河野規制改革相「供給量が希望量の3分の1なので、希望量の配送はできません」

河野大臣は、7月下旬のワクチンの配分量が、希望量の3分の1余りとどまるため、「希望量の配送ができない」と述べた。

そのうえで、「今後は手持ちの在庫をうまく使いながら、スピードを最適化して、供給量に応じたスピードをお願いをしたい」と、自治体が在庫を生かしつつ接種のペースをコントロールするよう求めた。

 

 

「アクセル踏んだ後に急ブレーキで混乱」 ワクチン不足で憤る現場

大阪市が運営する集団接種会場で新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける男性(中央)=同市都島区の都島スポーツセンターで2021年5月24日午後1時28分、藤井達也撮影

 新型コロナウイルスワクチンの供給が不足するとして、大阪市は2日、新規接種を12日から一時休止すると発表した。神戸市も2日、新規接種を6日以降、順次取りやめると発表。ともに国から見込んでいた米ファイザー社製の供給量が従来より大幅に減少し、2回目の接種を受ける人を優先した。両市ともに予約済みも含めて新規接種がいったん休止されることになり、神戸市では5万人以上が対象となる。

 大阪市で12日から一時休止の対象となるのは、かかりつけ医による個別接種と、各区の施設で行う集団接種。市によると、ファイザー社製の供給量は6月21日~7月4日は約37万回分で、同5~18日には約18万回分に半減する。8月以降について国は「7月中に示す」とし、白紙状態だ。

 松井一郎市長は2日、「大変迷惑を掛けるが、1回目の接種を止めざるを得ない」と述べた。予約を済ませていた人は8月以降に接種が先延ばしになるという。

 一方、国際展示場「インテックス大阪」で行っている大規模接種は米モデルナ社製を使っており、予定通り進める。ただ今後、2回目の接種が本格化するため、担当者は「1回目の予約枠はほとんどない」としてい

 

予約済み接種休止、神戸は5万人以上対象

 神戸市は新規の集団接種を6日から、個別接種は12日からそれぞれ取りやめる。予約済みの接種が休止になった人のうち、65歳以上は優先的にモデルナ社製に振り替える。久元喜造市長は「このような事態を招かないように時間軸を持って供給してほしかった」と国に苦言を呈した。

 他の自治体でも接種計画の変更が相次ぐ。兵庫県明石市は2日、6月30日から予約受け付けを始めた60~64歳の接種を延期すると発表した。7月下旬までに約8万3000回分の供給を見込んでいたが、4分の1程度しか確保できなくなったという。泉房穂市長は「信頼できない国に住んでいることは、憤りを通り越して悲しい」と話した。

 京都市は64歳以下への接種を7月から本格化させる準備を進めてきた。しかし、ファイザー社製の供給見通しが立たず、個別接種は予約枠がほぼ埋まった。

 なぜ混乱が生じているのか。政府は今春、ファイザー社製について、6月末までに1億回分以上、7月から9月末に約7000万回分をそれぞれ確保できると公表した。厚生労働省によると、供給は計画通りに進んでいる。ただし、2週間ごとでみると、6月21日~7月4日=約1872万回分▽同5~18日=約1287万回分▽同19日~8月1日=約1240万回分――と段階的に減る見通しだ。厚労省の担当者は「供給量に落差があるため、戸惑う自治体もあるのかもしれない」と語る。

 国から8月以降の供給見通しが示されていないことも、自治体が先行きに懸念を募らせる要因となっているようだ。大阪府には市町村から供給見通しの問い合わせが複数あるといい、担当者は「長期的な配分計画を国が示してくれなければつらい」と訴えている。【柳楽未来、山本真也、添島香苗、石川将来】

 

「患者の信頼を裏切った形に」

 ワクチン接種の一時休止に伴い、医療現場は対応に追われている。大阪市住之江区の診療所で個別接種に協力する黒岡正之医師(58)は、7月上旬の1週間分として届くはずだった54回分が2割ほど不足すると市から連絡を受けた。2度目の接種に充てるため延期はできず、慌てて近隣の医療機関に問い合わせ、受け入れ先を確保した。

 5月の大型連休明けから個別接種の準備を始め、通院患者に接種の意思を聞き取り、接種スケジュールを作成。週30~70人ペースで接種し、これまでに延べ400人の接種を済ませた。8月中旬までに100人以上の予約が残っているが、予定の組み直しは必至だ。

 黒岡医師は「かかりつけ医として通ってくれる患者さんの信頼を裏切った形になり、申し訳ない気持ち」と話した上で、「『ワクチン接種を急げ』とアクセルを踏み込んだ後に、急ブレーキをかけられたら現場は混乱するだけだ」と憤った。

 同市中央区の集団接種会場では、6月中旬以降は1週間で1回目と2回目の接種を約1000回ずつ実施。12日以降の接種休止に備え、接種時間の短縮などを視野に態勢変更の準備に入った。区の担当者は「もっと稼働率を上げようとしていた矢先なのに」と面食らった様子。「いつまで休止するのか分からないと調整が難しい。供給量が不透明なのが一番困る」と話した。【田畠広景】

 

 

ワクチン予約停止の自治体相次ぐ 背景は需要と供給のギャップ

新型コロナウイルスのワクチン接種=手塚耕一郎撮影

 新型コロナウイルスのワクチン接種の予約について、停止や制限をする動きが全国の自治体に広がっている。主に米ファイザー社製の供給量が先細りになっている一方、自治体での需要が膨らんだことが背景にある。2日には神戸市や千葉市が予約の停止を発表するなど大都市部にも影響が及んだ。

 大阪市は2日、1回目の接種を12日から一時休止すると発表した。神戸市も2日、1回目の接種を6日以降、順次取りやめると表明。ともに国から見込んでいたファイザー社製の供給量が従来より大幅に減少し、2回目の接種を受ける人を優先した。両市ともに予約済みの接種がいったん休止されることになり、神戸市では5万人以上が対象となる。

 千葉市は2日、集団・個別接種のいずれも1回目について、新たな予約の受け付けを当面停止すると発表した。市医療政策課によると、国からは19日以降のワクチン供給に関する連絡がないという。予約の完了分は予定通り実施する。

 水戸市は18~49歳の市民を対象とした予約受け付けを無期限で延期。宮城県名取市は2日、当面の予約受け付けについて、集団接種は7月下旬まで、個別接種は8月上旬までの分とする方針を発表。岩手県大船渡市は今月5日に予定していた64歳以下の予約受け付けの開始を15日に遅らせる。

 背景には、国と自治体との需給ギャップがある。厚生労働省は1日、今月19日から月末までのファイザー社製の供給計画を都道府県に提示。自治体からの希望量(3420万回分)の3分の1程度(1240万回分)で、これが引き金で急ブレーキを踏んだケースもあるとみられる。7月前半の供給も希望量の約半数止まりで、供給不安に拍車をかけた。【森永亨、柴田智弘、柳楽未来、山本真也】