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5月13日(金) ロシアによるウクライナ侵略 憲法9条でなければ日本は守れない(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『東京革新懇ニュース』第472号、2022年5月5日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 惨事便乗型改憲論の誤り

 戦争という惨事に便乗して持論である改憲を声高に叫んでいるのは、安倍元首相や維新の会です。敵基地攻撃能力の保有(敵基地攻撃論)と中枢(指揮統制機能)打撃論、核共有論が際立っています。これと共に改憲に向けての動きも強まっています。これは大きな誤りです。
 第1に、敵基地攻撃論は「専守防衛」の範囲を踏み越えるものであり、明確な憲法違反となります。これはミサイル発射を念頭に未然に防ごうというものですが、「敵基地」を特定することは困難です。だから中枢打撃論が唱えられるのですが、それでは全面戦争になってしまいます。実行不可能な空理空論にすぎません。
 第2に、核共有論ですが、さらに荒唐無稽な主張です。「非核三原則」の「持ち込ませず」、核の平和利用を定めた原子力基本法、核兵器の移転などを禁じた核拡散防止条約などに反し、核兵器禁止条約にも逆行する暴論にほかなりません。在日米軍基地や自衛隊基地に核を貯蔵する施設が作られ、自衛隊が核攻撃に参加することになれば、最初に攻撃目標となり有害でしかありません。
 第3に、憲法条文の書き換えの動きも強まっています。自衛隊明記の目的は「最小限の実力部隊」で「軍隊ではない」とされてきた自衛隊の「国軍化」を実現し、アメリカによる対中国戦略の前線に立たせることです。緊急事態条項の新設は国会を有名無実化し、政府による専制を生みだそうとするものです。その狙いは戦争と独裁の合法化にあります。
 なお、このような改憲策動の先頭に立っている安倍元首相の責任についても指摘しておく必要があります。27回もの首脳会談を行って北方領土の2島返還を示唆しただけでなく、共同経済開発事業に3000億円もの国費を差し出し、プーチンにすり寄って翻弄され国益を害した外交の失敗は明らかです。改憲の旗を振る前に、この失敗を真摯に反省すべきではないでしょうか。

 再確認すべき9条の威力

 日本を軍事力で守ることはできません。戦争してはならないだけでなく、戦争できない国だからです。
 第1に、憲法9条の縛りがあります。これを変えることは国際社会の脅威にならないという誓約を破ることになり、周辺諸国に誤ったメッセージを送ることになります。紛争や対立はあくまでも外交で解決するという決意を固め、「喧嘩を売っているのか」と思われるような姿勢をとらず、従米路線を改めて自立した独自外交に転換しなければなりません。
 第2に、エネルギーと食料を他国に依存しているという決定的な問題があります。エネルギーの自給率は12%、食料の自給率は37%ですから、戦争になって輸送が途絶えればお手上げです。貿易での中国との相互依存も高く、輸出入総額の24%で第1位ですから戦争などとんでもありません。貿易面からすれば、アメリカも中国との戦争など不可能です。
 第3に、「9条の経済効果」が失われます。国の富みを軍事ではなく民生につぎ込むというあり方が戦後の経済成長の原動力となりました。しかし、今では重武装をめざして国内総生産(GDP)の2%以上もの大軍拡が模索されています。そんなお金がどこにあるのでしょうか。国民生活や産業投資が圧迫されるのは明らかではありませんか。
 いま一度、この「9条の経済効果」の威力を再確認するべきです。それが失われれば、軍拡競争による膨大な財政負担によって国民生活と社会・経済活動が破壊され、戦争になって外から攻められる前に内から崩壊するということになりかねないのですから。


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