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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

【#安倍晋三氏の国葬に反対します】東京弁護士会が岸田政権による安倍元首相の国葬に反対する会長声明。《政府が経費を国費から支出して「国葬」という形の儀式を行うことは、法的根拠がない以上認められない》

2022年08月03日 | ダメよダメダメ岸ダメ政権

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 私が所属する東京弁護士会が2022年8月2日、故安倍晋三元首相の国葬に反対する会長声明を発表しました。

 会長声明ももちろん会長個人が考えるのではなく、東弁の執行部がチームで起案して会長が承認して発表されるものです。

 当ブログをパクったのか!?と思うくらい、うちと主張がそっくりなのですが(笑)、もちろんそうではなくて、橋下徹氏や吉村洋文氏のような「個性的」な弁護士ではなく普通の法律家ならこう考えるという見本ですwww

 法律の専門家の声明として着目すべきは、岸田首相が国葬の根拠条文として挙げている内閣府設置法が根拠になり得ないという部分。

『政府は、今回「国葬」を行う法的根拠について、内閣府設置法(1999年制定)第4条3項33号で内閣府の所掌事務とされている「国の儀式」として閣議決定をすれば実施可能との見解を示しているが、そもそも内閣府設置法は内閣府の行う所掌事務を定めたものにすぎず、その「国の儀式」に「国葬」が含まれるという法的根拠もない。
したがって、政府が経費を国費から支出して「国葬」という形の儀式を行うことは、法的根拠がない以上、認められない。』

と言い切っています。

 

 

 私が当ブログで書いた以下の文章が、この部分の解説になるでしょう。

『さらに、茂木幹事長は戦前の国葬令がすでに廃止されていて、今国葬を行なう根拠法令がないことについて、岸田首相と同じく

「内閣府設置法で、内閣が国の儀式を所管すると明記されている。政府が閣議決定を根拠として国葬を行うことは、法律上も全く問題ない」

と強弁しました。

 これは法律解釈としては全く間違っています。

 内閣府設置法第4条3項第33号には

「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)。」

と規定してありますが、これは内閣府という組織の所管事務を規定した組織法であって、国葬については何ら触れていなくて国葬という言葉さえ出てきませんよね。

 つまりこの条文では、内閣は国の儀式をすることになればそれを所管すると規定されているわけですが、そもそも問題になっているのは法律で定めた国の儀式の中に国葬がないことなんです。

 ですから、内閣府設置法は国葬を執り行っても適法だという根拠条文にはなりえないのです。

 茂木自民党幹事長が、安倍氏の国葬に関して異論を言っている声は全くないとか、国葬の根拠法は内閣府設置法だとか、無茶を言えば言うほど、国葬が無理筋だということが浮き彫りになっていると言えるでしょう。』

自民党の茂木幹事長が安倍元首相の国葬について「国民からいかがなものかという指摘があるとは認識していない」「野党側の主張は国民の声とはずれている」。ツイッターで毎日トレンドになるくらい反対してるの!

 

 

 岸田政権は、吉田茂元首相の国葬後できた法律の中で使えそうなやつを見繕ってきて、吉田氏の時よりは国葬の根拠法があるとしたかっただけです(笑)。

 専門的になりますが、警察官が市民に職務質問ができるのは、警察官職務執行法の中に警察の職務権限として職務質問に関する規定があり、それが根拠法となるからできるのであって、警察庁の組織法である警察庁法に警察は行政警察活動をすると書いてあるのが根拠になるのではないのと同じです。

 内閣府が法で定められた国の儀式をすると内閣府設置法に書いてあっても、それは内閣府とは法で定められた国の儀式をやる役所だという意味でしかなく、肝心の国葬に関して定める法律が別に必要なのです。

 その他、東弁の会長声明には注目すべき点が2点あり、私も書いた吉田茂氏の国葬の時に

「政府は、今回の安倍元首相の「国葬」においては、国民に対し弔意の表明や黙祷等は求めないとしているようであるが、戦後唯一の「国葬」となった1967年の吉田茂元首相の「国葬」の際には、「歌舞音曲を伴う行事は差し控える」「会社、その他一般でも......哀悼の意を表するよう期待する」との閣議決定がなされ、テレビ・ラジオでは娯楽番組の放送が中止され、全国各地でサイレンが鳴らされ、学校や職場で黙祷が事実上強要された事案も発生した。

このように「国葬」の実施は、国民に対して特定の個人に対する弔意を事実上強制する契機をはらむものであり、国民の思想・良心の自由(憲法第19条)との関係で好ましくない状況がもたらされかねない。」

という事実上の「弔意の強制」があったことが指摘されています。

 最近も川崎市など全国の市町村や教育委員会が国葬の日には半旗にするという要請を出していますよね。

 これからどんどんそういう事例が増えてくるでしょう。

 

 

 また、これも法律家団体の声明らしく、

『当会は、安倍元首相の在任中に行われた教育基本法改正、イラク特措法の延長、教育三法改正(以上第一次安倍内閣)、特定秘密保護法制定、労働者派遣法改正、集団的自衛権行使を容認する閣議決定、安全保障関連法の制定、共謀罪の制定、検察庁法の改正(以上第二次安倍内閣)等について、立憲主義及び憲法の基本理念に反するという立場から反対する旨の会長声明等を繰り返し発出してきた。特に集団的自衛権の容認と安全保障関連法の制定については、当会を含む全ての弁護士会が一致して明白に違憲として反対し、現在もその廃止を求めている。それにもかかわらず、これらの安倍内閣の各政策を国に対する功績と評価して安倍元首相の「国葬」を行うことは、立憲主義及び憲法の基本理念を揺るがすものであり是認できない。
また、安倍元首相が在任中及び退任後も声高に主張し、今後の国会における争点となり得る「憲法9条への自衛隊の明記」「緊急事態条項の設置」等の改憲や敵基地攻撃能力保持等の議論においても、「国葬」によって安倍元首相の意見を国是のように扱うことが起りかねない危惧もある。』

と、安倍氏がやってきたアベ政治が憲法の具体的な条文や立憲主義にも反していたことを指摘して、具体的に安倍氏が国葬にふさわしくないとはっきり言いきりました。

 非常に含蓄の深い声明ですので是非末尾の声明全文をお読みくださいませ。

 

 

東弁の会長声明は、最後に憲法や立憲主義に反するアベ政治の例がこれでもかと書いてあって、そこがうれしかったし圧巻でした。

地道に憲法違反行為に抗議してきた東京と全国の歴代の弁護士会の努力の賜物だと思います。

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安倍晋三元内閣総理大臣の「国葬」に反対し、撤回を求める会長声明

2022年08月02日

東京弁護士会 会長 伊井 和彦

1 2022年7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣(以下「安倍元首相」という)が、参議院選挙の街頭応援演説の最中に銃撃され死亡した。当会は、このような選挙の応援演説中の政治家に対する銃器等を用いた襲撃は、加害者の動機等に関わらずその行為自体が民主主義に対する重大な脅威であると判断し、これを糾弾し抗議する会長声明を本年7月11日に発した。
しかしながら、岸田内閣が、本年9月27日に安倍元首相の「国葬」を行うと決定したことについては、民主主義の観点からも、また国民の思想・信条の自由の観点からも、重大な懸念があり、これに反対するものである。
1人の政治家の死を葬儀の場で悼むことは、主義主張に関わりなく行われて然るべきであるが、安倍元首相の葬儀は既に親族において執り行われている。それにもかかわらず、政府が敢えてそれとは別に、閣議決定により「国葬」という儀式を執り行う意味が、問われるべきである。

2 そもそも「国葬」は、明治憲法下においては天皇の勅令である「国葬令」に基づき行われていたが、「国葬令」は憲法に不適合なものとして「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」第1条に基づき1947年の終了をもって失効しており、「国葬」を行うことについても、その経費を全額国費から支出することについても、現在は法的根拠がない。
1967年に吉田茂元首相の「国葬」が実施された際には、翌年の国会答弁で当時の大蔵大臣が「法的根拠はない」と答弁しており、1975年に佐藤榮作元首相が死亡した際に「国葬」の実施が検討されたときも、「法的根拠が明確でない」とする当時の内閣法制局の見解等によって見送られた経緯がある。
政府は、今回「国葬」を行う法的根拠について、内閣府設置法(1999年制定)第4条3項33号で内閣府の所掌事務とされている「国の儀式」として閣議決定をすれば実施可能との見解を示しているが、そもそも内閣府設置法は内閣府の行う所掌事務を定めたものにすぎず、その「国の儀式」に「国葬」が含まれるという法的根拠もない。
したがって、政府が経費を国費から支出して「国葬」という形の儀式を行うことは、法的根拠がない以上、認められない。

3 また、政府は、安倍元首相を「国葬」とする理由について、「歴代最長の期間、総理大臣の重責を担い、内政・外交で大きな実績を残した」などとしているが、政府が特定の政治家についてその業績を一方的に高く評価し、その評価を讃える儀式として「国葬」を国費によって行うことは、その政治家に対する政府の評価を国是として広く一般国民にも同調を求めるに等しい。その政治家への評価は、主権者たる国民の一人ひとりが自らの意思で判断すべきことである。
政府は、今回の安倍元首相の「国葬」においては、国民に対し弔意の表明や黙祷等は求めないとしているようであるが、戦後唯一の「国葬」となった1967年の吉田茂元首相の「国葬」の際には、「歌舞音曲を伴う行事は差し控える」「会社、その他一般でも......哀悼の意を表するよう期待する」との閣議決定がなされ、テレビ・ラジオでは娯楽番組の放送が中止され、全国各地でサイレンが鳴らされ、学校や職場で黙祷が事実上強要された事案も発生した。
今回も「国葬」が近くなれば、安倍元首相の「国葬」に対する忖度から、公的機関のみならず民間機関に対しても同様の有形無形の同調圧力がかかることは容易に予想され、弔意の表明の事実上の強制が行われかねない。現に、兵庫県や北海道の一部自治体の教育委員会が学校現場に「国葬」の際の半旗の掲揚を求めたという報道もあり、忖度と同調を求める動きは今後も拡がることが予想される。
このように「国葬」の実施は、国民に対して特定の個人に対する弔意を事実上強制する契機をはらむものであり、国民の思想・良心の自由(憲法第19条)との関係で好ましくない状況がもたらされかねない。

4 当会は、安倍元首相の在任中に行われた教育基本法改正、イラク特措法の延長、教育三法改正(以上第一次安倍内閣)、特定秘密保護法制定、労働者派遣法改正、集団的自衛権行使を容認する閣議決定、安全保障関連法の制定、共謀罪の制定、検察庁法の改正(以上第二次安倍内閣)等について、立憲主義及び憲法の基本理念に反するという立場から反対する旨の会長声明等を繰り返し発出してきた。特に集団的自衛権の容認と安全保障関連法の制定については、当会を含む全ての弁護士会が一致して明白に違憲として反対し、現在もその廃止を求めている。それにもかかわらず、これらの安倍内閣の各政策を国に対する功績と評価して安倍元首相の「国葬」を行うことは、立憲主義及び憲法の基本理念を揺るがすものであり是認できない。
また、安倍元首相が在任中及び退任後も声高に主張し、今後の国会における争点となり得る「憲法9条への自衛隊の明記」「緊急事態条項の設置」等の改憲や敵基地攻撃能力保持等の議論においても、「国葬」によって安倍元首相の意見を国是のように扱うことが起りかねない危惧もある。

5 当会は、安倍元首相の「国葬」にはこのような憲法理念上の問題点が多々あることから、これに反対し、政府に撤回を求めるものである。

印刷用PDFはこちら(PDF:108KB)

 

 

東京弁護士会、安倍元首相の「国葬」実施に反対表明 「法的根拠ない」撤回を求める
東京弁護士会(barman / PIXTA)

東京弁護士会、安倍元首相の「国葬」実施に反対表明 「法的根拠ない」撤回を求める

東京弁護士会(伊井和彦会長)は8月2日、9月27日に実施予定となっている安倍晋三元首相の「国葬」について、反対し撤回を求める会長声明を公表した。

明治憲法下の「国葬令」はすでに失効しており、政府が法的根拠として示した「内閣府設置法」は内閣府の行う所掌事務を定めたものにすぎないとして、「政府が経費を国費から支出して『国葬』という形の儀式を行うことは、法的根拠がない以上、認められない」とする。

また、吉田茂元首相の「国葬」を例にあげて、「テレビ・ラジオでは娯楽番組の放送が中止され、全国各地でサイレンが鳴らされ、学校や職場で黙祷が事実上強要された事案が発生した」と指摘。

今回の「国葬」でも、「公的機関のみならず民間機関に対しても同様の有形無形の同調圧力がかかることは容易に予想され、弔意の表明の事実上の強制が行われかねない」とし、「国民の思想・良心の自由(憲法第19条)との関係で好ましくない状況がもたらされかねない」と述べる。

同会は、襲撃事件は「加害者の動機等に関わらずその行為自体が民主主義に対する重大な脅威である」としたうえで、安倍元首相の「国葬」には憲法理念上の問題点が多々あるとして、実施に反対し、政府に撤回を求めている。

 

 

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3 コメント

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Unknown (怒りの日)
2022-08-03 12:17:58
すみませんが、末尾のこの文章はこれでいいのでしょうか?

〉地道に憲法違反行為をしてきた東京と全国の歴代の弁護士会の努力の賜物だと思います。

何か言葉をつけたすべきだと思うのですが(コメントは掲載されなくても構いません)
Unknown (raymiyatake)
2022-08-03 13:25:56
しくじりました!

抗議してきた、に訂正してきました

ありがとうございました!
葬る (時々拝見)
2022-08-06 15:41:38
1.国をあげて何か闇に葬るのでしょうか?
2.故人が果たせなかった習近平氏の国賓来日を果たして供養しますか?最低限、参列招待者リストには入れないと、故人が浮かばれないでしょう。
3.バッハ氏や統一教会の人も。自民党なら大歓迎だと思います。

当日は、リモートで。
密室、密談、密約の3密も避けましょう。

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