No. 1452 いつからナチスは「悪党」でなくなったのか?

いつからナチスは「悪党」でなくなったのか?

by Robert Bridge

信じられないことだが、西半球は今、ロシアに対抗するためにネオナチの味方をしている。

1945年のナチス・ドイツの敗北を記念してモスクワで行われる戦勝記念日のパレードはほろ苦いものになりそうだ。なぜならロシア国民は、驚いたことに再び、ファシズムとの実存的な闘いに身を置くことになったからである。それなのに西側諸国は、ロシア国境で起きている問題を無視するだけでなく積極的に支援している。

実話:1970年代後半、ペンシルバニア州ピッツバーグのNativity of Lord小学校で、数人の生徒と私が黒板に呼ばれ、算数の問題を解かされたことがある。 その時、私は黒板に書かれた問題を解いた後、自分の机に戻る前に答えの横にちょっと落書きをした。

突然、私たちの教師、シスター・ドロローサという名のきまじめな修道女が怒りに震える声で尋ねた。「誰が……やったのか……?」私は誰かが怒られるのだろうと思った。私の思ったとおりだったが、その「誰か」とは私だった。修道女はもう自分の机には座っておらず、私の数学の問題の横に立って私が落書きした鉤十字が描かれた黒板に木の定規を叩きつけていた。それは普通カトリックの教室に飾られるようなものではなかった。私はゆっくり手を挙げ、神の怒り、あるいは修道女の恐ろしい定規がその場で私を打ちのめすのを待ったのだ。

私の愚かな行動を批判する前に、私がその日の朝、今やナチス・ドイツとその憎むべき犯罪と同義であるこの古代のシンボルを知ったばかりだったということに留意してもらいたい。学校の図書館で第二次世界大戦に関する本を偶然見つけ、初めてその恐ろしい鉤十字の画像を目にしたのである。もちろんそれがどんな恐ろしいものであるか知らなかったし、ただの歪んだ十字架がこれほどまでの感情を呼び起こすものであるのは驚きだった。

私の教師が無知な子供が落書きした政治的シンボルに激怒してから数十年後の今日、世界は根本的に異なる場所になった。そしてそれは良い方向には向かっていない。それは私たちが歴史の残酷な教訓を忘れてしまったからなのか、それともワンパターンなロシア恐怖症が人類の心に深く根付いてしまったからなのか、どちらとも言えない。いずれにせよ、西半球は今、信じられないことだがネオナチと手を組んでロシアに対抗している。鉤十字はもはや人の心に恐怖を与えないようである。

このような主張に対して、多くの人は「クレムリンのニセ情報」などだとして嘲笑したくなるだろう。そういう人々は、歴史的人物で第二次世界大戦中のナチスの協力者であるステパン・バンデラについて聞いたことがないのだろう。ウクライナの町の広場には何十ものバンデラの銅像が建てられている。また西側メディアの反ロシア的な偏向のおかげで、多数の入れ墨を含むネオナチの装備を目にすることもない。ロシア軍はそれらを、将来の軍事法廷に備えてウクライナを横断する過酷な行程の中で記録している。

一方ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナを「非ナチ化」させようとしているというロシアの主張に対抗するため、自分がユダヤ人であると指摘した。ユダヤ人の血を引く大統領が、ホロコーストを引き起こしたのと同じイデオロギー勢力と手を組むとは考えられないというのである。しかしこのような主張を信用するのは間違いである。実際ゼレンスキーはウクライナの極右勢力の前では全く無力であることが証明されている。2019年、ネオナチ準軍事組織がドンバスの親ロシア市民とのミンスク議定書に定められた和平交渉の拒否を求める「ノー・カピチュレーション」キャンペーンに結集していた時に目をむけるだけでよい。ゼレンスキーが最終的に彼らの要求に譲歩せざるを得なかったという事実が、現在の紛争について知るべきことのすべてを物語っている。

ジャーナリストのAlexander RubinsteinとMax Blumenthalは最近、ゼレンスキーの民族的背景にかかわらず、ネオナチ思想がウクライナ社会にどの程度浸透しているかを説明している。

“アゾフは正式にウクライナ軍に編入され、その街頭自警団は国家隊と呼ばれ、ウクライナ内務省の監視のもと、国家警察とともに全国に展開されていた。”とThe Grayzoneに記している{1}。“2021年12月、ゼレンスキーはウクライナ議会での式典で、ファシストの右派セクターのリーダーに「ウクライナの英雄」賞を渡すところを目撃されることになるだろう “。

 実際、こうした右翼の脅威に対して、モスクワがウクライナで行動を起こさざるを得ないと感じるずっと前から、欧米のジャーナリストたちはウクライナにおけるファシスト的傾向の台頭を公然と論じていた。ちなみに、この右翼の脅威は、NATO諸国とその兵器の唯一の後ろ盾としている。

2018年3月にはロイターのジャーナリスト、ジョシュ・コーエンは次のように報じている{2}。“多くのウクライナ人が(極右)民兵を感謝と賞賛の念を持って見続けているが、これらのグループのうち、より極端なものは、不寛容で非自由のイデオロギーを推進しているので長期的にはウクライナを危険にさらすことになるだろう”。

さらにコーエンは、フリーダムハウスのウクライナ・プロジェクト・ディレクターであるマシュー・シャーフの言葉を引用し、次のように述べている。“ウクライナには数多くの組織化された過激な右翼団体が存在する。義勇軍は公式に国家機構に統合されたかもしれないが、そのうちのいくつかは、自分たちのビジョンを実現するために、政治的および非営利の組織から分離した”。

その「ビジョン」が何であるかは、現在のウクライナを襲う混乱を説明するのに十分なものである。

例えばウクライナ政府が、草の根の過激派グループC14(この名前は白人至上主義者の間で流行している14単語の誓約を指す)に首都に街頭パトロール隊を設置することを許可したことを、西半球の何人の進歩派は知っているだろうか。2018年、ウクライナの首都キエフでは、こうした民兵が運営する勢力が3つ登録され、他の都市でも20数近くが登録されている。しかし今日、西側メディアはこのようなものは存在せず、ウクライナにネオナチの系統があるという話は「ニセ情報」であるかのように装っている。

西側諸国の、ウクライナにおける極右勢力の力と影響力を突然隠蔽しようとする明らかな行為は、何よりも根深いロシア恐怖症の表れである。しかし、もし国境で同じように危険なネオナチの脅威に直面したら、NATO加盟国、特にナチスのシンボルを掲げただけで何年も刑務所に入れられるドイツなどが中立の立場を維持するかどうかは疑わしい。

昔、カトリック学校の教師が教室で鉤十字を見たとき強い反応を示したのと同じように、人々はこのようなイデオロギーが持つ本質的な危険性をもう一度理解する必要がある。たとえそれがロシアとの平和的な共存と理解を意味するとしても。しかし、まず西側諸国は、モスクワが実存的な脅威と隣り合わせで生きていくことを期待するのをやめる必要がある。その忌まわしいイデオロギーはすでに危険であることが証明されており、世界においてそれを容認する国はないだろう。イギリスの有名なお笑いコンビ、ミッチェルとウェッブの言葉{3}にあるように、ナチスは本当に「悪党」なのだということを思い出すときが来たのである。

Links:

{1} https://thegrayzone.com/2022/03/04/nazis-ukrainian-war-russia/

{2} https://www.reuters.com/article/us-cohen-ukraine-commentary-idUSKBN1GV2TY

{3} https://www.youtube.com/watch?v=hn1VxaMEjRU

https://www.strategic-culture.org/news/2022/05/08/exactly-when-did-nazis-stop-being-the-baddies/