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5月3日(月) 「戦争法」施行から5年 憲法記念日の今考える(その1) [論攷]

 〔以下のインタビューは民主青年同盟の『民主青年新聞』3087号、2021年5月3日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 安保法制=戦争法の施行(16年3月29日)から5年を迎えました。平和主義を掲げる日本の形を大きく変えた政策転換と、それに対し空前の規模で行われた反対運動から今の「野党共闘」にどうつながっているのか、法政大学名誉教授の五十嵐仁さんに話を聞きました。

 青年の未来に関わる問題

 ――安保法制の制定時、何が行われたのでしょうか。

 安保法制(戦争法)の根本的な問題は、それまでの政府解釈でも認められなかった「集団的自衛権」について一部容認へと転換してしまったことです。同盟国に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなして反撃する集団的自衛権は認められず、「専守防衛」の立場を守るというのが「国是」でした。ところが閣議決定(14年7月1日)で覆してしまった。それは憲法前文や9条の平和主義に反すると小林節さんら憲法学者や法律家の大部分が反対したにもかかわらず、法制化しようとしました。このような立憲主義の違反に加え、多くの反対意見を押し切って強行採決して民主主義を破壊した。このように平和主義・立憲主義・民主主義という3点について違反するという問題が明らかになったことが、広範な国民的反対運動を引き起こす要因になったと思います。
 安倍政権を引き継いだ菅政権においても、コロナ禍の陰で極めて危険な方向へと政治が動いています。日米共同声明でアメリカと共に中国と対峙することを約束してしまった。アメリカの要請に応じて、アメリカと一緒に「戦争できる国」づくりを進めてきた安倍政権以来の路線が、米中対立に巻き込まれる形で具体化しようとしています。戦争法制定時に想定されていたのは「中東有事」でしたが、今は「台湾有事」。そうなれば〝日本有事〟に直結するリスクが高まる。戦争になったらまず若者から動員されますから、これは青年の未来にかかわる非常に重大な問題です。
 強権で異論を排除するのも安倍政権から菅政権に引き継がれた悪しき〝遺産〟です。戦争法などに反対した学者6人の日本学術会議会員への任命拒否はその最たる例ですね。コロナ対策も専門家の意見を尊重せず、科学的知見を軽視するという問題があります。その走りが、戦争法の憲法解釈で法律家の反対を押し切って立憲主義を踏みにじった「成功体験」にあったのではないでしょうか。

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