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2022年5月3日の憲法記念日にあたり、自民党は
「新型コロナウイルス感染症をはじめ、国難ともいうべき状況で緊急事態の切迫感が高まっている。
国民議論の喚起は国会議員の責務だ。
与野党の枠を超えて活発な議論を進め、早期の憲法改正実現に取り組む。」
という談話を発表し、改憲4項目のうち憲法9条を改悪して自衛隊規定を設けること及び緊急事態条項を前面に打ち出してくることは明らかです。
憲法に緊急事態条項は必要か (岩波ブックレット) | |
永井 幸寿 (著) | |
岩波書店 |
憲法「改正」で緊急事態条項の導入、東日本大震災の被災自治体のうち97%が必要ないとのアンケート結果。
極右の「日本会議」のフロント組織「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(櫻井よしこ共同代表ら)と民間憲法臨調が共催する改憲集会には、安倍元首相がやっていたのとまったく同じように岸田首相がビデオメッセージで登場。
自民党の改憲4項目について
「いずれも極めて現代的な課題であり、早期の実現が求められる」
緊急事態条項に関しては、新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻をあげて
「緊急事態への備えに対する関心が高まっている」
と言及しました。
自民党改憲案の中でも最も危険な緊急事態条項創設がいよいよ現実味を帯びてきました。
自民党憲法改正実現本部が2018年に発表した改憲に向けての「たたき台素案」
では、緊急事態条項は以下のように規定されています。
第七十三条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
② 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
これは大日本帝国憲法の天皇の非常大権、緊急勅令にそっくりです。
第八条 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス2此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
むしろ、天皇の緊急勅令は議会が閉会しているときにしか出せないのに、緊急事態政令は国会を開会していても出せるので、大日本帝国憲法よりゆるゆると言えるでしょう。
また、緊急事態政令も発令後、「速やかに国会の承認を求めなければならない」となっていますが、これは大日本帝国の緊急勅令でも、「次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ」となっていますから、国会のチェック度はあまり変わらないと言えます。
しかも、安倍・菅両政権では、野党が
第五十三条
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
という条文に基づいて臨時国会召集を求めているのに、憲法の条文に期限が定められていないという理由で、何カ月も臨時国会を召集しなかったり、選挙後の特別国会で替えてしまったりする憲法違反行為が何度も横行しています。
これでは、「速やかに」国会の承認を得なければいけないという条文も無視されることは明らかです。
安倍内閣に対して違憲訴訟が提起される!「4分の1以上の議員がモリカケ臨時国会の召集を要求したのに逃げたのは憲法53条違反」
政令は法律同様に市民の基本的人権を制限することができる法規です。
しかし、法律は選挙で選ばれた国民の代表者である国会議員たちによって制定されるのに対して、政令は有権者が直接選んだわけではない内閣が発令します。
したがって、憲法73条6号は
「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」
として、本文では法律を施行するための執行命令が原則で、罰則を設けるには法律による具体的委任が必要とされているのです。
ところが、自民党の「ただき台」素案は、政令の出し方だけ「法律で定めるところによ」れば、緊急事態政令で自由自在に罰則を含めた規定を定めることができて、市民の人権を制限することができるようになってしまっています。
なお、自民党のたたき台素案には、緊急事態政令を出すのは「国民の生命、身体及び財産を保護するため」と、いかにも国民のためだけに出しますという文言があります。
しかし、大日本帝国憲法の天皇大権として、独立命令といって
第九条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス
という規定もあったのですが、そこにも目的は「臣民の幸福を増進するため」と規定されています。
でも実際には、たとえば国民を守るためにデマや風評を防ぐという口実の下に、市民の表現の自由やマスコミの報道の自由が制限され、結局、全市民の知る権利などすべての基本的人権が制限されかねないのです。
それにしても、こうしてみると自民党のたたき台素案なるものは、本当に大日本帝国憲法からパクってきたとしか言いようがない、戦前回帰の代物だということがよくわかります。
また、大切なことは、自民党の「たたき台素案」はあくまでたたき台であり素案でしかなく、改憲発議までにどのように変容するかは全く保証がないということです。
たとえば、政令が出された後、国会が速やかに承認するという文言も、「速やかに」が抜けたり、国会の承認自体が不要になったりするかもしれないのです。
そもそも、2012年に自民党が発表した改憲草案の中の緊急事態条項は
「何人も(中略)国その他公の機関の指示に従わなければならない」
などと定められていて、緊急事態だからという事を口実に市民の人権を抑圧することを露骨に表現していました。
この自民党草案の独裁狙いがあからさま過ぎたので出てきたのが、「たたき台素案」なのですが、自民党のやりたいことは一貫しているのです。
いま、新型コロナウイルスまん延に続くウクライナ戦争で怯える日本の有権者の動揺に乗じて盛り上がっている改憲機運。
どんな体裁の良い改憲案を出してきても、結局は市民の基本的人権の抑圧と弾圧こそが目的であることを絶対に忘れてはなりません。
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【憲法記念日】朝日も読売も世論調査で緊急事態条項が必要とする有権者が過半数となる、これぞ非常事態。実際には改憲、特に緊急事態条項創設や9条改悪は不要かつ危険で有害です!
自民党の憲法「改正」草案の中で最も注意すべき「緊急事態条項」についてもう一度まとめます。
自民党が憲法に入れたがっている「緊急事態条項」は、法律なしに内閣が命令で市民の人権を直接制限できるという、緊急事態宣言とは比べ物にならない凶悪さだと知っていますか。
日本国憲法公布70年。憲法のすべての条文は戦前の日本の悪いところを反省材料に作られた。だから戦前懐古の日本会議より新しい。
自民党の憲法改正草案で「基本的人権は永久の権利」と定めた憲法97条を削除したのは条文の整理、と安倍首相。
稲田政調会長は基本的人権の尊重は変えないというけれども、全く変えちゃってる自民党憲法「改正」草案。
自民党の改憲草案は立憲主義憲法ではなく、国民にさまざまな義務を押し付ける封建主義憲法だ。
参考記事 村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより
憲法、「改憲」または「カイケン」問題 : 日本の民主主義は無くならないと信じている方々に知ってほしいこと(憲法記念日に寄せて) #参院選2022
憲法、「改憲」または「カイケン」問題 : 自民党による「改憲」推進集会を無批判に宣伝する報道業者は民主社会破壊の共犯者です。 #マスメディアへの不満 @TBSNEWS6 @nst_tbs6 @news23_tbs @tbs_houtoku @TBSNEWS4 @nhk_news
憲法、「改憲」または「カイケン」問題 : 維新がたくらむ「緊急事態条項」改憲を詐欺とみなしてよい理由。維新が企む改憲を「民主主義廃止」と見抜けない報道業者を無能とみなしてよい理由。
ナチスの「手口」と緊急事態条項 (集英社新書)
昨日の憲法記念日に書いた記事で見たように、日本の主権者たる市民が
『内閣が緊急事態に政令で人権を一時的に制限できるようにする改正について、「憲法を改正して対応するべきだ」が59%で、「その必要はない」34%を上回った。』
という奴隷根性状態で、どうぞ人権を制限してくださいと思っているままでは、緊急事態条項の危険性と説いてものれんに腕押しになるかもしれません。
まず、基本的人権がいかに大切で、どれだけ苦労して獲得されてきたものか、そこから説き起こさないといけないのかもしれませんね。
私が日本国憲法の中で一番好きな条文
第97条
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
にある通り、いま、私たちが「自由獲得の努力」をすべき時なんでしょう。
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岸田首相は憲法記念日の3日、東京都内で開かれた改憲派の集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、自衛隊の明記など同党が掲げる改憲案4項目について「いずれも極めて現代的な課題であり、早期の実現が求められる」と述べ、改憲への意欲を強調した。
改憲案4項目は同党が2018年に「たたき台素案」としてまとめたもので、〈1〉自衛隊の根拠規定の明記〈2〉緊急事態条項の創設〈3〉参院選の合区解消〈4〉教育の充実――からなる。
首相は「自衛隊は大規模災害や新型コロナに懸命に対応しており、国民から感謝され、支持されている。それにもかかわらず自衛隊を違憲とする声があることも事実だ」と述べ、根拠規定の明記で、自衛隊の合憲性をより明確にすべきだとの考えをにじませた。
自民案は戦争放棄や戦力不保持を定めた9条は維持し、「9条の2」を新設して自衛隊の保持を明記するとしている。
また、首相は「新型コロナへの対応、ロシアによるウクライナ侵略を受け、緊急事態への備えに関心が高まっている」と述べ、大災害時の国会議員の任期延長など、緊急事態条項の議論を促した。
首相は昨年の就任当初は改憲の発言には慎重だったが、最近は徐々に積極的な発信も目立っている。自民は夏の参院選で勝利すれば、国会での改憲論議をさらに活発化させる方針だ。
◆政府の権限集中 自民「盛り込むべき」 立民「立憲主義に反する」
改憲を求める民間憲法臨調などが主催した「公開憲法フォーラム」には自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党の議員が出席した。自民総裁の岸田文雄首相もビデオメッセージを寄せ、「社会が大きく変化する今だからこそ(改憲に)挑戦し続けなければならない」と強調した。古屋圭司憲法改正実現本部長は「改憲の必要性を必ず公約の大項目(重点項目)に入れて訴える」とアピールし、党の改憲案4項目(9条への自衛隊明記・大規模災害時の緊急事態条項・参院選の「合区」解消・国に教育環境整備の努力義務を課す「教育の充実」)を紹介した。
維新の足立康史衆院議員は「参院選までに9条と緊急事態条項の改正イメージ案を公表する」と明言した。議論の加速化に向けて「(消極的な)立憲民主党を野党第一党から引きずり下ろす。維新が野党の雄として憲法論議の先頭に立つ」と熱弁した。
公明の浜地雅一衆院議員は9条や国防に触れず、緊急事態時の国会議員任期延長を可能とする改憲について「私見」と前置きして「早急に詰めた議論が必要」と述べた。
一方、改憲に反対する市民団体が開いた集会には、立民、共産、社民の3党の議員が参加し、改憲阻止で足並みをそろえた。
立民の奥野総一郎衆院議員は、ウクライナに侵攻したロシアを批判しつつ、「ロシアよりも許せないのが今の与党だ。どさくさ紛れに、ウクライナの問題をだしにして、改憲に突き進もうという姿勢は許すわけにいかない」と強調。「大事なのは参院選。改憲勢力は(改憲の国会発議に必要な)3分の2を切らせるように野党で共闘して戦っていきたい」とも訴えた。
共産の志位和夫委員長は9条改正を「力を合わせて止めよう」と呼びかけた。志位氏は奥野氏の主張について、記者団に「危機に乗じた改憲は許さない、共闘してやっていこう、という力強い話だった」と満足そうに語ったが、奥野氏はこの後のBSフジ番組で自身の発言の一部を撤回。「ロシアより許せないのが今の与党だ」などと言及したことについて「言い過ぎた。申し訳ない」と述べた。(田中一世、内藤慎二)
コロナ禍の前に行われた、厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、生活が苦しい世帯は、54% 、母子家庭では86%。その中にやってきた疫病から国民生活を救うための予算は、30兆円も執行されず余らせた、と批判されたのは当然で、生活者や事業者に対する支援を充実させず、
冷徹な態度を変えない政治は、異常です。
欧米諸国が大胆な経済政策によって、コロナ禍からの回復を進める中、日本は25年間の経済政策の失敗とコロナ拡大のWパンチであっても、政府の対応は中途半端、そこに戦争まで加わり、一段の資源高。手当をしなければ、ここからさらに苦境に追い込まれる人々の数は、増えざるを得ないでしょう。
この局面で最も優先すべき政治課題は、憲法改正ではありません。徹底した積極財政を行い、現法憲法の生存権を保障すること。政府は、経済対策を行うといいますが、全体での国費はわずか6兆円程度。事態を深刻に捉えていない楽観的な額と言わざるを得ません。今こそ、消費税廃止、ガソリン税はゼロ、社会保険料の国負担を増やすなど、大胆な通貨発行、生活者、事業者への底上げが急務です。
最後に、現在の国会における憲法改正の議論について。与党の提案している憲法改正は4つの項目、憲法9条(「自衛隊の明記」)、緊急事態、合区解消、教育充実、ですが、本命は一つ、あとはダミーです。本命は、緊急事態条項の創設です。
法律と同じ力を持つルールを、緊急事態時には政令という形で内閣が勝手に作れるようにする。むちゃくちゃ、危険です。25年もの間、経済政策をあやまり、労働環境を破壊し、人々の生活や事業の継続を不安定化させた結果、国を衰退させてきた者たちが、コロナという疫病が広がっても本気を出さず、戦争による物価高が襲い掛かってもしっかり対策さえ打たない。平成9年以降、これまでずっと緊急時であったにもかかわらず、ほぼ通常運転を継続する危機感のない者たちに、事実上の全権委任を許す、緊急事態条項は、絶対にダメ。国の破壊の総仕上げにしかなりません。
間抜けな政治を行ってきたものに、最大のフリーハンドを差し上げる緊急事態条項は絶対に阻止しなければならない代物です。憲法を変えるうんぬんの前に、現行憲法を守れ。さっさと積極財政で、人々の暮らしと事業者を守れ。それ以上でも以下でもありません。
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