会見で新型コロナウイルス対策として全国の小学校、中学校、高校、特別支援学校に対する臨時休校の要請などについて説明し、国民に対し協力を呼びかけて頭を下げる安倍晋三首相=首相官邸で2020年2月29日午後6時19分、川田雅浩撮影
 ――岩田教授が18日に公開した告発動画に対し「感染症の専門家はいたのに、いないと言っている」など激しい反発がありました。

 ◆僕は「感染症の専門家がいなかった」とは言っていません。英語でいうと、イン・チャージ(拡大防止策を担当する)の感染症専門家がいなかった、と言ったのです。

 ダイヤモンド・プリンセス号には、国立感染症研究所の実地疫学専門家養成コース(FETP)の疫学チームや、日本環境感染学会の災害時感染制御支援チーム、国際医療福祉大学など、感染症の専門家たちが入りました。本来なら、疫学チームが船のどこで感染が発生し、何が原因かを分析し、環境感染学会に引き継ぎます。知恵を出し合い、感染拡大を防ぐ戦略をたて、それを実施すべきでした。しかし、権限は厚生労働省の職員にありました。FETPや環境感染学会は船に戻ってこなかった。(状況があまりに危険で感染が)怖かったからだと推測します。

 ――なぜ厚労省は専門家の助言を聞き入れなかったのですか?

 ◆ウイルスは見えないから危機感を共有できないのでしょう。ダイヤモンド・プリンセス号は乗員乗客3700人以上の大型クルーズ船で、高齢者が多く、オペレーションが難しかった部分もあるでしょう。

 下船させるか、させないかは難しい判断と思いますが、船内に残すと決めたからには2次感染を絶対に起こさないことを明確な目的(ミッション)に据えるべきでした。感染症は抑え込める時に抑え込まないと振り出しに戻ってしまいます。(長期の検疫について)人権の問題があると言いますが、我々は例えば結核患者がいたら完全隔離します。「外を歩きたい」と訴えられても、許しません。2次感染が起きたらさらに悲惨な結果になるからです。


新型肺炎の感染拡大のため、中国・武漢から日本人を乗せ到着したチャーター機の第5便=東京都大田区の羽田空港で2020年2月17日、竹内紀臣撮影
旧日本軍の「万歳突撃」「一致団結に価値。異論に耳を傾けない」
 ――2月25日の時点で、厚労省の職員や検疫官7人が感染しています。この問題で司令塔となるべき人々が感染していることにぞっとします。

 ◆(玉砕前提の)万歳突撃です。(旧日本軍の組織上の問題点を分析した名著)「失敗の本質」で指摘されたことの繰り返しです。一生懸命やっているとか、一致団結していることに価値を見いだし、異論や異説に耳を傾けない。いったん計画を作るとそれに固執し、代替案(プランB)を持たない。

 厚労省の方々はきっと不眠不休だと思います。しかし、そのように働き続ければ、睡眠不足でイライラして判断を誤る危険性が高まります。これは危機の時には決してやってはいけないことです。米国では感染症拡大時の危機管理が徹底していて、司令塔は交代し、休みます。要職についている人が感染することで国の戦略を作る力が減退します。

 ――感染防止策が取られた2月5日以降も、実際は船内で感染拡大していた可能性が強いですね。14日たった19日以降に下船者などに陽性が判明しているわけですから。

 ◆そうですね。下船時に陰性と判定され母国に戻った後で感染が判明したケースが、米国、オーストラリア、香港、英国、イスラエルなどで二十数件起きています。災害派遣医療チーム(DMAT)や災害派遣精神医療チーム(DPAT)の医師らも感染しました。乗員13人を加えると、少なくとも47人の感染が19日以降25日までに判明しています。

 ――14日間の検疫期間を終えたとして、日本政府は19日から陰性の乗客を下船させ、公共交通機関で家に帰しました。

 ◆厚労省は大丈夫と思っていたと思います。下船した日本人の感染が確認(注1)されて、都道府県から健康チェックの電話をいれる仕組みになりました。

 (注1)2月26日時点で日本でも4人が下船後に感染が確認された。

「厚労省に一斉に従うやり方はだめ。保健所ごとに違う方針必要」

新型コロナウイルスへの感染が確認された男性医師が勤務している済生会有田病院=和歌山県湯浅町で2020年2月14日午前9時56分、本社ヘリから幾島健太郎撮影
 ――今後できることは何でしょう。まず政府や地方自治体はどういった対策を取るべきでしょうか?

 ◆感染検査キットのキャパがどれぐらいあり、検査がどれぐらい行われているのか、検査をしないほうが良いのならその理由を積極的に公開すべきです。(注2)

 感染検査の総数とその中で何件が陽性だったのかが大切です。例えば、ある保健所で10人検査して3人が陽性だったら、検査を100件に増やさないとだめかもしれません。逆に、10人検査して一人も陽性が出ない地域であれば、そこで検査を増やす必要はありません。感染が増え始めたらそこに資源を投入するのです。つまり、保健所ごとに違う方針を取る必要がある。厚労省に指示を仰ぐとか、その指示に一斉に従うなどのやり方ではだめなのです。保健所が自ら判断する必要があります。

(注2)加藤勝信厚労相は2月26日、1日最大3800件ほどの検査能力があるのに、実際の検査数は1日平均900件程度にとどまっている、と明らかにした。

済生会有田病院の医師感染公表は正しかった
 ――感染者情報の公開はどのレベルまでやるのが適当だと思われますか?

 ◆線引きは難しいですが、その情報を流すことで感染拡大の防止に役立つ利益があるかどうかを一つの判断基準とすべきでしょう。例えば、和歌山県が済生会有田病院の医師の感染を発表したのは正しかったと思います。そのことで、病院にかかっていた人で体調が悪い人が申し出ることができたからです。感染者が出た銀行の支店名やタクシー会社を発表するのもいいことです。しかし、東京で感染者が通勤に使った地下鉄路線を発表しても混乱を招くでしょう。個人バッシングにつながらないように注意しながら、市町村レベルで情報を出すべきだと思います。

感染者対策ができない病院は最初から「無理」と表明を
 ――病院はどうでしょうか。全国の病院で感染者を受け入れるとなると、防護服の着用方法から区域管理までマスターしなければなりません。

 ◆できない病院は最初から「無理です」と白旗を揚げた方がいい。感染者は感染症対策が得意な病院にまかせ、そのかわり普通の病人を肩代わりするのです。肩代わりは重要な役割です。無理なのに感染者を引き受けると、ダイヤモンド・プリンセス号と同じ状態になってしまいます。

 ――このウイルスの感染力はインフルエンザよりも強いのですか?

 ◆感染力の議論はあまり意味がないと思っています。感染力の定義は、1人が何人に感染させるかで決まりますが、それは環境や人々の行動によって変わってくる。例えば、同じウイルスでも、中国と東京では感染力が違うし、クルーズ船のような閉じられた場所では感染力が数倍に高まる。

強毒化の可能性は低いが封じ込めが難しい

国立感染症研究所が分離した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=同研究所提供
 ――確かにそうですね。我々が行動を変えればいい。でも、マスクが底を突きました。

 ◆せっけんと水できちんと手洗いすればウイルスは死にます。アルコール消毒液がないなら、「キッチンハイター」など次亜塩素酸ナトリウムが成分の家庭用漂白剤を薄めて使っても大丈夫です。いつも「プランB」を知っておくことです。

 ――ウイルスが強毒化する可能性はありますか?

 ◆ないとは言いませんが、可能性は低いと思います。ウイルスは一般的に弱毒化する傾向があります。ウイルスにとっては宿主を殺してしまっては困るからかもしれません。

 ――それならば、そんなに危険なのでしょうか?

 ◆致死率が約1割と高かったSARS(重症急性呼吸器症候群)や感染して短い時間で高熱が出るインフルエンザよりも、ある意味で危険です。封じ込めが難しいからです。感染者のなかには症状が軽い者がいて、歩き回ります。日本人は37・5度ぐらいの熱ではなかなか仕事を休みません。日本社会のエートス(特性)を突いた最悪のウイルスなのです。

「何カ月、何年続くか分からない。上手に手を抜くことが大事」
 ――どうすればいいのでしょうか?

 ◆重要なことは、政府も自治体も国民も、焦ってパニックに陥らないことです。いいかげんな情報やデマ、誇張にまどわされない。このウイルスに有効な治療薬はまだありませんし、特定の食品やサプリが効果的ということもありません。こういうときにわらにすがってはだめです。

 日本は感染症に弱い社会だと思います。何カ月、何年続くか分からないのだから、上手に手を抜くことが大事です。マラソンで最初の100メートルを全力で走っちゃだめなのと同じです。

 こういうときに大切なのはデータ解析です。それが次に何ができるか教えてくれます。新型コロナウイルスに関する論文が中国でたくさん出ているのに、日本からはあまり出ていない。中国ではこんなときでも現場と距離を置くリサーチ部門がデータ解析しているのです。日本は長年、もうけられそうな所に資源を集中することを繰り返していましたから、弱いのです。


新型コロナウイルスの感染拡大への懸念が強まり、日経平均株価の下落などを示すモニター=大阪市中央区で2020年2月25日午後3時42分、小出洋平撮影
「この問題を政治の道具にしてもいけません」
 ――映画館はがら空き、株価は暴落。感染を怖がるあまり経済が冷え込み、かえってマイナスだという世論もあります。

 ◆これは、経済的な利益か感染症対策か、という選択ではありません。感染症は封じ込めないとだめです。中国はいま封じ込めに全力を挙げています。克服すれば中国経済は立ち直ります。もし日本が感染を継続させれば、日本に観光客は来ないし、イベントも開けなくなる。日本の製品は買われなくなります。

 この問題を政治の道具にしてもいけません。私の動画に関して「野党と結託している」「日本の評判を傷つける」などと非難する人がいました。そうではありません。世界で日本の評価を上げるには情報公開が必要です。都合の悪いところもすべて公開することで信用される。隠せば信用は丸つぶれです。よいことしか言わないのであれば、北朝鮮のアナウンサーと同じです。大局的にみることが日本の国益と合致すると思います。

 ――2009年の豚インフルエンザH1N1のときは結局、封じ込めに失敗しました。このウイルスもそうなるのではないですか?

 ◆封じ込めに全力を挙げるべきです。もちろん最終的に封じ込められるかどうかは楽観論と悲観論の両方ありますが、現在、白旗を揚げている国は一つもありません。

いわた・けんたろう
 1971年、島根県生まれ。島根医大(現・島根大)卒業。ニューヨークのコロンビア大セントルークス・ルーズベルト病院やベス・イスラエル病院、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院などを経て、2008年から現職。


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検査は? (ゴメンテイター)
2020-03-05 01:36:42
相変わらず、検査には消極的な政権です。
感染者数を少なく見せてオリンピックの開催を強行したいのではないかとの疑惑があります。
しかし、このまま感染者数をごまかしていくと、収束宣言はどうするのでしょう。

感染者の増加が鈍ってきた。これが収束に向かっているかどうかの判断の根拠となるでしょう。
検査をしっかりとやらないと、こういう数字は出てこないんじゃないですか。

もっとも、どんな状態であっても5月中旬に収束宣言を出すと決めているのなら、検査は関係ないのでしょうが。
結局、すべてが「アンダーコントロール」なんでしょうか。

ところで安倍晋三は、緊急事態宣言をやりたがっていますね。1月末の、インフルエンザ以外でも発せられるようにすべきとの野党の提案を放っておいたのに、ここに来てあたかも自分の考えのように言い始めました。要注意です。ヒトラーの全権委任法と同様にできるような内容を含ませる可能性は、十分に考えられます。
対象、期間を限定させるものにしなければいけません。
Unknown (suterakuso)
2020-03-05 06:10:16
記事を読ませていただきながら、医学の専門家の言うことだから、感染やエビデンスという言葉の医学的な定義と一般の人が受け取るイメージとの違いがあるということには留意しておく必要があると思いました。例えば、医学的には感染と似た言葉で罹患という言葉があったり、(私は素人なのでこの説明で正しいか分かりませんが…例えばです)エビデンスとは医学的統計的に一定の数字を満たして医療行為を行う根拠となることとしてというような定義がありそうだったり、ということがありますよね。実際、この記事↓を見ると、

若者が感染拡大のもと?「根拠はないが、説明つかない」
https://www.asahi.com/articles/ASN327HCQN32ULBJ00S.html?iref=pc_ss_date
>専門家会議の押谷仁・東北大学教授は記者会見で、「若年層で感染が大きく広がっているエビデンス(根拠)はないが、そうでないと説明がつかない」と話した

エビデンスとは言ったが、根拠とは言っていないのではないかと考えることもできます。

…と、この記事を見て、ブコメを見た時に、今さらながら、あっ…と思ったことがあります。

満員電車。

満員電車に言及せずに、他の濃厚接触に注意喚起を促したところで、それが守られたところで大きな効果があるはずがない。それなのにライブハウスやクラブが強調されるということは、少なくとも何かあえて触れないことがある。ということだと思います。

好意的に取れば、「経済活動」をより止めることになることには触れない、ということになるのかなと思います。電車だけでなく、冬の閉じ切ったオフィスにも触れていないのですし。30代の例に触れながら、「高齢者でなくても」のような言い方をせずに、「若者」と言うのも同じ理由だと取ることもできます。ただこれは、感染やエビデンスなどの用語を厳密に用いる観点から擁護しておきながら、若者という言葉の使い方をあえて雑にしていることを見逃してあげるということになりますが。

この専門家たちも忖度しているかどうかは置いておいても、どっちにしろ安倍の忖度を要求する圧力が異常で非道なのは、今さら言うまでもありません。そんな人間に大きな権力を握らせることは恐ろしいことで、一刻も早く退陣を実現しなければなりません。
ヒトラーの全権委任法 (ゴメンテイター)
2020-03-05 08:57:19
緊急事態宣言について、わかってきたことがあります。

法改正や、新法制定の必要がないことです。
現行法で緊急事態宣言ができるのに、やらないのはなぜ?新法を作りたいから?

とにかく、「ヒトラーの全権委任法」は止めなければいけません。

「全権委任法」が通れば選挙は当然なくなります。裁判もなくなるかもしれません。国会も消えるでしょう。

すべては閣議で決定されていくのです。

あれ? 今と同じですか。

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